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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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精霊術師





 「――あっさりと内部に入れましたな」

 「まぁ鍵持ってるから扉も開くわけだし」


 結界を越え乗り込んだ方舟。

 その甲板から内側へは、何の苦も無く足を踏み入れることが出来た一同。

 内部に進むための扉は閉ざされていた。

 だがこちらには方舟起動時に使用された鍵の一つである〔二振り目の神剣〕がある。

 これが扉の鍵としての役割も担い、カイセの手により簡単に強固な扉が開かれて進める。


 「…来ましたね。ここは我々が!はぁあ!!」


 すると早速のお出迎え。

 方舟内での小人兵との戦闘。

 もはや手慣れた騎士たちは、次々と切り伏せてゆく。


 「…次は来ませんか。やはりアレほどの数はここには無いと」

 「みたいですね」


 世界樹の領域内で無数の小人兵と戦い倒してきたカイセや騎士たち。

 だがこの方舟内にある小人兵の数はそれよりも格段に少ない。

 そもそもあれらは世界樹の為の兵士。

 方舟への配備はおまけも良い所なので、元々数は少ないのも仕方ないお話。

 

 「火の精霊は…全く出ませんね」

 「まぁ大将がボッコボコにされてるからなぁ」


 更にはエルフ達と手を組んでいた火の精霊一派も姿を見せない。

 そもそも頂点の火の大精霊があれだけボコボコにされた後。

 もはやその大半はこの騒動から離脱しているはずであるが…精霊の中には"はぐれ"となる者も居るようなので警戒はしながら内部を進んでいく。


 「この角の向こうが目的の…あ」

 「……」


 そうして間もなく辿り着く目的地。

 だがその扉の前に仁王立ちで待つ一人のエルフが待っていた。


 「貴方は…あの時の」

 「その節は世話になったな」


 見覚えのあるその姿。

 そして鑑定結果。

 彼は以前に出会った、いや今回カイセがここに来るきっかけを作った男だ。


 「改めて挨拶を。私の名はシェルサラマ。"樹官"および"外交役"を任されている。その節は誤解から騒ぎを起こし迷惑を掛けた。本当にすまない」

 「え?あぁいえどうも」


 エルフの男【シェルサラマ】。

 王都での騒動の原因になった男、神剣の盗難騒ぎで襲って来たあのエルフ。

 エルフの国における"樹官"と"外交役"を担う存在。

 国の内外両方において相当な地位を持つエリートエルフ。


 「だが今は明確な敵故、手加減無しに戦わせてもらう。行くぞ!――火精よ!!」

 「彼は…まさか精霊術師なのか?」

 「……」


 そんなシェルサラマが一同の前に立ちはだかり、そして突然火を纏う(・・・・)

 それは散々に目にした精霊の火。

 カイセの鑑定にも記されている彼の称号の一つ"精霊術師"。

 本来他者には比較的平等な精霊が一つの存在に固執して自身の力を分け与え、その精霊の力を纏い戦う稀有な者。

 精霊との親和性の高いエルフ族においても本当に限られた人数しかない精霊に選ばれた存在。

 

 「…《水牢獄》」

 「な…ぐぽぉ!?」

 

 だがその姿は大玉の水球に飲み込まれる。

 操られたミコにも放った《水牢獄》。

 水の檻に閉じ込められたシェルサラマは溺れながらもがきだす。


 「ぐぷ…ぐぁああああ!!!」

 

 するとシェルサラマはなりふり構わずに力を振るって水の檻を蒸発(・・)させた。

 火の精霊の力を全力で、水の檻は熱により完全に解かれた。


 「はぁ…はぁ…はぁ…ぐぅ!?」

 「確保!拘束します!」

 

 そうして自由を取り戻したが、しかし力はかなり消耗した。

 精霊の力を扱えるとは言え、その相手はあくまでも通常の精霊。

 大精霊ならまだしも一般的な火の精霊の力ならば、カイセなら力勝ちできる。

 脱出の一撃で大きく消耗したシェルサラマは、そのまま騎士たちに捕縛された。


 (とは言え…魔法使い過ぎてるからそろそろ大技が厳しくなる頃なんだよなぁ)


 だが999も無尽蔵ではない。

 方舟突入前にポーションである程度魔力を補充しているが、流石に龍の里で行ったような高品質ポーション飲み放題とは行かずに全回復までには至っていない。

 いや、無理に飲み込めば全回復まで至れはしたのだが、ポーションの負荷による身体的・精神的な疲労の加速を懸念して程々に済ませている状態。

 

 (でも流石に、決戦前にもう一本飲んどかないとダメか)


 騎士が捉えたシェルサラマに手を掛けている間にポーションを開けて飲む。

 龍たちの用意したあのポーションと等級的には同じはずだが、後味や肉体への負担は明確に劣る品。

 

 (うぐ…やっぱ品質の差がなぁ、本職の薬師ってわけじゃないからな。レシピ通りに作って出来ても、細かい部分で劣ってる分の差が明確だ)


 999のステータスや魔法適正ゆえに、やり方さえ分かれば大概の事は再現できるカイセ。

 だがそれは器用貧乏の域を出ない。 

 本職の細かな腕の差は再現できず、同じ等級でも劣ってしまう。


 「精霊術師と聞いて身構えましたが、随分と手を抜いて(・・・・・)ましたね」

 「そうですね。もしかしたら…もう諦めていたのかも」

 「かも知れませんな」


 そうして目的前の番人を倒したカイセ達。

 だが彼が本気でなかったのは皆の共通認識だった。

 そもそも本気でこちらを排除したいのならわざわざ名乗りは上げない。 

 出会いから言葉を交わす時間的余裕があり『これから行くぞ!』と宣言までしていた。

 正々堂々だと考える事もできるが、既に彼は今の情勢に見切りをつけていたのだろう。

 ゆえにこそ、本気ではあったが決して死に物狂いにはならなかった。


 「彼はひとまず眠らせました。別の場所に連れて行く余裕はなので、その辺に縛って置いておくしかないですね」


 実質的に無抵抗になったシェルサラマだが彼をわざわざ地上にまで送る余裕は今はない。

 なので物理的に眠らせて、ひとまずその辺りに結んで放置する。


 「退路の確保も兼ねて二名ほど部屋の外に待たせます。突入は残る面々で」

 「分かりました。では…開けます」


 そしてカイセらは目的地である、方舟の操舵室へとたどり着くのだった。

 



 

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