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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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火の障害



 「――地味に嫌がらせして来るなぁ…こっちもダメか」


 集団と分断されたカイセ。

 巫女との戦いも無事に終え、改めて移動を始めた。

 再び展開した守護騎士ゴーレムを先行させて意識を失い眠ったままのミコをカイセが背負って運ぶ。


 「…ここも道が潰されてるな」


 そして進む世界樹の領域内の道。

 事前に地図は頭に入れて来ているカイセだったが、目的通りには進めずにいる。

 何せいくつもの道が封鎖されていて選べない。

 残されたルートを辿ると、目的地から離されていく。


 「塞がれてるのはゴールに向かう道ばかり。これ完全に目的地へのルートを封鎖してるのか?」


 敵の進行を留める為の通路封鎖。

 だがそれは内側に籠る者達にとっても背水の陣のような逃げ道のない籠城戦を強いるもの。 

 

 「本当に全部の道を埋めてるなら別の道を選んでも一生たどり着けない。となると…この()を突っ切るしかない」


 これが目的地へのルート全部を潰されているのなら避けてばかりでは一生辿り着けない。

 なら進む道は封鎖された通路。

 封鎖された道は物理的に遮断されているわけではない。

 その通路いっぱいを《炎》が埋め尽くしているだけなのだ。


 「炎…それも火の精霊の《豪炎》か」


 だたしその炎はただの火ではない。

 自然の炎でも、魔法の炎でもない。

 それは"火の精霊"によって放たれた豪炎。


 「今の防御装備でこの炎は防げるか?」

 『致命傷の回避は確実に可能です。ですが完全には防げずダメージを負うのは避けられません』


 操るでなく、精霊が生み出し放つ水や火は、通常の魔法や自然の物とはまた質が異なる。

 簡単に言えば非常に強力。

 用意した防御装備でも、目の前の豪炎は完全には防ぎきれない。


 「魔法で炎は消せる?」

 『可能ですが、強力な水魔法が必要になります』

 「自然鎮火は?」 

 『当分先です』

 

 とは言え炎である以上、消えない火は存在しない。

 どんな火でもいつかは、そして何かしらの手段で消す方法は存在する。

 だがその鎮火を待っていれば日が暮れる。

 しかし魔法で消せば今すぐにでも道は開く。

 だが…その強力な火を消す程に強い魔法は当然魔力消費も多くなる。


 「どうあがいても消耗は避けられないなぁ…」


 防御頼みの強行突破は負傷前提。

 ケガを負うし治そうとすれば魔力なり回復アイテムなりを消耗する。

 魔法による鎮火は純粋に魔力を削られる。

 自然鎮火を待つと時間が削られる。

 どうあがいても何かが減る、立派な障害、いやがらせの足止めだ。


 「ならまぁ後続の為にも、とっとと火を消した方がいいな」


 ならばはぐれた一団が後からこの道を通る可能性を考慮して火を消す方が良い。

 一度消せばその障害は撤去され、誰でも安全に進めるようになる。


 「――良し消えたな…って、何か居る!?」


 ゆえに目の前の炎の障害を消し去ってみれば…出てきた敵。

 

 「障害物の火を消したら敵が出現って何かのゲームであったような…ってこれ火の精霊?」

 

 障害物を撤去すると敵が出現する、かつての世界のゲームで見かけた演出のような敵とのエンカウントを思い出すカイセ。

 そんな懐かしい思い出が沸く中で、対峙するその敵は【火の精霊】本人。

 揺らめく炎の体を持つ存在。


 《――ブォォオオオ!!》

 「あっつ!?これは…完全にやる気満々か!?」


 そうして出現した火の精霊は問答無用でカイセに襲い掛かってくる。

 体の炎を轟轟と滾らせる。

 元よりクーデター勢力は火の信奉者。

 火の精霊と結託して事を起こしている可能性は十分にあった。

 なので敵対そのものは想定内。


 「でも…様子がおかしい?」


 しかし実際に対面した火の精霊には違和感があった。

 以前対峙した水の精霊のような〔意志〕を感じぬ炎の精霊。

 成長度合いによって自我が鮮明になるという精霊は、生まれたばかりはその自我も薄いと言う。

 だが…目の前の火の精霊に感じる違和感は自我が薄いというよりもそもそも感じない。

 それはまるで先ほどの巫女のような…。


 「何にせよ、戦わないとどうしようもないか。幸い水の大精霊のお許しは出ているわけだし遠慮なく!」


 巫女のような不自然な火の精霊の状態。

 しかし巫女と違って手加減の必要はない。

 この場で倒して消してしまっても問題はない。


 『《通常の精霊に死という概念は存在しません。精霊とは生命ではなく現象なので自我があろうと生き物ではなく、倒したからと言って死ぬわけでもありませんから。その自我も、大精霊により時間は掛かりますが新たな精霊に継がせる事も可能ですので。その為に必要な情報は常に属する大精霊に内包されていますので、どうぞお気になさらずに敵対する精霊は吹き飛ばして構いません》』


 この場に居ない(・・・・・・・)水の大精霊から事前に貰った忠告。

 精霊は吹き飛ばしても何とでもなる。

 失えば終わりの人間、エルフとは違って配慮しなくともよいという楽な相手。

 注意すべきは大精霊のみ。


 「悪いが、そういう事なんで手っ取り早く――良し終わり」

 《ブ――》


 そして消え去る火の精霊。

 滾る炎の体は一瞬で霧散する。

 相手の安否を気にしなければそれこそ一撃で決着する。


 (相手が大精霊なら、こうも行かないだろうけど)


 とは言えそれは通常の精霊が相手だからこそ。

 もしこれが火の大精霊が相手となればこうはならない。


 「なんにせよ、今は進もう」


 この先で敵対するかはまだ不明。

 とにかく今は前に進む。

 豪炎が消され、火の精霊も倒したその道は黒く焦げながらも道としての機能を取り戻した。

 

 「…ここもか」


 だがその道の先でまた出てきた分岐点。

 右への道は普通の道。

 左への道は豪炎の道。

 本来なら左が目的地への道。

 やはり重要なルートだけしっかりと、道が炎で塞がれている。


 「で、消すと…やっぱり火の精霊と」


 そして炎を消せば再び、また別の火の精霊が襲ってくる。


 「ふぅ…これ目的地まであと何個分岐点あったっけか?」


 当然難なく消し飛ぶ火の精霊だが、少しずつ着実に魔力は減っていく。

 999のステータスがあろうとも、時間経過による魔力回復よりも消費が上回れば減る一方なのは変わらない。


 「…少し、急いだほうがいいかも」


 普通の相手ならここで倒されてもおかしくはない障害。

 だが返り討ちに遭う事も想定して、障害を残し続ける相手の思惑。

 火の精霊を倒せる相手の力なり時間なりを削り続ける手。

 そこに嫌な予感を感じ始めるカイセ。

 魔力消費か時間消費、どちらも相手の思惑通りになれば取り返しがつかなくなるような予感が。


 「ちょっと荒くなるし、出来ればこのまま眠っててくれ」


 背中で眠るミコを気にしつつ、カイセは開いた道を急ぎだす。

 荒っぽい移動、眠るミコの安眠を妨げるかもしれないが仕方ない。

 この先は魔力消費は気にせずに、代わりに時間を無駄にしないと決めたのだった。

 


 

 


 

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