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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第二章:聖剣依存の凡人勇者
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いざ王都へ


 「……ちゃっかり私物を買わされてるんだが?」

 「手間賃、アドバイス料ですよ。ちゃんと役に立たったわよね?その対価、報酬ですよ」


 確かに聖女ジャンヌは役に立った。

 カイセの目から見ても、派手過ぎず平凡過ぎず、バランスの良い適度な一式となった。

 それを二着分購入したのだが、気がついたらカイセには必要のないものまで紛れ込んでいた。

 お菓子をカゴに入れようとする子供とは比較にならない程自然に、支払いを終えた後にようやく気付けた程の手練れであった。


 「物自体は安物の指輪です。特に痛い出費にはなっていないでしょう?」


 買わされたのはイミテーションの石が嵌まった指輪。

 聖女の言う通り、本当に安物であった。

 だからこそ支払金額を見ただけでは気付く事が出来なかった。

 確かに計算と誤差があったが、前世のノリで消費税扱いしていた。

 この世界に消費税は無いのにだ。

 普段お店で買い物していなかったため、その単純な事実に気付けなかった。


 「……まぁそうだけど、何でわざわざ指輪なんだよ。しかも子供用」


 アリシア相手に一度勘違いをさせてる事もあってか、安物かつ子供用の指輪であっても女性に渡すことに抵抗があった。


 「大丈夫ですよ、深い意味はありませんから。欲しいマジックアイテムの土台にちょうど良かっただけです。それにこれで貸し(・・)を作らずに済むのなら安い物では?」


 店に入る前のあの懸念を読み取られていたのか。


 「……まぁそう思っておくことにするよ。正直思惑がありそうで怖いけど」

 「何も考えないのも問題ですが、考えすぎも良くないですよ?」

 「誰かさんの行動が不審点多すぎるせいなんだけどな」


 とは言え、とにかくはこれで身なりの問題は片付いただろう。

 他に買っておく物もないので、買い物も終了だ。


 「ところでご出発のご予定はいつでしょうか?必要なら馬車も手配しますよ?」

 「いやそれは必要ないから。全部を任せると逃れられない何かに取り込まれそうだから、自分で何とか出来る部分は自分でするから」

 「そうですか、残念ですね」


 そんな会話を最後に交わしつつ、用を終えたカイセは自宅へと帰って行った。

 



 ――そして翌日朝。


 「……良し。準備は出来たな」


 荷物は持った、畑の自動管理(七日分)も機能している。

 畑には今、二体のゴーレムが待機している。

 神剣で生み出した、装備は最小限でほぼ素体のゴーレムだ。

 あの二体に畑仕事の最低限の日課作業をこなしてもらう。

 不測の事態さえ起こらなければ一週間は何とかなるだろう。

 作業に必要な道具の準備も万全。


 「待機時間が長くなるから燃費は悪いけど仕方ないか」


 ゴーレムを出なくとも魔法を設置するだけでも出来なくはないのだが、細かい部分は人型にしたほうがやり易い。

 最初こそ厄介者に思えた神剣も、こういった時には助かるものだった。

 

 「……多分こうやってハードルが少しずつ下がってくるのだろうなぁ」


 最初の『死蔵する』発言は何処にいったのやら。


 「後は……まぁあっちは自由にしてくれればいいか」 


 家の方は防犯装置も起動させ、唐突に遊びに来るジャバには遠話で留守を伝え、アリシアには書き置きも残した。

 転移陣はそのままなので自由に出入りは出来る。

 来たとしても誰も居ないが時間潰しぐらいには使えるだろう。

 居ない間は封鎖しても良かったのだが、「現実逃避」先として残しておいてもいいだろう。


 「さて、まずは一回目(・・・)だな」


 予め〔星の図書館〕でチェックしてここをと定めていた転移先をイメージする。

 王都までは《転移》の最大範囲を用いても三回使わなければ届かない。

 魔力もごっそり持っていかれる為、王都に付いたら一泊し休んでから明日改めて城へと向かう。

 荒事にはならないだろうが、念のために魔力はしっかり回復させておきたい。


 「思えば観光の一つもこっちに来てからはしてなかったし、これも良い機会だろう」


 教会本部のある町や、アリシアの村。

 その二つを除けば後は魔境の森。

 折角新たな世界に来たのに、ほとんど魔境で引きこもりだ。

 まぁ999を抱えて闊歩する気にならなかったのが一番の原因なのだが、折角の機会なので観光もしてくる事としよう。


 「そんじゃまぁ行きますか……《転移》」


 そしてカイセは王都へと旅立った。


 


 一回目の《転移》

 

 「良し着いて……ん?」


 足元に謎の感触。

 確認するとそこには……。


 (……人、しかも〔盗賊〕か)


 着地と同時に盗賊の一人(・・)を踏みつけていた。

 存在が重なり合わないように安全機能は付いているが、こういう突発的な事故があるからこそ《転移》にばかり頼るのも怖いのだ。


 「お前はな――」


 とりあえず周囲に居る他三人の盗賊を魔法で眠らせる。


 (……なるほど、こいつらの弓で馬車を奇襲。その後に本隊が襲い掛かって、残ったこいつらはその援護でここに居たのか。とはいえ乱戦で弓とか誤射るし、逃げる獲物を狙って……って所か。全く、折角道から逸れた場所に降りたのに……しゃあない、ちょいとやるか)


 足を止めた馬車と護衛の兵士、そしてそれを襲う盗賊の群れを確認したカイセは、あくまでも遠隔、この場から盗賊にちょっかいを出す。

 距離的には判別しにくいだろうが、万が一顔を覚えられても面倒なので、例の〔仮面〕を装備する。


 (盗賊も被害者側も、出来ればあまり関わりたくないからこのままっと……)


 《誘眠》の魔法はこの距離では盗賊のみを狙い撃ちには出来ない。

 そのため面倒だが確実な方法を取る。


 (一人…二人…三人…四人…)


 シンプルな《魔法弾》で一人一人丁寧にヘッドショットを決めていく。

 殺す気は無いが、威力が威力なので当たればしばらくは立てないだろう。


 (後一人……良し終了)


 職業が〔盗賊〕になっていた連中は全て仕留めた。


 (こいつらも放り投げてっと)


 手元の四人を道へと放り投げる。

 これで後は勝手に処理してくれるだろう。

 縛り上げて連行か、この場で処刑か、いずれにせよ被害者任せだ。

 ちょうど良く《転移》の再使用待機時間も過ぎたので、嫌な光景を見る前に次へと行こう。


 (……《転移》) 


 カイセはそのまま二度目の《転移》を行った。


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