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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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精霊の加護




 《――貴方に決闘を申し込みます!》

 「あ、お断りします」


 突然決闘を申し込まれるカイセ。

 そのお相手は…なんと【水の大精霊 ウンディーネ】。

 精霊の中の精霊自らの、一騎討ちの決闘の申し出。

 だがカイセは即座に断る。


 《何故ですか?》

 「いやそもそも…決闘でフェニの身柄を無理矢理に確保しようとしてるのが人として…いえ精霊としてもダメじゃないですか?色々と」

 《ですが…こうでもしないと彼が残ってくれないので…》

 「じゃあ諦めてください」

 「グゥ」


 そもそもの発端は水の大精霊の、不死鳥フェニに対する執着ゆえ。

 かつて…と言ってもフェニが不死鳥に転生する前の火の精霊時代の縁。

 今は水の大精霊の、普通の精霊時代に接点のあった両者。

 フェニの方は記憶がまだ思い出せないその過去の時代の思い出を、地続きの水の大精霊は勿論ちゃんと覚えている。

 そして幼馴染とも言える存在の転生体であるフェニとの交流をこれからも望んでいた。





 《わたしのもとに残りませんか?》

 「グゥー」


 だがその願いはフェニ本人に断られ、フェニは間もなくカイセ達と共に魔境の森に帰ることになっていた。

 それは当然本人の希望。

 しかし水の大精霊は納得できずに、保護者ポジションのカイセにフェニの処遇を掛けた勝負を申し出てきたのだった。

 とはいえ、フェニ本人は既にお断りを告げている。

 ゆえにこの決闘を受ける理由は何一つないのであった。 


 

 

 《となれば…わたしがついて行けば――いた!?》

 《何を言っておるのだアホ。其方には役目があるだろうに》


 すると水の大精霊の方がフェニに付いてくるという面倒な案が出来たが…土の大精霊に止められる。

 精霊ならともかく大精霊は色々な役目を担っている。

 他の属性の精霊としてもその留守には待ったをかける。


 《そもそも覚えてすらおらぬ相手に攻め寄っても得などほとんどないぞ?警戒されるばかりでの》

 《ですが…》


 水の大精霊には思い出がある。

 だがフェニにはその思い出が思い出せていない。

 漠然とした警戒心はあれどその真相も分からないまま。

  

 《接すれば思い出すのも早く…》

 《快復までの間ずっとそばにいただろう。それでも成果がないなら焦るでない。不死鳥の成長と共に、もしくは不意の覚醒をじっと待つのだ。この手の事柄は焦れば逆効果、むしろ警戒が続けば記憶に蓋をしてしまうぞ。思い出してほしいならじっと待つのだ》

 《………はい》


 不満はありそうだが土の大精霊の説得にうなずく水の大精霊。

 

 《カイセ殿、もしよければ不死鳥が記憶を取り戻した時には知らせをくれないか?》

 「え?あぁそのぐらいなら」

 《ではこれを…持っていくとよい》

 「ん?…ちょ!?」


 すると水の大精霊をなだめつつ、代わりにその時の為に約束をカイセに取り付けてくる。

 それと同時に渡されたのは加護(・・)

 既に色々余計なモノが刻まれるカイセにとって、出来れば避けたかった《大精霊の加護》を授けられた。

 流れ的に、これは連絡用に持たされた加護なのだろう。

 いずれジャバが記憶を取り戻した時の再会の楔としての加護。

 

 《なるほど!ではわたしも》

 「ちょま!?」


 続けて二つ目の加護。

 土の大精霊に加えて水の大精霊の加護が刻まれる。

 アッというまにエルマに追いつき、追い越した二つ持ち。


 (他は!――よし、居ないな。ふぅ)


 そこまで来ると三の矢四の矢、他の大精霊からの加護の押し付けも警戒するカイセ。

 だが周囲には存在せず。

 更なる加護は無事に回避できたようだ。


 (いやでも…二つでもヤバイのでは?)


 一つあるだけで大騒ぎになる大精霊の加護。

 それがこの数瞬で二つもとなれば大騒動の大事件。

 もうすぐ帰宅というタイミングで、これ以上エルフの国に波風を立ててほしくないし、勿論999でも持て余すステータスをこれ以上混沌とさせてほしくもない。


 「…ちなみに加護の返品って」

 《無理です》

 《どうしてもと言うならば死ぬしかないの。死ねば自然と加護は離れる》

 「うん無理ですね」


 こうしてまた要らないお土産が増えるカイセ。

 更に言えばフェニがその記憶を思い出した時にはまた大精霊たちとの交流を生むことになる。


 《ふーん、面白そうなコトしてるな。じゃあ我は直接こいつに!》

 「わっ?!」

 「ジャバ!?って…火の大精霊?」

 

 すると突然姿を現したのは火の大精霊。

 警戒を潜り抜けて接触した相手は、話に乱入して来た彼の標的はジャバの方。

 気づけばジャバにも《大精霊の加護》が宿る。


 「ジャバ、何か貰った?」

 《我の加護だ。大事にしろよ》

 「うーん?何かわからないけどありがとー!」


 なお本人には自覚無し。

 ないままに大精霊の加護持ちの仲間入りをした。


 「いっそフェニに直接与えた方がいいのでは?」

 《残念ながら精霊、もしくはそれ由来の存在には同種扱いで与えられんのだ》

 《あくまでも加護は別種への恩恵なのです》

 《それに、こいつ不死鳥だろ?転生する度に消えるから仮に出来ても与え損になりそうだしなぁ》


 どうやら直接は無理なようで、ゆえに外堀を埋めてくる。

 風の大精霊の加護を得たエルマ。

 火の大精霊の加護を得たジャバ。

 そして土と水の大精霊の加護を得たカイセ。

 三人で四種コンプリート。

 

 《もし不死鳥が何かを思い出したらなら加護に強く念じて伝えて欲しい。勿論判断はそちらに任せるが…あまりにも何もないとこの者が痺れを切らして何をするか…》

 「善処します」


 面倒な代物だが、これは水の大精霊を自重させる鎖でもある。

 下手をすれば本当に追って来かねない相手をこの加護が押し留める。


 そんな厄介だが今は有益な加護を手にしてしまったカイセ。

 余計なお土産を色々抱えて、帰路に着く時がやって来る。

 


 

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