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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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王様への報告




 「――やっと着いたな。久々の王都」


 エルフの国を出てから数日。

 雨の妨害もありながら、戻ってきたのは人族の国の王都。

 あちらでの滞在日数も鑑みれば本当に久々に感じる賑やかすぎる人の群れ。

 

 「ほんとはこのまま買い物にでも出たいけど…」

 「さぁ行こうか?」

 「…はい王子」


 本音を言えばこのままいくつかお店を巡りたいところ。

 しかしカイセにはまだやるべきことが残っており、王子直々の声掛けもあれば逃げられるはずもなく。

 結局そのまま王子一行と共に王城へと赴くことになる。

 

 「では、すまないが少し待っていてくれ」


 そしてやって来た王城内、向かった先は王様の執務室。

 ただしカイセは廊下で待機、まずは王子の帰還の挨拶から優先される。

 当然王子に付き従うエルマも一緒に室内に入ってゆき、カイセはその背を見送る。


 「まだ入らないのー?」

 「少し待機だな。大人しくしてろな?」

 「はーい」


 そのままカイセにジャバフェニ、後は荷物に隠れるカナタは廊下で順番を持つ。

 寡黙で真面目で一言も喋らず淡々と微動だにせず立つ扉の番人と向き合い、無駄に緊張感のある時間を過ごす。



 「――カイセさん」

 「エルマ」

 

 するとしばらくしてエルマが部屋から出てきた。

 しかしあくまでも出てきたのはエルマと文官のひとりだけ。

 王子はまだ室内に居て、王様とお話の最中らしい。

 

 「本当はこのままお話相手になりたいのですが、残念ながら用事があるのでお先に失礼します。良ければまた王都屋敷に寄ってくださいね?では」

 「あぁ、おつかれさま」


 そんなエルマも忙しそう早口で挨拶を告げるとそそくさと文官と共に去って行った。

 帰ってきたばかりだというのに何とも忙しそう様子。


 「――カイセ様。お入りください」

 「はい、失礼します」


 そのままエルマも見送って、更に待ってやって来た謁見の時。

 入室を許されたカイセが再会するのはこの国の王様。


 「長く待たせてしまってすまない。早速だが二振り目についての報告を頼みたい」


 すると挨拶も軽く済ませて早々に本題を尋ねられる。

 既に若干疲れたような表情が見受けられる王様だったが、求められたので構わずカイセは報告内容を語りだす。

 そもそもの発端、二振り目の神剣の存在疑惑。

 本来の勇者の神剣を携えるカイセ直々の旅路。

 エルフの国に存在したその未知の神剣の正体。

 更に起きた騒動の中での出来事の大枠。


 「…なるほど、異なる世界の神剣。漂流物の可能性が高いか」


 カイセはエルフの国の神剣を余所の世界から流れて来た代物である可能性が高い(・・・・・・)と語った。

 あれが漂流物であるという証拠はあくまでも女神から伝えられたもの。

 証拠として語れる部分ではないので、あくまでもカイセの神剣エクスの分析による推測として語る事にした。

 

 「漂流物と呼ばれる代物は、この城の宝物庫にも幾つか納められている。この世界の文明文化では考えられない異質な代物。異なる世界から流れ着いた異物。そういうモノが存在するのは理解していたのだが…まさか神剣ほどの代物が流れ着いていたとは」


 そして王様も認識している漂流物と呼ばれる存在。

 実際にこの世ならざる物品はこの城にも保管されているようだ。

 だがしかし…認識はしていても、よりによって神剣ほどの重要重大な代物がこの世界に流れ着いていた事実に驚きを隠せない王様。


 「しかもよりにもよって騒ぎを起こした者たちの手で振るわれることになるとは…同じ神剣を振るえるカイセ殿が居なければ騎士たちにどれほどの被害が出ていたか…感謝するカイセ殿」

 「えっと、どういたしまして」


 その上で二振り目の神剣がクーデター勢力の手に渡り振るわれていた事実が王子から既に報告されていたようだ。

 カイセも神剣エクスで対峙したゆえに押さえ込めたその切り札の一つ。

 もしカイセ以外の者が対峙していたならば騎士なりエルフなりには純粋な武器の差で多くの被害が出ていただろう。


 「そして剣は厳重管理下へ。更に…中身はカイセ殿の下か」


 更に二振り目の神剣の管理についても把握済み。

 剣そのものはエルフの管理下へ。

 中身(カナタ)はカイセのもとへ。


 (黙っておこうかと思ったけど、普通に『いりませんか?』と聞いて回っちゃったからなぁ)


 カナタに関しては黙秘も選択肢の一つだった。

 しかしアレを誰かに譲りたくて聞いて回った時点で秘匿は無理な話になっていた。

 

 「ちなみに、その中身がなければ神剣は本領を発揮できないのだな?」

 「あ、はい。特別な力のないただの凄い剣ってだけですね」

 「それはそれで剣豪に振るわれると怖いところだが、ならばあまり気にしても仕方ないな」


 とはいえその分離のおかげで、仮に管理された神剣にまた何かが起きても大きな騒ぎにはならない。

 その事に安堵する王様は、その中身をカイセが保有する事には何も異論を唱えなかった。


 (なんか微妙に諦められてる気がする。危険物専用倉庫みたいになってるのは事実だけど)


 そもそも本来の神剣を携えるカイセ。

 一個人が世界の宝を私有するそれだけでも一国の王としては悩みどころなのだろうが、そこに今更一つや二つ秘物が増えても今更感は確かにあるかもしれない。


 「ひとまずは二振り目の神剣の存在、そして処遇は把握した。そもそもこちらからの要望では必要な確認だけだったわけだが…結果として騒動に尽力と余計な苦労を強いてしまった。その分もしっかりと合わせて礼は用意させた。外に待たせているゆえに帰り際に受け取ると良い」

 「え?あ…ではありがたく」


 すると既に用意されていたお礼。

 遠慮を見せる間もなく受け取りの準備が整っていて受け取るしかない状況。

 しかも話の流れから上乗せがある様子。

 正直王様にも予期せぬ事態だったのだからこちらから何かを求めるつもりは全くなかった。

 しかしそんなこちらの反応を先読みしていたのか先んじて準備を済ませられていた。


 「その上で、もう少しだけ話を聞かせては貰えないか?既に全体の報告は受けているが、カイセ殿は単独行動も多かったと聞く。二度手間になる部分も多いだろうがいくつか直接カイセ殿の言葉で聞かせて貰いたいのだが」

 「…はい、わかりました。話せる事に関しては」

 「助かる」


 そうして大まかな神剣の報告は終えたカイセ。

 だがその上で更に話を求められた。

 基本的に騒動の際の単独行動については王子たちに報告済み。

 勿論一部ボカしたり秘匿したりもしているが、おおよそ必要なものは伝えてある。

 その上で、実際のカイセの言葉で聞きたいらしい王様。

 直接聞くことでボカした部分に何かしらの察しをされる可能性もある。

 だが…ここまで来たなら語れることは全て語りきってしまう。

 そう覚悟して王様の要請に付き合うことにしたカイセ。


 「して…カイセ殿は直接空飛ぶ船(・・・・)に踏み込んだのであろう?どうであった?乗り心地はどうであった?空からの景色は?揺れはどれほどのものだったのだ?」

 「…んー?」


 しかし早速問われたのは方舟のお話。

 それも事務的や技術的なものでなく、何だか乗船客(・・・)としての感想を求められているようなお話。


 (なんか目が輝いてる気がするけど…王様、これただの個人的好奇心で聞いてきてない?)


 あくまでも王としてのお仕事。

 と…思っていたのだが、その興味津々好奇心満載と言った感情を隠せぬ眼から、王様に少年心を感じざる得ないカイセであった。


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