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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第二章:聖剣依存の凡人勇者
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神剣解剖


 「うーん……」

 「モグモグ」


 カイセが手渡した〔神剣〕を眺め、唸り続ける女神。

 権限は持たないために変更・改変の類は出来ないが、中身を調べる程度の事は可能らしい。


 「あ、この辺りですね。ここから繋がって……って、私が頑張っている横でお菓子食べるの止めて貰えませんか?」

 「だってやる事無くて暇だし」


 作業を始めてからかれこれ一時間程経っている。

 その間カイセが手伝えることは無かったため、ただただ暇なのだ。


 「せめて自動転送はオフに出来ない?」


 一定距離離れると勝手に手元に返ってくる機能さえなければ、女神に預けて後日また来るという手も使える。

 そもそもカイセとしては預けっぱなしでも良い。


 「いくつか所有者権限でオンオフに出来る機能もありますが、そこはオート固定なので無理ですね」

 

 盗難紛失防止機能なので分からなくもないのだが、今は真面目に面倒な機能だ。

  

 「お、これは……それ!」


 女神が何かをすると、二人の前に〔騎士ゴーレム〕が出現した。


 「ちょ」

 「あ、大丈夫ですよ。燃料空っぽなので動きませんから」


 鎮座する鎧の置物のように、全く動く気配はない。


 「壊したはずなんだけど」

 「それの本当の核はこの神剣そのものなので、魔力さえ用意出来れば何度でも作れますよ。カイセさんが戦ったのが最大性能ですが、弱くする分には調整出来ますし、むしろその分で数や稼働時間は増やせます」


 適度な性能であれば軍団規模で呼び出せるという事らしい。

 そんな戦力要らない。

 自身の999すら持て余してるのに、これ以上武力を増やしてどうするのか。


 「あー、そう言う仕組みで……供給は……時代を考えれば当時としては画期的ですが、今ならもう少し効率を良く……あ、ここ凄いなぁ」


 何やら好奇心のほうが湧き出している気もするのだが、本来の目的を忘れてはいないよな? 


 「……カイセさん。私、この神剣よりももっと凄いの作れそうな気がします!」

 「作らんでいいし必要もないし絶対に作るな。アンタが造ると世界が滅ぶ」


 どうせポカして大惨事生み出すだけなので、そう言った大事は自粛して欲しい。


 「あ、ここですね。えーっと……成程、解りましたよカイセさん」

 

 カイセは神剣の所有を望んでいなかった。

 にも関わらず、今はカイセが所有する事になっしまった神剣。

 その原因を探っていた。


 「簡単に言いますと、想定外の出来事のせいで設定されていた行動が狂ったみたいですね。《記憶消去》に失敗した時の行動が設定されておらず、想定外のパターンに対して防衛機構が発動。力押しで解決しようとしてそれも失敗。設定上ではそこで行動パターンのルートツリーが途絶えて手詰まりになっていますね」


 《記憶消去》自体はレベル9相当らしいので、正直失敗する可能性など誰も考えないだろう。

 もし考えていたとすれば、それは完全に神様を相手にする事を想定している規模である。

 それでもこの神剣の行動パターンは、そこから万が一に備えて最後の強硬策に繋げられるように設定されていた分、用意は充分だったと思う。

 カイセはその最終手段を破ってしまったのだが。

 

 「この後が一番問題ですね。想定外に想定外が重なって行動選択に行き詰った結果、自己判断でその先に別のルートパターンの行動を繋げてしまったみたいですね。現状に近い類似行動として〔神剣の試練ルート〕の〔騎士ゴーレムが敗北した時〕が参照され、〔勝者を神剣のマスターとして認証する〕が実行されたようです」


 誤作動・誤動作。

 バグったと言うべきか。

 その結果としてトンデモない大惨事を起こしてしまっている。

 本来はもたらされるべきではない、本人もそれを望んでいない相手に神剣が手渡されたのだから大惨事と言って過言ではないだろう。

 最悪、相手によっては戦争が起きてもおかしくないレベルの失態だ。

 

 「……あ、死亡以外に神剣を手放す方法がありましたよ!」

 「なに!?どんなの?」


 思わず女神に詰め寄るカイセ。

 だがその方法は……。


 「〔魔王〕もしくは〔邪龍〕またはそれに相当する〔災厄〕を打ち払う事……そうすれば神剣も役目を終えたと判断して、再びあの洞窟で眠りに付くようです」


 そもそも神剣はそう言った人の手には負えないものたちを相手にする為に作られたのだ。

 その条件は当然と言えば当然だろうが……。


 「現在魔王は不在で再臨するにしても当分先、邪龍はカイセさんが既に浄化してますし、その他の神剣が必要になるような災厄は……見当たらないですね」


 そもそもその条件を満たすための相手が存在していない。

 居ないものを倒せと、無いものを解決しろと。

 当然無理である。


 「――災厄のサンプルがあるのですが、解放してそれを神剣で斬ってみます?」

 「斬らないし不安しかないし絶対にやるな。……そこでポカされると本当に大惨事になりそうなので、出来ればその方面には手を出さないで欲しい」


 いつも通りポカして、サンプルがサンプルで済まなくなってしまっても困る。

 いくら何でも世界を危機に貶めてまで自分の都合を優先するつもりはない。


 「となると……今すぐ出来る解決策は無いですね」

 「まぁそうなるよな」


 ここへ来る時には結局そうなるだろうとは予想していた。

 幸いなのが、自身に直結しているステータス999などと違い、この神剣は使う必要が無いものであることだ。

 手放すことが出来ない面倒な物は使わずに死蔵してしまえばいい。

 

 「結局知りたくない昔話が手に入っただけか」

 

 期待はしてなかったが収穫はゼロ。

 いや、〔楽な方法がない〕という情報は手に入ったからプラスではあるのか?

 人並み程度の信仰心がバッチリ下がったので結果マイナスな気がするが。


 「……しゃあないな。帰るわ。帰って不貞寝する」

 「あ、お菓子の残り、忘れてますよモグモグ」

 「あー残りはあげる……というかもう食ってるなよ?」

 「一仕事終えたので補給です。いただきますモグモグ」

 「それは食い始める前に……まぁ仕事頼んだのはこっちだしいいか」


 作業中は割と真面目な表情をしていた女神。

 いつもああであれば威厳も出てきそうなものなのだが。

 そんな事を考えながら、カイセはこの場を後にした。

 ――勿論、流れで女神のもとにさらっと置いてきた神剣も、いつの間にやらカイセのもとへと返ってきている。  

 自然とため息が出た。

 


  


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