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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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その頃、部屋の外の人々


 「――何もでなくなりましたね」

 「そうだな…だが警戒は怠るなよ?」

 「勿論です」


 集団として動く人々。

 人族の騎士と、エルフの混成部隊。

 カイセと共に突入し、真っ当に入り口からスタートした面々は最初の戦闘を乗り越え先へと進んでいた。

 大量の小人兵との戦いは、一番最初が一番厳しかった。

 だが乗り越えて先に進むと…その後の戦闘は酷く簡単なものばかりだった。


 (最初のような大規模動員される戦闘はここまで一度もなし、数体程度の遭遇戦のような戦いが数度あっただけ。相手はもう、こちらに大部隊を送り込んで来るつもりはないか?それとも出来ない状況なのか…もしくは)


 進むほどに戦闘機会が減り、ここらの時間では一切何も来なくなった。

 もはや相手には戦力が残されていないのか、もしくは危険だと思われていないか。

 はたまたそれどころではないのか。


 (元より即席の混成部隊。戦力的には万全とは言えない。戦闘が少ないことはありがたい。だが…最初の戦いで、既にエルフ側の脱落も出ている)


 突入直後の戦いで、騎士側は脱落なく越えたがエルフ側に負傷・脱落者が二名現れ、そのままとんぼ返りさせることになった。

 騎士たちは王子に付けられるだけあって相応の腕を自負している。

 しかしエルフ側の面々は、どうしても寄せ集め感が否めない。


 (元より主力を欠いているのだから仕方ないのだが)


 そもそも最初の襲撃騒動時に、エルフ側の主戦力は大きく削られている。

 敵対して倒された者たち。

 中でも秀でた者たちは傷こそ大したものではなくとも、例の檻の中で無力化されている。

 勿論彼らで全てというお話でもないが、しかし戦力の配置に頭を悩ませねばならないエルフ達。

 今ここに同行している面々は、基礎こそ問題ないが経験に不安がありそうなことが、最初の戦闘でも明らかだった。


 (まぁないものねだりしても仕方ない。経験不足とは言え魔法の手数が増えるのはそれだけで利点だからな)


 動きは悪くとも魔法の腕は人並み以上のエルフたち。

 その戦力はマイナス面を考慮してもプラスに傾くのは確かである。


 (にしても…エルフとの共同作戦か。帰ったら自慢できそうだ)


 そんな合同部隊、人族とエルフ族が共に行く今。

 騎士であっても滅多に経験できない事。

 少々不謹慎だとは思うが、帰国後の良い土産話になりそうだと考える騎士リーダー。

 あくまでも他言できる範囲が何処までになるか次第でもあるが。

 何せ事がエルフの内輪揉めスキャンダル、政治的にも不安になるお話なのだから。


 「これは…」

 「戦いの後だな」


 そうして騎士とエルフの合同部隊は、進む先で覚えのない戦闘の痕跡を見つける。

 自分たちではない誰かが戦った後の場。


 「火の精霊の魔力が微かに残っていますね」


 焦げ跡に、エルフの感覚。

 それらからここに火の精霊が居たのは確かであるようだ。


 「こっちもですね。この位置は…目的地へのルートに立ちはだかる門番、と言ったところでしょうか?」


 更にその先で見つけた痕跡も、また火の精霊の残滓。

 目指す場所へのルート上に、立ちはだかるように配置されていたのではと推測が出来る。


 「それも全て倒されて消えた。我ら以外にあの場へと向かい、火の精霊と敵対する者…カイセ()か?」


 この場へと踏み込んだ際に分断されたと推測されている同行者カイセ。

 龍や鳥を従え、王子も気にする謎の人物。

 今は何処で何をしているのか全く状況が掴めない味方。

 クーデター勢力に協力していると思われる火の精霊と敵対する理由があるのは自分たち以外には彼ぐらいしかないはずだ。


 (勿論別勢力の可能性もゼロではないだろうが…事がややこしくなる。彼であって欲しいものだ)


 そのまま一行は痕跡を辿るように先へと進んでいく。

 そして…辿り着くのは目的地の目前。



  

 「――あぁそっちも来たのか。意外と早かったな」


 するとそこには見知らぬ存在が待っていた。

 その体は炎。  

 つまりは火の精霊の一体。

 ただし…そこに敵意は感じない。

 だが騎士たちは警戒を怠らずに身構える。


 「…話せる火の精霊、確立個体というやつか」

 「そんな堅苦しい呼ばれ方してるの?ボクらって外だと」

 

 精霊には明確なランクなどは存在しないが、人の世の研究者が便宜上分類分けしたものがある。

 生まれてしばらくの、自我が乏しく上位者の指示で動き、普段はただただ彷徨うばかりの一種の赤ん坊である〔幼生個体〕。

 そこから自我が芽生えて自分の判断を持つことが出来るようになった〔成長個体〕。

 更にしっかりと自分の意志を持ち、性格も個性を持つに至った〔確立個体〕。

 通常の精霊はこの三つの成長段階に人は区分けしている。

 そして目の前に人らしさを見せる火の精霊は間違いなく確立個体。


 「ちなみに今は戦う意志ないから。その物騒な敵意を向けるのやめて貰えないかな?」


 そんな火の精霊は文字通り、敵意も害意も一切見せない。

 壁に寄りかかりのんびり佇むだけ。

 こちらの警戒にも全く動じずマイペースに立っているだけ。


 「この扉の向こうに用事があるんでしょ?入りたいなら入ればいいよ、邪魔しないから」


 そのまま一行の向かいたい、目の前の扉の向こうへとむしろ歓迎するように誘導する。


 「まぁ、入れるものならば、だけど。よっと」

 

 その言葉に罠を疑う一同だが、火の精霊が自ら開くその扉。

 向こう側に、目的地に見えた光景に納得した一同。


 「じゃあ締めるね。よっと…で、この中に入りたい人はいる?」

 「………」


 一同はその質問に黙るしかなかった。

 扉の向こうに見えた光景や感じる魔力は正に地獄絵図。

 火・水・風・土、あらゆるものが嵐のように飛び交う戦場。


 「今ね、中で二つの戦いが起こってて、その一つがなんと大精霊全集合の大乱闘なんだよ。我らが火の大精霊に、敵対した水・風・土の三つの大精霊が合同で立ち向かう大精霊同士の戦い。そんな中に入りたい人が居たら手を挙げてー!」


 当然誰も上げずに沈黙する。

 もしあの中に踏み込めば容赦なく四属性の嵐に巻き込まれどうしようもない目に遭う。


 「ボクはここに余計な誰かを入れるなって指示されてるんだけど…何もしなくても誰も入れない現状なのでノンビリしています。手出しはしないから君たちもしばらくはノンビリするといいよ。少なくともアレが終わるまで」


 そんな状況なのもあり、門番役の火の精霊は何もせずノンビリしているようだ。

 何もせずとも彼の目的は達成されている。

 もしこのまま扉を通ろうとしても返り討ちにあるだけなのは目に見えている為に止める気はない様子。

 

 「…見張り役を残し、一部は周辺の探索をさせ、本隊は一度休息を入れましょう」 

 「ですね…」


 辿り着いた目的には入ることが出来ない。

 悔しいことだが、無理に進んでもマイナスしか起こらない。

 ゆえに警戒と、周辺の調査、その二つを任せる人員以外は一度ここで休息を取ることにしたのだった。


 






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