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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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騒動と容疑者



 「よくまぁアレだけ食っててその程度の膨らみで済むな…」

 「んー?」

 「いやなんでもない」


 子龍ジャバの膨らんだお腹が、その割に小さい事に改めて疑問を覚えるカイセ。

 エルフの国での夕食をたらふく遠慮なく平らげたジャバは、満腹状態で宿泊部屋の床に転がる。

 しかしその割に、食べた量とお腹の大きさが明らかにそぐわない不可思議。

 初めての光景とというわけでもないのだが、見る度に疑問になる胃袋収納。


 「さて…とりあえず明日はもう一度ミコに会って報告会で…後はどうするか?」


 そして夜更け。

 就寝前にベットに寝そべりながら明日の予定を考える。

 今決まっているのは、再び巫女のもとに赴いての報告会。

 互いに伝手を使ってあの神剣について調べてからの情報交換の約束。

 もう少し日を空けた方が集まる情報も多くなるとは思ったが、比較的自由なカイセと違って巫女は立派な役職持ち。

 他のお仕事の都合もあるので仕方ない。

 ただ…それで実際にまた会うにしても、カイセ側は得たものは大してない。

 それでも約束なのでひとまず明日また再会する。


 しかしその後の予定は未定。

 そもそもここに来たのは神剣の一件について確かめる為。

 二振りの神剣の真偽の証明を一番に目的にして来たが、それはもう判別が済んでいる。

 結論だけ言えば神剣はどちらも本物。

 どちらかが偽物だったり、どちらかが盗み出したようなこともなく、懸念された問題は起きなかった。

 勿論それ自体が更なる問題を生んではいるのだが、それはそれとしてカイセがここに来た目的は既に済んでいるのだ。


 「でも立場的には王子の一行だからなぁ…」


 なんなら用事が済んだなら帰ってしまっても構わない。

 だが立場上は王子の一行の一員、帰宅予定も王子に合わせなければならない。

 つまり王子の用事が終わるまではこの国に滞在することになる。


 「これ、自然に護衛みたいな立場にされてるか?王子様の」


 そして思うのは王様の思惑。

 カイセは実績と実力は別としても、ステータス的には最強格の護衛になることは間違いない。

 どれだけ戦力を備えても、遠出の旅路に危険は付き物な世の中で、それをこれ幸いとカイセを王子に帯同させたことで、必然的に王子の生存率が上がる。

 自身の身元を秘密にする為に目の前の危険を見逃すような人間でないと理解された上で、もしもの時は勝手に(・・・)王子を守る盾になる存在の帯同。

 食費云々を国持ちにしたとしてもお得過ぎる存在なカイセ。


 「偉い人って、対処だけでなく利も考えないといけないの大変だぁ…まぁせっかく来たんだし、空き時間で回れるところは見て回るか。せっかく珍しいとこに来てるんだし観光を…と、でも今日はもう寝るか」


 そうしてふわっとした方針を立てて、初日の夜に眠りについた。





 ――だがその夜。

 森の中心で起きた騒動に、森の外縁部に泊まるカイセらが気付くことはなかった。




 「カイセ殿。我々に御同行願います」

 

 そして朝。

 騒がしさと人の気配に起こされたカイセら。

 すると寝起き早々に、扉を勝手に開いて姿を表すのはエルフの案内人と、武装した屈強なエルフたち。


 「現在あなたには〔巫女様の殺害未遂〕と〔秘宝強奪〕の二つの容疑が掛けられています。お話をお聞きしたいのでどうか大人しくご同行ください」

 「殺害未遂?強奪?」


 彼らはとある事件における"容疑者"の確保に来た人々。

 それは昨晩に起きた事件。

 例の世界樹の領域にて起きた〔巫女の殺害未遂事件〕と〔秘宝の盗難事件〕。   

 これらの犯人探しの一環で、カイセにも白羽の矢が立った。


 「殺害ってミコ…巫女様はどうなったんですか?」

 「未遂ゆえ、幸い大事には至らなかった」

 「そうですか、良かった…えっと、それで容疑者?昨晩はここで寝てましたよ?」

 「ご身内以外に証明していただける方は?」

 「居ないですね…」

 「ではご同行を。容疑者のお一人(・・・)として詳しくお話をお聞かせください」  

 「…ジャバとフェニは?」

 「あくまでもお越し頂きたいのはカイセ殿だけです。ご同行は頂けませんので、ここに残すか、どなたかにお預けを」 

 「…王子かエルマに…王子付きの鑑定師に連絡をしてもらえませんか?」

 「鑑定師殿にお伝えするのは可能ですが、アルフレッド王子も容疑者のおひとりであり、既にご同行頂いていますので、そちらには連絡は取れません」

 「王子も容疑者…?」


 その一言で既に大事になっていると理解させられる。

 勿論事件自体は大きいものだが、他国の王族にも疑いが向けられている時点で事の重要度はハネあがる。

 一国内部での重要事件から、他国との外交も巻き込んだ大事件。

 事の成り行き次第では下手をすると交流の断絶や、それこそ戦争の可能性もゼロではない。

 

 「カイセさん!」

 「エルマ?」


 するとまだ声を掛ける前なのに、タイミング良く慌ててやって来たエルマ。

 

 「王子様の方は良いの?それに一人で…」

 「あちらには別の方が…王子が『カイセさんのもとへ』と。騎士も何名か連れてと」

 「あぁ、護衛付きか」


 どうやら王子の指示ですぐさまこちらに向かって来たらしい。

 しかし状況が疑心の中で、仮にも"特級鑑定師"の特別な立場につくエルマを一人で…というのもどうかとは思ったが、どうやら護衛の騎士はちゃんとついているようだ。


 「そっちで呼ばれてるのは王子だけ?」

 「はい。王子とカイセさんだけのようです」


 騒動の容疑者はエルフ側を除いた客人側では王子とカイセの二人のみ。

 この両者の共通点。

 それはあの領域の〔入場権限のランク〕辺りか。


 「…エルマ。ジャバとフェニを頼める?」

 「はい、勿論です」

 「二人とも、しばらくエルマと一緒に居てくれ」

 「はーい」「グルゥ」

 

 状況を理解しているのかいないのか、軽い返事を告げるジャバフェニ。

 こうして二人をエルマに預けて、カイセはエルフ御一行と共にこの部屋を後にするのだった。


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