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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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図書館で情報集め




 「――多すぎる…この途方もない棚の本だけでも、全部読みきる前に人生終わるだろ…」


 カイセが向き合うのは本棚。

 ここはいつもの〔星の図書館〕。

 実質的に、この世界全ての知識が本の形で納められた知識書庫。

 カイセが持つ《星の図書館アクセス権限 Lv.10》により、人の身で触れられる本全ての閲覧権限を持つ事になるが…世界一つ分の知識がここにあるとなれば、当然その全てを閲覧するだけの時間などありはせず。

 ゆえに当然ながら必要な情報だけを探し出すが…ジャンルを絞っても途方もない。

 

 「世界樹関連…多すぎるな」


 その中で、今回カイセが求めた情報は〔世界樹〕にまつわる知識。

 明日に控えた共同作戦、エルフの国で誘拐されたフェニとエルマの奪還。

 それを控えての夜の時間、カイセは念のために世界樹についての知識を得ようとこの図書館にやって来た。

 普段私用に関しては自ら閲覧レベルに制限を掛けているが、今回は他者の安否にも関わること。

 自主規制を取り払いつつ、備えのための勉強をとやって来てはいるが…目の前の本の数に頭を抱える。


 「世界樹、そりゃ世界の根幹にも関わる存在だろうって言うのは名前からわかるけど…それにしたって…棚の端っこが全く見えないなぁ…遠すぎて」


 長すぎる本棚、先の見えない終わり。

 世界樹に関する本を納めた本棚にやって来たカイセだが、今までの調べ物の中で最も多い…いや正確に言えば終わりが見えていないので何処まで多いのかは分からないが、しかし過去一番に大変なのは理解できた。

 目の前の本棚から視線を横にずらしていくと…視線の彼方、終わりが見えず地平線の先まで続いていそうなその棚に既に億劫さを感じていた。


 「ここの本棚、やっぱり人の身の閲覧が想定されてないよなぁ…探す機能とかないし」


 棚には大雑把な種別が記され、本にも一応は内容を示すタイトルが付いている。

 だが目安程度にしかならず、開いてみても実はタイトルは触りだけということも起こりえる不便さ。

 便利な検索機能もなければ案内役もいない。

 それだけの情報で文字通り数えきれない蔵書の中から目当ての知識を納めた本を探し出さなければならない。

 いくら現実と比べて時間の流れが緩やかな場所とは言え、人の身では一生をかけても1%も読み切れないのではというお話。


 「とりあえずそれっぽいタイトルのをパラ見して…天使みたいに一発で目当ての本を集められばいいんだけどなぁ…」


 仕方なくいつも通りに、目の前の本棚からあてにならないタイトルだけを頼りとして本を物色する。

 そこでうらやましくなるのは天使。

 二振り目の神剣について尋ねる為に会って来たポカ女神と天使。

 その際に天使は目当ての本を簡単に手早く取り寄せて読んでいた。

 あれがカイセにも出来れば知識探しも簡単なのだが、当然それは人の身には許されていない手法。

 地道に繰り返すしかない。


 「…『世界樹はこの世界を支える重要なシステムの一つでありその詳細は神のみぞ知る――』…『世界樹の誕生は創世期にさかのぼり――』『世界樹は宗教的な――』ダメだ。もっと現実的な…世界樹そのものよりもそこに付随するエルフや聖域の情報の方が…むしろ途方もない世界樹本よりエルフの棚から探したほうが…移動しよう」


 そしてカイセは途方もない世界樹棚を離れて棚を移る。

 広い図書館を、体感で一時間ほど歩いて見つけたエルフ関連の本棚。


 「移動だけで一苦労…だけど、広さに反して早く見つかったか。さて早速」


 そのまま再び本を手に取る。

 

 「…『エルフ族は当初鎖国に近い形で多種族との交流を拒んでいたが、当時の巫女の――』『エルフ国から輸出される物資は毎年総量にして――』『エルフの中でも特に精霊との親和性の高い者はハイエルフと呼ばれ――』あ、ハイエルフもいるんだこの世界。えっとこっちは…『エルフは世界樹の守り人として〔方舟〕の管理も担っており――』ん?方舟?」


 するとその何冊目かの本の中に〔方舟〕という単語を見つける。

 カイセがこのワードに引っ掛かるのは、やはり故郷の世界で有名な〔ノアの方舟〕の知識があるからか。


 「方舟の詳細は書かれてないか。方舟…あんまり良いイメージはないよなぁ」


 ノアの方舟と言えば、堕落した人間たちに呆れ世界を洪水で洗い流すことに決めた神様が"正しき人間"だけを救う為に〔箱舟〕を作らせ、最終的にはその方舟に乗っていた正しき人間と動物たち以外は全てが神の起こした大洪水に押し流されたという、生命にとって最後の砦となった舟のお話であり、人間にとってはかなり理不尽とも思える神のエピソード。

 正直…カイセはこのお話があまり好きではない。

 

 「捉え方は色々あるだろうけど、個人的な…子供の時に初めて聞いてからの第一印象は『神様酷い!』だったからなぁ」


 カイセにとってこのお話の印象は単純に、気に入らないからと全てを押し流しリセットしようとした神様の横暴さを強く感じるものだった。

 成長して、宗教面など様々な背景があることを知りはしたが、子供の第一印象がもっとも根強く染みつく。


 「方舟…女神…まさかこの世界に、本当にリセット機能付いてないよな?」

 

 唐突に出てきた方舟という言葉。

 そして実在する女神の存在。

 あくまでもお話であるはずの〔ノアの方舟〕が、現実味を感じる要素が揃う世界。

 今、生きているこの世界も、神様の匙加減一つで簡単に押し流される可能性と、ここで示される方舟が本当に一部の生命だけを救うためのノアの方舟である可能性が過って背筋がぞっとする。

 

 「…単語としては何回か出てくるけど詳細は不明と…見つけきれてないだけか、人間の閲覧権限外なのか、なんにせよ見つからないなら仕方ないな」


 そんな方舟の詳細は、ある程度探ったが全く出ず。

 ここまで欠片も情報が出ないのは、そもそも閲覧権限に収まっていない、つまり人間には探るだけ無駄というお話になりそうだ。


 「じゃあ改めて本筋に…これは巫女の…え?そういう仕組みだったの?」


 そんな方舟はひとまず置いて、更に本を漁っていくと…出てきたのは"巫女"についての書物。

 エルフの国においてたった一人だけが担うお役目にして、長命たるエルフの更に長き時を不老の身として見守る世界樹の巫女。

 その不老の正体(・・・・・)


 「生身じゃないなら…そりゃ不老にもなるか」


 世界樹の巫女のシステム。

 あの時あの場所で向き合い言葉を交わした巫女のミコ。

 彼女はある種の《ゴーレム》や《ホムンクルス》だった。

 

 「『巫女に選ばれたエルフの肉体は世界樹の御許で眠り続ける(・・・・・)』『本来の肉体の姿を模した形で"巫女"としての力と役割を与えられた〔巫女の義体〕が作り出される』『巫女の本体は世界樹に守られながら眠り続け、しかしその意識は確かにその義体を本物の自らの体のように遠隔で操作し、言葉を話し、巫女としての役目を果たしていく』か。だからこそ、ただのエルフがいきなり999もの力を授かることが出来て、不老の…年齢の概念も超越出来ると」

 

 不老なのはあの体が作り物だから。

 本来、純粋な人型生命には到達しえない999のステータスも《鑑定Lv.10》の後付け付与も全て〔そういう力を持った義体〕だから。

 本物の、本来のミコの体は人の目に触れない世界樹に守られながら今も眠り続けてる。

 義体を操る彼女の意識以外は、全て本来の彼女の持ち物ではなく巫女の役目の為に与えられた体だった。


 「…あの場所を出れない。義体の活動範囲の制限の問題か?世界樹とは言えこの現世の地上に存在するシステムなら神のように簡単には999の体を作るなんて出来ないだろうし。もしくは意識の接続の問題?時間の概念から隔離された肉体って、あの体じゃなくて世界樹の中で眠る本体のことか?あの場所を出れば時間に飲まれる…眠らせた肉体を永らえさせてる概念的魔法の効力が切れて目覚めた瞬間に、切り離した時間のしっぺ返しを食らう?コールドスリープみたいな物理的なものではないだろうけど。あとは、時間から隔離するその魔法自体に有効期限があれば、不老であれど不死ではないのも…いつかは巫女の役目にも終わりが来るのも…いや単純に義体の寿命の問題か?」


 知ってしまった巫女のシステムにあれこれ想像と推測を膨らませる。

 自身も日頃ゴーレム弄りなどで〔作られた体〕に触れているせいか、ステータス999の義体にも興味がないと言えば嘘になる。


 「まぁ…俺自身も、意図しないとは言え〔女神が作った999の体〕だからな。これはこれでミコとの共通点って話になるのか?実は俺も大元の本体は何処かで眠って遠隔操作をして…考えるのはやめとこう」


 ちょっとゾっとする推測が出てきたが、人の身には確かめようのないお話なのは考えることはやめた。


 「にしても…なんかもっとこう…明日に直接役立つ知識は見つからないものか…あの場所の隠し通路や秘密の脱出口とか、結界をすぐに解く裏コードとか、より確実に安全に救助出来るようになる情報は…」


 そんな方舟に巫女の情報は、正直言って脱線もいいところ。

 求めてきたのはより確実にフェニやエルマを救うのに役立つ情報。


 「…このままここを探し続けるか…もしくは他を、精霊方面から調べるのも…はぁ、キリがないしあてもないな。この作業」


 なおも膨大過ぎて途方もない星の図書館の蔵書に頭を抱えるカイセ。

 それでも本を手に取ることは止めずに、とにかくなんでもいいからと、有益な情報を求めるのであった。

 

 

 





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