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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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突入



 「――引継ぎが完了したそうです。数分後には開放されるでしょう。皆様お心の準備を」


 結界の解除まで数分となった今、集った面々は閉ざされている聖域への突入の時を待つ。

 エルフの要職の引継ぎは済み、あとは《箱庭結界》の開放。

 それと同時に集った面々は下手人の確保と被害者の保護に動き出す。


 (エルフと騎士たち、装備は正反対だなぁ)


 そこに集いし突入部隊の面々。

 エルフたちと、人族の王子配下の騎士たちの姿は正反対。

 エルフ達は軽装の装備を纏い、騎士達は重装の鎧を纏う。


 (まぁ、軽装とは言え手を抜いているわけじゃない。動ける面々の中での精鋭って言うだけあってステータスもそこそこ良いし、装備もきちんと上質の物だな)


 信奉者と対峙したエルフ達の中で特に優秀な者達は樹液の檻に閉じ込められ事実上の戦闘不能状態になる。

 ゆえにここに集い突入予定のエルフ達はこの国の最高戦力とは行かないが、それでもこの役目を任されるだけの質の者達であるのは言うまでもなく、纏う装備もエルフ製の上質品であることから軽装だろうと手を抜いているわけではない。

 むしろこれがエルフ達の本気のスタイルだろう。


 (騎士達は…これだけガッシリしててもきちん動けるのって純粋に凄いよなぁ)


 対して重武装の、全身鎧に剣と盾を携えた王道騎士達は頑丈で強力だがその分重量に難を持つはずだった。

 しかし王子に付き従う資格を持つ彼らはその道のエリートとも言える。

 どれだけ装備が重かろうと、縦横無尽に動けるだけの力を持つ彼らは、王子からの命をしっかりと果たしてくれるだおう。


 (で…まぁ俺は浮くよな、このメンツの中だと)


 そんな彼らと共に突入するカイセ。

 唯一専門の戦闘教練を行っていない外様の人員。

 この場においてのオンリーワンの姿に、目立つのも仕方の無いこと。

 ちなみに装備は以前にダンジョンに突入した際の一式を、実践経験をもとに少しアップグレードしている。

 

 (でも…まぁ一番はゴーレムの方か)


 その上で…カイセの傍に立つのは例のゴーレム二機。

 同型双子機【ウコン/サコン】の、修復とアップグレードを行った〔Ver1.2〕とも言うべきゴーレム。

 基本のステータス性能は以前と変わらないが、実働データを基に燃費改善やら効率化などの細かな調整で結果として、反応反射など細かな部分が上がっている。


 (実はもっと強化も出来なくはなかったんだけど…あっちに素材持っていかれたからなぁ)


 本来ならステータス性能も向上させるつもりだった。

 しかし例の〔聖女専用ゴーレム〕である【白銀/黒鉄】の修復に多くの素材を持っていかれた為に叶わなかった。

 とは言えダンジョン攻略時よりも強化されたのは事実であり、今回実質的に最後尾のカイセよりも更に後ろの殿位置で集団を守るに足る性能なのも確か。


 「はぁー。なんつう鎧を纏ってやがるんだ…」

 「これほどの鎧と盾は早々お目に掛かれんな」

 「なぁカイセ。騒動が落ち着いた後で良いから、ちょっとこいつを着させてもらってもいいか?」

 「あ、ずるい!俺だってこの盾構えてみたい!!」


 だがそんな騎士型ゴーレム二機は、本職の騎士達に囲まれていた。

 彼らの興味はゴーレムに纏わせている鎧や盾。

 騎士として、鎧や盾に一家言を持つ面々。

 若干オタク感(・・・・)のある彼らは、上質な鎧と盾に興味津々のようだ。


 「騎士方よ!まもなく扉は開く!準備の程は良いのでしょうか?」

 「勿論、いつでも万端ですよ」


 そうしてエルフからすれば遊んでいるようにも見える一行。

 だが意識はしっかりと仕事モード。

 緩く見えても一切警戒を怠らず、それこそ何時でも全力を振るえる状態を会話しながらも保っている。


 (自然体で緩みは一切無し。流石王子を守る騎士というべきか、スタータス以上の頼もしさを感じるな)


 眼に見えるステータスだけでは測れない強さをしっかりと持ち合わせる騎士たち。

 仮にも彼らは王族を守る者達。

 少数だろうと関係なしに、頼もしさを醸し出す熟達のオーラ。


 「…まもなく来ます!カウント30!」


 そしてその知らせと共に場の空気が引き締まる。

 結界解放まで三十秒。

 カウントダウンが始まる。

 

 「十…九…八…七」


 そのままカウントは一桁に、突入の時は目前に迫る。


 「五…四――え?」

 「全力防御ぉお!!」

 「おおおおおお!!!」

 

 だがそのカウントが四を告げたその瞬間、唐突に結界が解かれた。

 こちらからの強制解除でなく、内側からの任意の解放。

 完全にタイミングをズラされた(・・・・・)一行。

 すると解放と同時に、その内側から放たれる魔法の攻撃。

 こちらの不意を突く為の、完全な不意打ちの一撃。

 解放と突入は防げないからと、あえてあちらに都合の良いタイミングで一足先に解いて不意を突いた。

 そして一行へと襲い掛かったのは強力な高威力魔法が三種(・・)

 同時に向かってくる三つの魔法に対して…そんな不意打ちにも即座に反応した騎士達が壁となり盾となり、案内役として先鋒を担うはずだったエルフ達の前に出て構えて彼らを守る。

 彼らが反応出来て居なければ、先鋒のエルフ達は全滅していただろう。


 「チッ!?止められたか…ならもう一発――ぐぁ!?」

 

 そんな一撃も静まると、視界に見える襲撃者の存在。

 彼はすぐさまニ撃目を放とうとしたが…いつの間にか接近していた騎士の盾に叩き潰され気を失う。


 「いつのま…ぐお!?」

 「あが!?」


 そしてそれが三か所。

 三つの魔法のそれぞれの発動者が、あっという間に騎士たちに制圧された。


 「襲撃者制圧!周囲に残敵の気配なし!」

 「皆さん、無事ですか?」 

 「あ、あぁ…」


 敵の不意打ちを受け止め、更には制圧まであっという間にこなして見せた騎士達。

 対してその手際に、あっけに取られるエルフ一同。

 彼らもそれなりに腕に覚えがあるはずなのだが、今回の不意打ちには何もできなかった。

 恐らくは経験の差が如実に現れた形なのだろう。


 「補佐官殿。コイツらをお願いします」

 「あ、はい。すぐに拘束を!」


 するとその襲撃者を引きずって来た騎士は、カウントを行っていたエルフ側の見送り役に気を失った敵の身柄を明け渡す。 


 「…転移地点まで何の気配もありませんね」

 「待ち構えていたのは三人だけか」

 

 そんな彼らを尻目に、カイセは道先の安全を確かめていた。

 不意打ちに対する守りも攻めも騎士達だけで充分のは直ぐに理解できたので、更なる不意打ちに備えつつこの先の索敵も済ませる。

 だが最初に向かう転移ポイント。

 例の転移小屋までの道中に人も精霊も気配は一切なし。


 「隊長殿。では指示を」

 「あ…行きましょう!」


 今回の突入は、エルフ側にリーダーを置いている。

 ここは、そしてこの先はエルフの管理領域。 

 内部構造においても精通しているのは彼らの方。

 特に隊長を任された彼は、ゲストパス等の一時的な許可でなく、恒常的な立ち入り許可を持つ人物。

 もしもに備えて要役を任せるに足る資格はあるのだが…騎士達に比べるとどうしても実戦経験の不足が否めない反応だった。


 「不意は突かれたが…結界は解けた!予定通りに進むぞ!」


 そんな予定外の始まりとなったが、無事にスタートを切る突入隊。

 待ち構えていた敵は不意打ち役の三人のみだった為、早々に転移小屋は確保した。


 「…転移は一度に五名まで。予定通りのグループ単位で順番に跳ぶ。ただ…戦力が小分けになるこの転移直後にまた不意打ちの可能性あります」

 「えぇなのでより強固な私達が先陣を…」

 「すいません。一番手行かせて貰ってもいいですか?」

 「む?カイセ?」


 だがその転移は人数制限があり、戦力の小分けに転移直後の隙は不意打ちの恰好の狙い目。

 ゆえに転移直後に戦闘が起こる想定で、一番手は転移の出口の安全を確保し後続を守る役目をしっかりとこなせる必要があり、より守りに適している騎士を主体にする提案は当然の流れ。

 しかしカイセは名乗り出て、その貴重な五枠の一つに志願する。


 「俺は転移慣れしてますから着地した瞬間にすぐに行動できますし、ゴーレムは仕舞えますから一度に多くの戦力を運べます」


 カイセはゴーレム二機を《アイテムボックス》に一度戻す。

 人でない二機は道具として運べ、これでカイセと二機のゴーレム以外にも転移の席は四つになる。

 数だけで言えば一度に七を送り込める。

 本来の予定なら一番最後に単独で跳ぶことになっていたが、カイセを一番手にする事で転移先での不意打ちに備える手を増やすことが出来る。

 

 「…グループの再編を行いましょう。先陣に最大戦力を固めて備えましょう」

 「…そうしましょう」


 こうして改めて一番手の五人が選抜される。

 カイセを含め、騎士側エルフ側の最大戦力を固める。


 「――さて、では行きましょう!」


 そして第一陣が小屋の中の転移陣を用いて、敵の待つ領域へと足を踏み入れる。

  

 

 

 

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