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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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ジャバとの再会、そして最後の不穏




 「――着地。ようやく一段落か」


 急遽作られた平らな大地の広場に無事に着陸した方舟。

 騒動の中心にあった大きな舟は、再び眠りへと向かい始める。

 そんな方舟の甲板に姿を現したカイセ達。

 保護したエルマの姿も無事に、騒動は終息へと向かう。


 『お疲れ様、これでゆっくりできるわね』


 すると真っ先に出迎えてくれたのは風の大精霊。

 他の大精霊の姿はない。


 『水は不死鳥の子のところ。土は疲れたってどっかで寝てて、火の馬鹿は後始末に連れ回されてるところね』


 それぞれに一段落付いてバラバラになった大精霊たち。

 水の大精霊はまだお休み中のフェニの傍に戻り、木々や大地の大移動に尽力した土の大精霊はお疲れでお休み、アホの火の大精霊は後始末。


 『それで、その子が捕まってたって言う神の眼の子?』

 「え?あ、私ですか!?えっと、エルマ・アーロンと申します。初めまして、大精霊様」

 『はじめまして。ふーん…悪くない子ね。これなら…チュ』

 「え…ふぇえ!?」


 そして大精霊の中で一番元気で、出迎えてくれた風の大精霊はまるで品定めするかのようにエルマを見つめ続けた。

 かと思いきや、そっとその額を隠す髪を風で揺らし開け、晒したおでこにキスをした。


 「大精霊様、何を?!」

 『ふふ、ちょっとしたお詫びをね。あの火の大精霊(バカ)のアホに巻き込んでごめんなさいね』

 「お詫び…ですか?」

 「…エルマ、自分のステータスを」

 「カイセさん?自分の…ふぇえ!!?」

 『ふふふ』


 その直後に起こった変化。

 エルマ自身は気付かなかったが、カイセは《鑑定》によってすぐに理解した。

 そのカイセの指摘によってエルマも自身の変化に気が付いた。


 《風の大精霊の加護》


 エルマの鑑定結果に出現した新たな項目。

 先刻、方舟の中で対峙した精霊術士のエルフも《精霊の加護》を持っていたが、それは一般精霊にもたらされたもの。

 今エルマが授けられたのは、風の大精霊直々の加護。

 その性質までは読み解けないが、とても稀有な加護なのは考えるまでもない。

  

 『あと…ウチの子一つ連れてく?風の精霊って素直な子も多いし風の使い勝手も良いから多分便利よ?』

 

 更におまけで風の精霊を一体付けようとして来る大精霊。

 恐らく受け取れば"精霊術士"としての資格も手に入ることだろう。


 「い、いえお気持ちだけで十分です!」

 『あらそう?』


 だが流石にエルマはその申し出を拒んだ。

 本人は恐縮した上での純粋な遠慮だっただろう。

 しかしそれは英断とも言える返事。

 ただでさえ国の中でも稀有な最上位の特級鑑定師。

 そこに大精霊の加護に、精霊の実物を連れることになればその存在は国内でも替えの利かない存在になるだろう。

 それほどに人材としての価値が跳ね上がる申し出であっただろうが、しかしそれはエルマにとっては重荷になる。


 (神眼、大精霊の加護、精霊術士。これ揃ったらヤバかったろうなぁ)


 価値が跳ね上がり過ぎて自由を失いかねないラインナップ。

 神眼だけでも相当な地位を得られるのに、世界中探して数名程度の《大精霊の加護》持ちで、精霊との親和が深いエルフの中でも数名しか持たない"精霊術士"の称号も重ねれば文字通り唯一無二。

 

 「…ボソボソッ(隊長さん。ちなみにこれ受けてたらエルマどうなってました?)」

 「…ボソボソッ(まぁ御察しの通りかと)」


 元々外様であり公の立場を一つも持たないカイセは、その突飛なステータス999や神剣所持者の立場でも、存在の秘匿や不干渉と共に自由が許される立場を守れている。

 だが既に国の枠組みの中で相当な地位を持つエルマが、もし新たにその二つの特別を手にしたことが知られればその一生に相当の縛りを、不自由を強いられることになるだろう。

 しかし最後の一つを断った事で、首の皮一つ繋がった…はず。


 「――カイセー!」

 「え、この声は…ジャば――ぐぉ!?」

 『あら鼻の頭に直撃ね』

 

 するとそんなお詫びの時間もほどほどに、なんだか久々に思える声が聞こえてきた。

 その音の方角へと視線を向けるカイセ。

 直後、顔面に飛びついて来た塊がカイセの鼻に直撃する。


 「…今度からはジャバも防御対象に加えておこうかな?」

 「ごめんなさーい」

 「いや…まぁひとまずは、無事出られたみたいで良かったよ。ジャバ」


 飛びついて来たのは子龍の【ジャバ】。

 琥珀の檻に閉じ込められていたジャバも、いつの間にか解放されたようだ。

 

 「ジャバさん!無事で良かったです!」

 「んー?あ、エルマー。守れなくてごめんなさーい」

 「いいえ、ちゃんと守ってもらいました。それなのに、助けてあげられなくてごめんなさい」

 「ううん!全然大丈夫!ジャバ元気だから!」

 「…良かったです」

 

 そしてジャバとエルマの再会。

 フェニと共にその誘拐現場にいたジャバは、二人を守るために立ち向かい琥珀の檻で排除された。

 その結果攫われた二人を強制的に見送る立場になって守ることが出来なかったと感じているジャバと、守ってもらったのに助けてあげられなかったエルマは両者ともに小さな負い目を感じていた。

 だが結果としてどちらも無事。

 ゆえにどちらにも笑顔がある。


 「カイセー、フェニはー?」

 「あぁ、今は疲れて寝てるから、起きる頃になったら迎えに行こう」

 「うん!迎えに行く!」


 あとは療養中のフェニを迎えれば円満。

 二振り目の神剣を族長に返還すれば、カイセの役割も終わりを迎える。

 この騒動もいよいよ終結。

 と…思った矢先の轟音。


 「――だからもう何も起こさないでくれよ。はぁ…」

 「今の音って…」

 「方舟の中ですね」


 だが事はこれで終わらずに。

 方舟の中から聞こえた異音。

 今回の騒動最後のお仕事がカイセのもとに舞い込んで来る。


 

 


 

 

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