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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第二章:聖剣依存の凡人勇者
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身なりは大事


 「こんにちはー」

 「あの……その気軽さはどうにかなりませんか?近所のお家や友人のお宅ではないですよここは?仮にも神界で、私は神様ですよ?」


 カイセがやって来たのはいつもの(・・・・)女神空間。

 王都へ向かう前の準備の一つで出向いてきた。


 「早速なんだけど、俺関連の事はお偉いさんには何処まで話して良い?」

 「スルーしますか……」


 この先に待つのは王様との会談。

 話をするにしても何処まで話すべきか悩んでいるのだが、それ以前に女神的には何処まで話していいのかも気になっていた。

 

 「……まぁそうですね、今まで通り私の失態(ポカ)とカイセさんの出自については他言無用で。それ以外はお任せします」


 もっとしっかりと範囲を指定してくるかとも思ったのだが、思いの外あっさりして緩かった。


 「そうか……それじゃあ確認するところは終わったら帰るわ」

 「え、それだけですか?」

 「それだけ。それじゃあお疲――」

 「待ってください!」


 呼び止められたカイセ。

 もう用は無いのだが。


 「女神(わたし)の扱いが雑なカイセさんに、コレ(・・)をプレゼントします」

 「要りません。それじゃあ――」

 「待ってくださいぃー!」


 更に呼び止める。


 「損しませんから!もしもの備えですから!もしもが来なければ死蔵してても良いですから!」


 損しないと言う誘い文句程信用できないものは無いと思うのだが。

 そう言って無理矢理押し付けて来たのは、消しゴムぐらいの大きさの〔クリスタル〕であった。


 「……内容が視えないけど」


 〔鑑定Lv.10〕で詳細不明。

 得体の知れない物だ。


 「女神(わたし)と同じで人の世の外の道具ですから。もしもの時にまで詳細も話せませんが、念のために持っておいてください」

 「……分かった。それじゃあ預かるわ」

 「……と言いつつさらっと置いてこうとしないでください。はい、持って!」


 嫌々ではあるが〔もしもの備え〕と言われれば割と拒否がしにくい。

 ロクな物ではないという予感があるのだが、渋々だが仕舞う。


 「それじゃあ、お気を付けて行ってらっしゃい!」


 新たな不安が出来たが、そのままカイセは女神空間を後にして次の場所へと向かった。




 「こんにちは。本日のご用件は?」

 「服を仕立てたいんだけど、この町できちんとした服が買える場所を教えて欲しい。普段使いじゃなくて式事用のを。金額はまぁ気にせずに」

 「王都、王城……王様の前となればやはりそれなりには整えなくてはなりませんからね」

 「……用途伝えてないのに何故知ってる?」


 次にやって来たのは、聖女ジャンヌの個室であった。

 ちなみにちゃんとノックをして許可を得てから入った。

 流石に有事以外で不法侵入をやらかすつもりはない。

 まぁ教会の奥の住居スペースには不法侵入しているのだが。


 「乙女の秘密とでも思ってください」


 一瞬〔乙女〕の部分に「そんな年齢か」と軽口を出してしまいそうになったが、何とか踏み止まった。

 女性に年齢の話をしてロクな事にならないのは理解している。


 「踏み止まったようなので不問としましょう」


 それなのに頭の中の思考を見破ってくる辺りに女性の理不尽さを感じる。


 「それにしても……聖剣の複製とは凄い事をしますね」

 「その情報網はどうなってるの?それ多分国としても門外不出の秘匿情報だよね?」

 「大丈夫です。外で知るのは私ぐらいですから。もちろん広めるつもりもありません」


 そういう問題ではない。

 たった一人、聖女にだろうとそれが漏れている事が大問題なのだ。

 事が事だけに王様の周辺でも知る者は限られているはずなのだが。


 「こういう情報と言うのは、ここ一番で開放してこそ利用価値のある物ですから。ただ悪戯に広めて価値を下げる気はありません」


 つまりここ一番であれば広める気は満々なんだよな?

 

 「広めるにしても貴方を敵に回すような使い方はしませんからご安心ください」


 全く安心できない。

 この人は本当に聖女なのかと、会う度に疑わなければならない。

 ここに聞きに来たのは失敗だったかもしれない。

 紹介される店もまともかどうか不安になる。


 「ふふ……大丈夫です。紹介するのは真っ当なお店ですから」

 「だから読むな。本当に聖女なのか?」

 「聖女だからその手の機微に長けているという考え方も出来ますよ?どうぞ、こちらがそのお店です」


 いつまでもここに居ると色々と消耗しそうなので、紹介して貰う店の情報を記した紙を受けとりすぐさまその部屋を後にした。




 「……何故先に居る?」


 紹介された店に付くと、そこには別れたばかりの聖女ジャンヌの姿があった。

 基本は普通に徒歩であったとはいえ、部屋から教会の裏手までは《転移》した。

 そのショートカットがある以上は、追いつくどころか追い抜く事すら不可能なはずなのだが。


 「その地図、実は少し遠回りさせてるんですよ。この町に詳しい者なら一瞬で気付きますけど、案の定引っ掛かりましたね」


 もうこの聖女の一挙手一投足を疑わなければならないんじゃないだろうか?


 「その上で、火事などに対応する為に用意してある避難用の《転移》装置で外へと出たので、こうして先回りが出来ました」

 「こんな事に高価な道具を使うなよ」

 「大丈夫です。耐用期限間近で新しい物に交換して破棄する予定だった物を使いましたから。折角の道具なのですから使わなければ勿体ないじゃないですか?」

 「それで護衛も無しで出てくるなよ、聖女だろ」


 多分この光景を教会の者が見れば大慌てになるだろう。

 大きめのコートを羽織っているため服装からは分かりにくいが、顔は一切隠していないため知る人ならば一発で気付く。

 せめて魔法具で姿を変えるなり出来ないのだろうか。


 「……で、何で先回りしたの?」

 「第一に驚かせようと思いまして。第二に私が服を見繕って差し上げましょうかと。基本的にはどれも似たり寄ったりなので見た目に大きな差は無いでしょうが、それならばやはり細かな部分で差を付けなければなりませんから」

 「誰かと競うつもりはないんだが」

 「それでも第一印象は大事ですよ?ただでさえ中身の異常さと見た目の平凡さが噛み合ってないのですから、更に服装まで平凡では侮られてしまいますよ?」


 個人的には全然侮られてもいいのだが。


 「王都、そして王城であれば見た目だけ(・・)で相手を判断してしまう残念な輩は大勢います。なまじ地位と教養を備えている分ただの馬鹿よりもタチの悪い輩が……平凡な格好でそんな輩の餌食になりたいのでしたらそれでも構いませんけど」


 見た目で相手を格下と判断して絡む輩か。

 確かにそんな馬鹿に絡まれる可能性は出来るだけ低い方が良い。

 見た目、服装……確かにカイセのデザイン的な好みは〔シンプル・イズ・ベスト〕。

 自分の好みで選べば、必然的にシンプルな物になりそうだ。

 

 「かと言って派手にし過ぎてもそれはそれで目立つか……ちょうど良い一線が見極められないなぁ」

 「だから私にお任せください」


 ハッキリ言って貸しを作りたくない相手なのだが、長いものには巻かれよという言葉もある事だ。


 「……分かった。お願いします。ただし気に入らなければ当然却下するので」

 「そこは自信がありますので、お任せくださいな!」


 そしてそのままカイセは聖女ジャンヌと共に、目的の店へと足を踏み入れた。

  

 

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