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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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世界樹の祠



 テクテクテクテク――


 小さな歩幅で先頭を歩く小人。

 だがその速度は、小さな歩幅に似つかわしくないほど一歩が大きい。

 いや確かに、小さな一歩でテクテク歩いているのだが…足の長さからくる一歩の距離と、実際に進む一歩の距離が全くかみ合っていない。

 小人の小さな一歩で、何故か人間の一歩と同距離。


 「…何か目が痛くなってくるな」

 「普段の一歩は一歩ですが、先導する際などには後ろを歩く人々の歩幅にあった移動を行うのです。原理は私も知りません」


 ミコの解説が入るのだが、原理は彼女も分からない様子。

 達人の歩法である〔縮地〕でも繰り返しているのかと言うほどに、見た目と実際のギャップが奇妙。

 そんな小人を先頭に、ジャバとその頭の上にのあるフェニが付いて行き、更にその後ろをカイセとミコが付いて行く。

 お茶会の後に小人に導かれる一行。

 そして向かうのはエルフにとっては神剣以上に大事な〔祠〕。

 

 「――着きました。こちらが〔世界樹の祠〕です」


 その小人の導きで辿り着いたのは小さな祠。

 シンプルで質素な、小箱のような神棚。

 神棚とは言ったが、実際にそこに奉られるのはエルフの信奉する世界樹。

 目の前にあるのは〔世界樹の祠〕。


 「世界樹を奉る場所のわりに簡素で小さい気もするけど…」

 「この祠は世界樹様から授かった木材(おからだ)にて作られていますから、大きくすれば大きくするほど世界樹様の身を削ることになりますから」


 エルフにとっての神様である世界樹。

 その祠は世界樹の木材を使用して出来ている。

 大事な世界樹の身を削って生み出す奉場を大きくすればするほどに大事な世界樹の身を削ることになるのだから大きくは出来ない。

 ゆえにこのサイズは彼らの信の薄さを示すものではなく、むしろ大事にしているからこその配慮の証である。


 「…じゃあ、早速失礼して…あ、参拝の礼儀とかは?」

 「ご自由にどうぞ。余程無礼な振る舞いでもない限りは客人に我々の作法を強要は致しません」

 「それじゃあお言葉に甘えて――パンパン」


 そしてカイセはその祠を前に、二礼二拍手一礼で礼を示す。

 本来は神社の作法、神様に対する礼を示すもの。

 世界樹の祠の参拝には合わないやり方かもしれないが…祈るかこれしか向き合う方を知らないので大目に見て貰おう。


 

 「あ、光りましたね」

 「え?」


 すると何故か祠が微かな光を帯びている。

 僅か数秒程度の時間だが、礼を終えたカイセの目にはその光を纏う祠が映し出された。

 そして…次の瞬間、光が収まると祠の扉が一人でに開いた。


 「…葉っぱ?」

 「〔世界樹の葉〕ですね。大当たりだと思います」

 「んん?」


 開いた扉の向こう側からひらひらとカイセの手元に舞い込んだ一枚の葉っぱ。

 その葉を〔世界樹の葉〕と呼んで、当たりだと小さく拍手するミコ。


 「世界樹の祠はこの国の中に何か所も存在しますが、唯一この場の祠だけは、その中で一番重要なこの祠でのみ正しく敬意を示した参拝者に対し無作為に一つアイテムが授けられるのです。誰が何を授かるかは実際に出てみないとわからないのですが、今回は大当たりですね」

 「何そのガチャっぽいシステム?」

 「がちゃ?」


 参拝することで引けるガチャのような仕組み。

 悪意や邪念があれば弾かれるようだが、カイセの敬意を認めたらしいその祠はアイテムを授けた。


 「ジャバもやるー!何かください!パン!パン!」

 

 すると何かを貰えると知ったジャバが、カイセの真似をして手を思いっ切り叩いて見せる。 

 ただし二礼二拍手一礼を知らないので、ただ二度叩いただけ。

 だが祠は再び光を帯びていった。


 「…ジャバ、普通に邪念というか物欲だったと思うんだが」

 「この仕組み、子供には割と甘いので害意さえなければ細かいことは言わないようなんです」


 年齢的には長寿なのだが、邪龍絡みの影響もあるジャバの精神はまだ子供。

 見た目や体より中身を子供と判定してのお恵みのようだ。


 「木の実?あむ…あまーい!」


 そしてジャバに授けられたのは甘い木の実。

 特に世界樹由来の実ではないようなのだが、すぐに口に入れ食べてしまうジャバ。


 「小当たりですね。私達の間では祝いの席でだけ食べられる果実です」

 「今食っちゃったけどいいの?」

 「あくまでも数が少ないから場を限らせているだけなので、授かったものをいつ使うかは当人の自由ですし」


 特に特別なことのない、単純に希少な果実だったらしい。


 「グルゥ」


 すると三番手で、いつの間にか祈っていたらしい不死鳥フェニの元にも何かが授けられた。

 だがそれはちゃんと確かめる前にパクリと、フェニも一口で食べてしまった。


 「…ちなみに、世界樹の葉って確か…」

 「生きてさえいればどんな傷でも一度だけ癒すアイテムですね。一人に付き生涯に一度だけしか使えませんが」

 「まぁ二度目どころか一度目も入手できないのが普通なアイテムだろうけど…」

 

 二人に授けられたのは食べ物。

 だがカイセの〔世界樹の葉〕は、まぁ食べられるものでもあるが本命は当然〔傷を癒すアイテム〕としての力。

 それはどんな傷でも癒す最上級の代物。

 ポーションに加工せずともその葉っぱ一枚で効力を発揮する結構ヤバイアイテム。

 エルフ的にも大当たりで、世間的には超大当たり。


 「というか…葉っぱって、外で待ってれば普通に落ちてくるんじゃ…」

 「自然に落ちた枝葉は力を無くしたものですので、こういった効力は何もありませんよ。なのでこの国にとっても羨ましい当たりですね」


 エルフ達でも簡単に手に入るものではない代物。

 となればこんなものをただの客人が持ち帰っていいのかと不安になるところ。


 「問題ありませんよ。世界樹様が授けた贈り物ですから。運が良いですね!」

 

 というわけでせっかくの頂き物なので、有難く仕舞わせて貰うカイセ。

 とは言え手持ちのポーション同様に、使う機会なく持ち腐れになってくれるに越したことのないアイテムではある。


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