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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第二章:聖剣依存の凡人勇者
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お気に入りのおもちゃ


 そして翌日。

 

 「忘れ物はないな?――それじゃあこっちが昼飯。こっちがおやつ。こっちがジャムやら果物やらのお土産な」

 「お土産がやたらと多くないですか?カイセさん」

 「田舎のばあちゃんを思い出しました。荷物になるって言っても色々持たせようとして来て……今回はマジックバックがあるので遠慮なく頂きます」


 勇者一行の帰還の日。

 玄関先で見送るカイセは、用意した土産を手渡していく。

 人数分あり、その上でお土産も盛った為に量も結構なものになっている。

 それぞれの〔マジックバック〕のあと少し残っている要領をほとんど埋めた。


 「カイセさん」


 隠密組のリーダーが話しかけて来た。

 恐らく内容が内容なので、こっそり《遮音》をしてから話し出す。


 「カイセさん……やっぱり一緒に来てもらえませんか?カイセさんが説明してくれるのが一番良いのですが……」

 「頑張れ」


 聖剣の一件を押し付けた隠密リーダー。

 当然この話は上司に伝えなければならない。

 だがその内容は非常識な事が多すぎる。


 「魔境の森に家を建てて暮らす人物や宿の存在、聖剣を溶かす魔物、勇者様の持つ二本目の聖剣とか、王様に説明するの物凄く大変なんですが……まずは正気を証明しなくちゃなりませんし、仲間にも内緒という点も更に……」

 「頑張れ」


 この隠密チーム、話を聞くとどうも王様に直接報告する程の立ち位置にいるようだ。

 そのため隠密リーダーが報告する事を決めたなら、間に握りつぶされる事もなく確実に王様に伝わる。

 だが今回ばかりは少し億劫なようだ。

 ちなみに、カイセは王様に会うつもりは全くない。

 正直言うと、王都や王城といったものには人並みの興味はあるが、カイセの持ち物が色々と面倒を引き寄せるものばかりなので、出来ればそんな危険地帯には近寄りたくない。

 

 「あ、ちなみに宿は気まぐれだから、お前さんらだけならまぁ受け入れても良いけど、当てにして知らん奴を連れて来るなよ?」 

 「〔魔境の森の中にある宿〕なんてものを本当に信じてアテにして来たがる人は居ないと思いますが。私達だって未だに幻覚でも見てるんじゃないかって思ってるんですよ?」

 

 そこそこな時間を暮らしていたはずなのだが、その辺りまだ疑われていたようだ。


 「はいこれ。隊長さんの分」

 「……他よりも多くないですか?」


 隠密リーダーの分だけ、こっそり増量してあるお土産袋。

 目的は勿論賄賂です。

 だから頑張って〔カイセに害意・敵意は無い事〕そして〔関わって欲しくない〕事を伝えてきて欲しい。


 「……はぁ。どういう展開になっても責任は取りませんからね」

 「頑張れ」

 「――カイセさん」


 勇者ロバートが近づいてきたので、密談はここで終了となった。


 「カイセさん。最後にお聞きしたい事があるのですが」

 「……どうした?」


 なんだかとってもめんどくさい雰囲気が醸し出されていた。


 「カイセさんはもしかして……〔勇者〕だったりしませんか?」

 「いや全く違うけど」


 即否定。

 雰囲気の割りには突拍子もない質問が飛んできて少し気が抜けた。

 何処でそんな途方もない思い違いをしてきたのだろうか。

 確かに神剣の所有は勇者要素が高いとは思うが、そもそもそこはロバートの知らぬ所のはずだ。

 外見にはただの変わり者に見えるはずのカイセの、何処をどう見て勇者要素を感じ取ったのだろうか?


 「一体何処をどう勘違いしたらそんな考えが出てくる?」

 「だってカイセさん、色々とんでもないじゃないですか。魔境の森で不自由ないどころかそこらの平民より圧倒的に良い暮らししてますし、魔境の森を闊歩しても問題ないぐらい強いですし、おかしな規模の《転移》も使えますし、下手すると国宝級のおかしな道具もいっぱい持ってるみたいですし……」

 「それって勇者の要素に当てはまるの?」

 「常識的にあり得ない事を連発しているって意味では完全一致だと思いますけど?初代勇者様もかなりの変わり者だったみたいですし」

 

 ハッキリ面と向かって非常識と言われてしまったが、少なくとも常識無視した行動を幾度もしているのは確かなので、否定できないのは理解している。

 だが否定すべきところはきちんと否定する。


 「俺は勇者でも何でもないから。大それた称号や職業なんて持ってない、表記上(・・・)はただの一般人だ」

 「自分で表記上って言ってますけどね。カイセさんを一般人扱いしたら色んな所から怒られそうですが、違うのはまぁ理解しました。失礼しました」


 頭を下げるロバート。

 正直そこまでする必要は全くないのだが。


 「……なぁ、今度はこっちから質問していいか?」

 「はい?別に構いませんけど」

 「もしもその聖剣を無くしたり壊したりしたら、お前さんはどうする?」


 カイセが確認したかった事。

 もしも二本目の聖剣が生まれず、溶けた聖剣をそのまま返却する事になっていたらどうなっていたのか、それが少し気になっていた。


 「……そうですね。無くしたのなら死に物狂いで探しますが、見つからなかったり壊れたりしたのなら、しばらく泣いてふて腐れて……立ち直るのに一月ぐらいは掛かるんじゃないでしょうか?昔から(・・・・)そんな感じですし」

 「昔?」

 「ええ。僕、子供の頃に〔お気に入りのおもちゃ〕を失った時はそんな感じだったみたいで……父の作ってくれた木のおもちゃでもそんな感じだったので、聖剣の時はもっとショックで、その凄い版みたいな状態になるんじゃないでしょうか?」


 聞いておいて何ではあるが、正直予想とは違う反応が返って来た。

 聖剣への依存から、もう少し取り乱しそうな予想があったのだが……


 (……もしかしてそんな深刻な問題でも無かったのか?)


 聖剣を抱えて見せたあの()が印象的過ぎて、てっきり良からぬ方向に考えていたが、もしかしたら弱さゆえの強い物への〔依存〕などではなく、単純に〔お気に入りのおもちゃ〕に対する〔執着〕だったのかもしれない。

 〔お気に入りのおもちゃ〕を抱いて眠る。

 〔お気に入りのおもちゃ〕を何処にでも持ち歩く。

 〔お気に入りのおもちゃ〕を自慢する。

 〔お気に入りのおもちゃ〕を無くすと泣く。

 〔お気に入りのおもちゃ〕をどんな状況でも手放そうとしない。

 〔お気に入りのおもちゃ〕を取り上げられそうになると猛反発する。


 (それはそれでいざという時の面倒臭さが半端ない事になりそうではあるけれど、そのぐらいなら心配する必要もなかったのか?)


 今までカイセなりに配慮したつもりだったが、心配し過ぎの取り越し苦労だったのかもしれない。

 聖剣の入れ替えを後悔する事は無いが、面倒はあれどちゃんと受け止められるのなら普通に渡してしまっても良かったのではと。

 下手をすると精神的な成長機会を奪ってしまった可能性もある。


 (……まぁ過ぎたことは仕方ないか)


 現状維持はそれはそれで一つの成果だ。

 しいて言うのなら隠密リーダーと多分王様辺りに迷惑を掛けた事は申し訳ない気もするが、それも彼らのお仕事と思って受け流してしまおう。

 隠密リーダーの関してはお土産増量してあるのでまぁ良いだろう。


 「勇者様、準備出来ましたよ」

 「分かりましたー!カイセさん、それではそろそろ出たいと思います」

 「おう。それじゃあ起動するわ」


 カイセは設置しておいた《転移陣》を起動する。

 今回限りで設置した、森の出入り口付近に繋がる帰り道だ。

 折角生き延びたのに帰り道で全滅してたなどという後味の悪い展開は御免だったので、最後にここまでは面倒を見る事にした。

 これもまた過保護かも知れないが、宿代取ってた以上はアフターケアも料金の内だ。

  

 「四人ずつ順番に乗れー。向こうに付いたらすぐにそこから退かないと後続とぶつかるぞ」

 

 まずは隠密の先遣隊から進み、徐々に徐々に人数が減って行った。

 残りは二組。


 「カイセさん、お世話になりました!」


 勇者と三従士が帰って行った。

 そして殿。


 「頑張れ」

 「……お世話になりました」


 ジト目で無言の抗議をしてくる隠密リーダーと、事情を知らないその部下が帰って行った。

 これにてようやくこの家からお客様は居なくなった。


 「……さて、どうなるやら」

 

 ほぼ今生の別れになるはずなのだが、全くそんな気配がしてこない。

 そう遠くない内に再会する事になりそうな気がしてならない。

 それがいつかは分からないが、出来ればその予感が外れる事を祈っている。

 


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