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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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方舟停止




 『――制圧完了。完全に支配下に置きました』


 神剣と神剣の見えない戦い。

 その幕引きはあっさりと。

 予定通りにカイセの神剣が、二振り目の神剣を制圧して勝利を収めた。

 


 『………』

 「全く喋らなくなったな」

 『どうやら不貞腐れているようですね。無理矢理しゃべらせますか?』

 『ひえ』

 「いや、今はいいや」


 しっかりと綺麗に管理下に置いた神剣。

 二振り目の神剣の中身は先ほどまでの騒がしさと打って変わってとても静かになった。


 「終わりましたか?」

 「はい、終わりました。キッチリこちらの制御下に置きました」

 「では早々に戻るとしましょう」

 「はい、と…その前に回収っと」


 そして騎士リーダーに促され、本来の目的の為に再び方舟の中へと戻ろうとする。

 だがその前に後片付け。

 この場に転がる改造小人兵の残骸をしっかりと回収し仕舞い込む。


 『な…!?』

 『時間差の自爆機能なら把握済みです。アイテムボックス内であれば時間経過が停止しますから後々ゆゆっくりと処理します』


 残骸に何か仕込みがしてある可能性はカイセ自身疑っていたので神剣同士の戦いの中でも決して注意を怠らなかったが、掌握した神剣がその仕込みを把握して伝えてきた。

 それは撃破された時の嫌がらせ。

 残骸が一定時間後に爆発する自爆機能。

 しかし回収先の《アイテムボックス》はその時間の流れを停止させる。

 タイマーは止まったまま、後でゆっくりと処分を考える。

 

 『どうやらまだ甘かったようですね』

 『ぎゃあああ!!?ごめんなさいいいいいい!!』


 結果としてお仕置きを受ける二振り目の神剣。

 その叫びが煩い中で、神剣は更なる情報を伝える。


 『攫われた少女の居場所も判明しました』

 「お、それは助かる」


 それは未だ行方知れずの神眼少女エルマの居場所。

 今一番知りたい情報。


 「保護対象の居場所。ではそちらに先に向かいましょう」

 「はい」


 元々は制御室に向かう予定だったカイセら。

 しかしもう一人の鍵であり、大事な人命の居場所が判明したならそちらへと道を変更する。

 



 「――エルマ!無事か!?」

 「モグモグ…ふぇ?」


 そして辿り着いたのは方舟内部の普通一室。 

 外からしか扉が開かないように設定された部屋。

 カイセはその扉を開けて、中に待つエルマに声を掛ける。

 だが…そこに待っていたのは、過酷な監禁のイメージは何処にもない、なんだか楽しそうな軟禁生活。

 美味しそうなフルーツがいくつも並ぶテーブル。

 その一つを手に取り、口いっぱいに頬張り幸せそうに食事するエルマの姿。


 「ゴクリ………きゃ!?」


 そんなちょっとはしたない食事姿を、突然の来客に気付いて慌てて体裁を整えようとする。

 口の中のモノを飲み込んで、後ろを向いて緩めた衣服を締め直し、手櫛ながら髪も整える。


 「…コホン。――カイセさん!助けに来てくださったのですね!貴方はいつも私を助けてくださ――」

 「あ、ストップ。そういう感動的な再会みたいなのちょっと難しいからもう」

 「…はぅ、せっかくの機会でしたのに…勿体ない事をしました」


 囚われの少女を救いに来た王子様。

 そんな感動シーンを改めて演じようとしたエルマだが、テイク2にそんな感慨は何処にも沸かない。

 もしテイク1でそんな反応をされていたなら仮に泣きながら抱きつかれても拒むことはなかっただろう。

 しかし今のわざとらしい流れは、流石にカイセも許容できない。


 「とりあえず、元気そうだな」

 「はい。意外と丁重に扱って頂きましたので」


 フェニのような酷い扱いはなく、食事もきちんと用意されていたエルマの軟禁生活。

 ゆえに今の彼女も意外と元気。

 

 「カイセさん、フェニさんはどうなりましたか?捕まる時は一緒でしたが、すぐに別の場所に連れて行かれたので…」


 そして再会の余韻も直ぐに、フェニについて尋ねてくるエルマ。


 「…大丈夫。疲れては居たけどちゃんと保護して無事だよ」

 「あ…良かったです。本当に…ふぅ」


 カイセはその詳細を語らずに結果だけをエルマに伝える。

 好待遇のエルマと違い、フェニは実質使い捨て。

 かなり過酷な状況であったが、それを伝える必要はない。


 「カイセ殿」

 「あ、はい。エルマ、早速だけど手伝って欲しいことがあるんだ。一緒に来てくれ」

 「はい勿論。何処へでも」


 そうして無事にエルマを保護した一行。

 次は本命の、最後のお仕事。

 向かったのは制御室


 「――方舟さん。鍵を一つ締めます」

 〈確認しました。《鍵:神眼》の認証を解除。起動レベル1に低下します〉


 そしてエルマの言葉で方舟の機能を一段階下げることに成功した。

 先程と違って拒まれる事無く、エルマの鍵としての役目は終了する。


 「神剣の所有者として方舟に命令。方舟を元の格納庫に帰還転移させることは可能か?」

 〈不可能です。燃料が足りません。転移可能になるまでおよそ――時間の…〉


 次いで二つ目の鍵である神剣の所持者として方舟に命令を下すカイセ。

 先ほどは拒まれたそれも、中身を伴った完全な状態の神剣ならば通用した。

 しかし元の格納庫に転移させるには予想通り燃料が足りなすぎるようなので、そのまま第二案を指示する。


 「じゃあこのまま方舟を地上に降下させてくれ!ゆっくりと、周囲に被害が出ないように優しく着陸させてくれ!」

 〈了解しました。方舟の降下を開始します〉


 格納庫に戻せない以上、このまま降下させ地上に着陸させるしかない方舟の処遇。

 ただしこの真下には本来樹木がそびえ立つ。

 方舟の結界突破の為の布陣で使った小さな広場はいくつかあるが、方舟が収まる広さではない。

 つまり何かを傷付けることなく着陸できる場所がない。


 「おぉーしっかりと広場が出来てる」

 「大精霊の力はすごいものですね」


 ゆえにこそ、カイセらが戦う間に下では精霊たちが大活躍。

 方舟のモニターに映る真下の景色には、いつも間にか大きな広場が出来上がる。

 これは大精霊たちが、主に土の大精霊が頑張って、真下周辺の地形を変化させた結果。

 大地を動かし、倒さぬように傷つけぬように大樹を余所へと移動させ、半ば強引に広場を開けた。

 後に再会する土の大精霊が、クタクタでグッタリした姿になっているほどの大仕事。


 (まぁエルフはあまりいい顔してなかったけど…押し潰されるよりはマシだよな)


 大樹を大事にするエルフ達にはその大移動は曇った顔を見せていたが、このまま着陸してへし折られるよりはマシと渋々受け入れ精霊たちに協力することになった。


 〈着陸しました〉

 「さて、それじゃあ…方舟の扉を全て開放した状態でエンジン停止。待機モードに移行して神剣の鍵認証も解除してくれ」

 〈扉を開放。エンジン停止。《鍵:神剣》の認証を解除。稼働レベル0に移行。各部冷却が済み次第、全ての機能を待機モードに移行します〉

 「ふぅこれで一段落かな」


 そして方舟は無事に着陸。

 それを確認してカイセは予定通り、方舟をレベル0に移行させ神剣の認証も解除したのだった。

   



  

  

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