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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第二章:聖剣依存の凡人勇者
18/221

新たなる主


 個体名:―

 種族:人造ゴーレム

 年齢:―

 職業:守護騎士

 称号:"神剣の守護者"


 耐久 400+200=600

 魔力 400

 身体 400+200=600

 魔法 ―


 特殊項目:

 性能強化 Lv.7

 剣術模倣

 活動制限(600秒) 



 

 神剣の防衛システムにより召喚されたゴーレムは、物理戦闘特化の騎士型ゴーレム。

 魔法は使えないが魔力を全て性能強化に充てられ、そのせいで素体ですら十分な程の高性能に関わらず、上乗せで勇者クラスの性能にまで届いてしまっている。

 作り物ゆえに活動制限時間はあるが、大抵の相手であれば瞬殺。

 邪龍が相手でも戦える。

 ――そんな高性能ゴーレムに攻撃されたカイセは、手加減(・・・)が出来なかった。

 普段は自主的な加減調整と、大部分を〔特殊な魔法〕で抑え込んでいるステータス999。

 それを全てでは無いとは言え、大幅に外さなければ対応出来ない程に。   


 「……やり過ぎたなぁ」


 カイセの目の前には、ボロボロになった騎士ゴーレムの亡骸があった。

 時間切れまで粘るつもりであったのだが壊してしまった。


 「これ弁償しろとか言われないよな?勇者から巻き上げ……もとい支払って貰った代金じゃ絶対に足らないぞ?」


 この騎士ゴーレムは、最低でも国宝級。

 性能を考えればそれ以上でもおかしくはない。

 当然、そんなものを弁償できるだけの資産など持っていない。

 

 『問題ありません。このゴーレムの所有権は既に新たなるマスターに移行しています。このゴーレムが破損する事で何かを請求されることはありません』


 そして一番の問題点。

 ゴーレムを倒したその瞬間に、カイセの腰に鞘付きで添え付けられた【神剣(しんけん)エクスカリバー】。

 何度も何度も引き剥がそうとしても、ここが定位置とばかりに舞い戻って来てしまう。

 

 「ところで、お前はさっきまでの声と同じ奴だよな?やたらと言葉が流暢になってないか?」

 『新たなるマスターの言語知識をもとに調整しました』


 いつの間にと思いつつ、とりあえず確認しなければならない事があるようだ。


 「その『新たなるマスター』ってのは誰の事だ?」

 『貴方の事です』

 「貴方って誰?」

 『今、神剣を腰に据え「貴方って誰?」と問いかけて来た貴方様です。貴方が私の新たなるマスターです』


 今現在、この神剣の所有者はカイセとなっていた。


 『〔自動鑑定〕が弾かれたため、個人名を登録できません。新たなるマスターのお名前をお教えください』


 どうやら神剣の持つ鑑定を、カイセは弾いてしまっていたようだ。

 ゆえに先程から面倒な言い回しを続けている。

 

 「……俺の名前は〔ロバート〕だ」


 そこで嘘を教えるカイセ。

 これで厄介者を押し付けられれば良いのだが。

 

 『それは先程送還した勇者の名前ではないでしょうか?』


 そして即座に見破られる。

 見当たらないと思っていたが、どうやらカイセよりも先に神剣に接触し、既に送還されていたようだ。


 「折角ならその勇者を新しいマスターとやらにしてくれませんかね?」

 『勇者ロバートは神剣の所有を望みませんでした。そのためこの空間に関する記憶を消去した後に、元の場所へとお帰り頂きました』


 ロバートも神剣は求めなかった。

 聖剣はあくまでも神剣の模造品。

 勇者ロバートなら、より強い剣である神剣のほうを求めていても可笑しくは無いと思ったのだが。


 『勇者ロバート曰く、「自分には聖剣があるからこんな場所に放置された土だらけの剣なんて要らない」だそうです(怒)』


 感情を持たないはずなのに、腰の神剣からは怒りの意志を感じる。

 

 (勿体ないというか、見る目が無いというか……俺も《鑑定》頼みだから人の事を言えないかもしれないけど)


 確かに地面に刺さった神剣は、土汚れと埃で神剣には見えなかった。

 だからこそ勇者ロバートの発言も分からなくもないのだが……。

 とにかく絶好のチャンスを不意にしたようだ。

 

 『どちらにせよ、あの勇者の実力では〔試験〕に合格する事は出来なかったでしょうが』

 「……その〔試験〕ってのは何なの?そもそも俺は所有を望まなかったんだけど何でこうなったの?」

 『試験内容は、「召喚された騎士ゴーレムと戦う」事です。合格条件は〔勝利〕もしくは〔時間切れ〕。敗北さえしなければ合格となります』


 要するにあの騎士ゴーレムは、本来は腕試し用の試験官だったようだ。

 あれだけの性能に勝つ、もしくは逃げ切れるだけの実力があれば、神剣の所有者として相応しいと言う事なのだろう。

 だが……


 「もう一度聞くけど、俺は神剣の所有を望まなかった。なのに何で今お前は俺の所有物になってるんだ?」

 『機密保護の為に騎士ゴーレムを召喚しました。貴方はその騎士ゴーレムを倒し、合格条件を満たしました。そのため新たなマスターとして承認しました』


 話が噛み合わない。

 機密保護の為に召喚された騎士ゴーレムに勝ったからと言って、倒した相手が新たなマスターになる流れがカイセには理解できなかった。

  正当な試験でがなく、あくまでも強硬策で行われた戦いで、護衛を倒してしまった不審者にその宝物を献上してどうするのだろうか?

 「宝は渡すから命までは取らないでくれ」という展開であるなら分からなくはないのだが、この場には神剣以上に守らなければならないものなど無いだろうに。


 「……所有権を放棄、または譲渡する方法は無いのか?」

 『神剣はマスターの死後、再びこの空間に転送されるように設定されています。その時まで譲渡も放棄も出来ません。放置する事は可能ですが、一定以上の距離が開くと自動で手元に《転送》されます』


 もはや装備解除不可の呪いのアイテムと相違が無かった。


 「せめて〔アイテムボックス〕に仕舞えたなら……」

 『神剣は装備状態でも鞘の効果により姿を消す事は可能です。その際同時に質量なども消すことが可能であるため、そこには〔何もない〕ように偽装する事が出来ます』

 「……とりあえずやってみて」


 カイセの指示で、腰の神剣が姿を消した。

 重さも無く、触れようとしてもそこには何もなく、服の感触が伝わってくるだけ。

 神剣の存在を知らなければ、持ち主ですらそこには何も無いと信じてしまうだろう。


 「……単純に居なくなった訳じゃないのよな?」

 『一時的に質量のみを戻しました。ご確認ください』

   

 確かに重さが戻って来た。

 触れてみるとそこには確かに見えない何かがある。

 透明なだけで、そこには確かに神剣があった。


 「……もう一回消えて。指示を出すまで絶対に出てこないで」

 『了解しました。新たなるマスター』


 再び感覚が消える。

 正直ずっとこのままにしておけば実害は無さそうだ。

 この〔神剣の声〕は消えてくれ無さそうだが。


 『再度問います。新たなるマスターのお名前をお教えください。お教え頂けない場合、今後は仮称として〔ああああ〕で登録させて頂きます』


 それはとてもウザい。

 一々〔ああああ〕と呼ばれるのはマジでウザい。

 カイセが子供時代に命名した勇者〔ああああ〕の気持ちが若干だか分かった気がする。

 当然ゲームの話である。


 「……はぁ、カイセだよ。名前はカイセ」

 『登録しました。よろしくお願いします、マスターカイセ』

 「マスター呼びは止めて」


 とてもめんどくさいものを、望んでも居ないのに手にしてしまった。

 ひとまずカイセのこの後の行き先は決まった。

 

 


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