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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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女神のブラック労働




 「――なんか来た時よりも増えてないか?」


 エルフの国の神の祠から、いつもの神様領域にやって来たカイセ。

 だがそこに待っていたのは書類の山。

 そして肝心のポカ女神は、この紙の山の何処かに埋もれているらしい。

 なので手当たり次第に山を見て回る最中だったのだが…時間が経つにつれてジワジワと山が増し増しになっているように見えた。


 「余所で処理の済んだものがこっちに送られてくるんです。そしてここからまた別の部署へ…ですがここが一番人員不足なせいで出ていく書類よりも送られ留まる分が多くなり、今この有様です」


 こちらを見ずに書類仕事をこなしつつ伝えてくる黒天使のクロ。

 彼女がしっかりと働いているからこそ、ここにある山はこの程度で済んでいる。


 「部下働かせて上司は何してんの?」

 「上司にしか処理できないアレコレを急ぎゆえに実質通常の五十倍(・・・)速で片付けて、そのまま反動で倒れました。赤どころか真っ黒です。その倒れた亡骸の上に新たな書類が降り積もって…今は完全に見失いました」

 「あ、ちゃんと働いてはいたんだな。なら仕方ないか」


 肝心の上司たる女神も、多忙ゆえの過労で埋もれていったのならばこればかりは仕方のないことだ。

 

 「まぁ…五十倍速ゆえに、指摘する間もなくいつのまにか完遂されてしまった間違い箇所の修正に余計に手間がかかったので、五十倍速の割に結果はまぁまぁ早くなったね程度でした。」

 「そのへんは相変わらずというべきか…あ、それっぽいとこ見つけた。これ足か?」


 そうこう言葉を交わしていると、掘っていた紙の山から手がかりらしきものが見えてきて…とうとう見つけたポカ女神の亡骸。

 正確には屍のように眠っているだけで勿論生きているのだが。


 「ちなみにこれって大事な書類?」

 「大事ではありますが、雑に扱ったところで破損するようなものでもないですね。見つけたならその山は崩しても構いませんよ」

 「そんじゃ…よっと!」


 許可も貰ったのでここからは多少雑に、ようやく見えた足を力任せに引っ張り紙の山から引き抜いた。


 「――すぴー…すぴー…」

 「起きないなぁ…」


 そして今、カイセの前には発掘され、適当な床の上に転がされたまま眠り続けるポカ女神の姿があった。


 「ちょっと待っててくださいね…んしょっと」


 すると発掘した女神の下に、仕事を中断して、ようやくこちらを向いて迫って来た。

 紙の山を飛び越えてやって来たクロ。

 そのまま女神の側にしゃがみ…耳元で何かをつぶやいた。


 「…■■■」

  

 カイセには聞き取れないその言葉。

 女神に何を聞かせたのかはわからないが…次の瞬間、変化は起きる。


 「はぅ!?ごめんなさい!!すぐにやりますからぁ!!――あれ?」


 大慌てで跳び起きるポカ女神。

 しかしその現実には、女神が危惧した何かは無かった。


 「…夢でしたか。良かった…ではおやすみなさ――」

 「二度寝しないでください。そろそろ起きる時間です」


 問題なかったと安堵して、そのまま二度寝に勤しもうとする女神に声をかけて阻止するクロ。


 「あれ?何故カイセさんがここに?私はてっきり…」


 そしてようやくこちらを認識した女神は徐々に認識をハッキリとさせてゆく。

 だがそこには先ほどの謎の言葉への警戒がまだ見える。


 「ちなみに何を言って起こしたの?」

 「下位の神にのみ通じる魔法の言葉です」


 囁きの内容は結局分からずじまいだが、知らないでいいことも世の中にはあるのでこれ以上は追及しないでおこう。


 「というか、そもそも神とか天使も過労で倒れるんだな」

 「人間に比べれば耐久値こそ天と地ほどの差がありますが、神様と言えども心は疲れるのです。規模こそ違いますが」

 「そもそも…何この仕事の山は?」 

 「ふぁ…これ全部あれですよ、ダンジョンの後始末(・・・・・・・・・)です」

 「この前のアレ?」

 「はい」


 そこまで女神たちを追い込んだ仕事の山。

 その内容は正にカイセも関わったダンジョン騒動の後始末によるもの。


 「どこぞの神が私的理由で関わったせいで、この世界の管理をする私にダンジョン関連部署だけでなく、もっと別の他のところにまで問題が広がってしまって…そのシワ寄せが事件現場のこの世界を監督する私達のもとへ一番多く雪崩れ込んだのです」


 例のダンジョン騒動は思わぬところにまで飛び火をして…この神々の領域でもそこそこな問題になっていた。

 そして問題が想定よりも大きくなった結果が、この書類の山としてポカ女神たちのもとへと跳ね返されてきたらしい。

 仮にも女神と言う存在が倒れるほどの仕事量。


 「増援呼べないの?」

 「私の地位の権限内だと、問答無用で呼び寄せられるのがこちらのお二人だけなんですよね…一応申請はしましたが、来たがる者が居ないと拒まれて…」

 「まぁどう考えても修羅場になるのが見えている仕事場に来たがる天使も居ませんよ。色々理由を付けてそっちを優先して…とは言え他の、もっと地位の高い神々が『お前行け』と言えば天使も従わねばなりませんが、その神々も自分たちが必要以上にこの騒動に巻き込まれるのを嫌って、結果この有様ですよ。あっちの方は今の時期はどうせ暇なくせに」


 クロとシロはポカ女神がその権限により優先権を持つ天使たち。

 ゆえに余所事よりもこちらへ強引に巻き込むことが出来る。

 だがそれ以外に天使を呼びたいのなら然るべき手順で申請を出して派遣してもらう必要がある。

 しかしその申請を出しているにも関わらず、ご覧のように誰も来ず。

 皆我が身大事にこの一件に、そしてこの修羅場の状況に関わりたくないということらしい。


 「それで…この山ってこのまま放置してていいの?」

 「良くはないですが、まぁ一向に手伝いを寄こさない管理部の怠慢を理由にすればそれなりに何とかなりますので、少しぐらい休憩していてもバチは当たりません。ふぅ」


 そう言って、一人でお仕事をしていたクロまでも休憩に入ってしまう。

 寝起きの女神、休憩のクロ、睡眠中のシロ。

 こうしてこの場で仕事する者が居なくなり、しばらく山は放置されより積もることになったのだった。


 「――と、いうわけで、お仕事なんかより来客の対応を優先するのは当然のことですから、どうぞこのまましばらく居座ってください」

 「サボる理由に使われるの嫌なんだけど…まぁいいや。じゃあ本題に入って良いか?」

 「はいどうぞー。ずずず」


 いつの間にか用意されたお茶をすすりながら、カイセをサボりの理由にするポカ女神。

 だが彼女はまだ気付かない。

 カイセがここに来た理由、別の面倒を持ち込んでいることに。

 

 「じゃあ早速だが…二本目の神剣(・・・・・・)について、あくまでもそっちが話せる範囲でいいから知りたいんだが」

 「ずずず…ん?はい?神剣がどうしました?もしかして壊したから二本目が欲しいとかいうお話ですか?」

 「いや、あれは今も元気に腰にくっついてるしむしろ手放せるならそうしたいけど…そうじゃなくて、あれとはまた別の、エルフの国にあった神剣について知りたいんだよ」

 「エルフの国の…神剣?なんですかそれ(・・・・・・・)は?」

 「…え?まじで知らないの?もしかして」


 しかしカイセの目論見はハズレ、話せる話せない以前にポカ女神は、そもそもその存在を知らない様子だった。

  


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