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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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小人のお茶会



 「――これ食べていいのー?」

 「だめですよー。この子達は小人さんです。食べ物ではありませんよ」

 「わかったー」


 テクテクと歩くちっこい存在の歩みを子龍のジャバはじっと見つめる。

 神剣の確認を終えた二人は、ひとまず話にあったお茶会を始めようとする。

 すると…その準備に現れたのは〔小人〕たち。

 五体程の小さな、二頭身のマスコット人形のような存在たちが自分よりも大きな荷物を持ち上げ掲げながらテーブルのもとへとやってくる。


 「ゴーレム?」

 「似たようなものですね。世界樹の眷属のような、使い魔のような…まぁそんな手助けしてくれる存在ですね。世界樹の枝葉で作られてるそうです」

 「微妙にふわっとしてるなぁ…」


 何となくハッキリとしないその説明。

 とは言えこの小人が生命体でなく作り物で、世界樹由来の存在であるのは理解した。

 そんな小人たちは世界樹の、そして巫女のお世話を任されているようで今もこうして巫女の意志に則りお茶会のセッティングをしていく。

 とは言えその小さな体でどうやってテーブルに昇るのかと思えば…手空きの小人が荷物を持った小人を持ち上げポイと投げた。 

 そして…ピタっとしっかりとテーブルの上に着地する。

 頭の上に抱え上げたお皿も微動だにさせない驚きの静穏行動。


 「…整いましたね。ではどうぞお食べください」

 「いただきまーす!」

 「グル」


 そうして小人により揃えられたお茶とお菓子。

 主催者の許しを得た途端に、すぐさま食事を楽しみだすジャバとフェニ。

 テーブルの上では給仕役の小人が、どうやって持っているのか分からない自分より大きなティーポットを掲げてミコのカップに注いでいる。


 「…ん?あっちは…お茶会とは別の組か?」


 するとお茶会に構う小人たちとは別に、新たに現れて小川の方に向かっていく小人グループが視界に入る。

 どうやらこの小人たち、結構数が居る様だ。


 「小人たちはこの空間の管理維持のお仕事も担ってくれています。普段は私と共同で行うのですが、今はこうしてお客様を招いている最中なので小人さん達にお任せしています」


 こうして話している間も、そういう日課の時間なのか気づけばあっちこっちに小人の姿が見えてくる。

 あくまでもゴーレムのような存在で自我はないが、基本ミコ一人のこの空間では小人たちが同居人として静かな空間を賑やかす。


 「……というかアレ、本当に自我とか人格ないのか?」

 「ないはずなんですけど…楽しそうですね。ふふ」


 そして情緒もなくあっという間にお腹を満たしたジャバとフェニは、腹ごなしの如く小人たちと戯れる。

 追いかけっこしたりじゃれあったり背に乗せて飛んだり、ジャバたちだけでなく小人たちまで楽しそうに見える不思議なやり取り。


 「――ふぅ。では一息つきましたし、少しお話をしましょうか」


 そんなジャバ達を尻目に向き合うミコとカイセは改めて言葉を交わす。

 勿論話題は二振りの神剣について。


 「まずはそちらの神剣について、話せる範囲で構いませんのでお聞かせくださいますか?何処に眠っていてどう入手したものなのかを」

 「あー…こっちのは魔境の森の――」


 そしてまずはカイセの手にする神剣の語り。

 馴れ初めと言うべきか、手にしたその経緯を話せる範囲で言葉にする。




 「…なるほど、勇者により森の奥地に隠され安置されていたのですね」


 カイセの神剣が魔境の森の隠された領域に眠っていた事を知ったミコ。

 そしてそれが初代勇者による封であることも理解する。


 「…実は、私どもの神剣も、元は初代勇者によってもたらされたものなのです」


 すると今度はエルフの神剣の事情。

 ミコによればあの神剣もそもそもは初代勇者が持っていたものらしい。



 『――この剣を、ここで預かって貰えないか?』


 それは昔のお話。

 エルフの国を訪れた【初代勇者】は、その滞在と当時の巫女との対面の折りに自ら申し出た。

 彼の持つ神剣の譲渡と安置を、エルフの国側に打診した。 

 その神剣こそがあの中身の欠けたもう一振りの神剣。

 差し出して来たのが初代勇者本人であり、実際神剣と認識された代物なのだから誰も疑う余地もなかっただろう。



 「…そして初代勇者の願いの通り、私どもエルフは神剣をこの地、この領域にて今日まで保管し続けてきたのです」


 初代勇者が何を求めてこの地に神剣を預けたのかは不明。

 だがエルフ側としても神の作り出した剣を預かるのは光栄なこと。

 エルフの第一崇拝は世界樹だが、神様は神様でちゃんと敬ってはいる。

 勿論世界樹には劣るのだが、この国、森の中にもきちんと小さな(・・・)神殿はちゃんとあるらしい。 


 「ですが…まさかその神剣が、世界を救った英雄剣とはまた別の神剣だったのはビックリです」


 だがその神剣は、あくまでも世界を救った神剣とは別物。

 当然一振りしかないという前提で見れば、この神剣こそが世界を救った一振りだと思い込むのも当然。

 しかし実際に世界を救うために振るわれたのはカイセの持つ神剣。 

 それはポカ女神の保証するところであり、それぞれの神剣の持つ力を見比べても初代勇者の残す伝説に合致するのはどちらかわかりやすい。


 「ですがこちらの神剣も、初代勇者の持ち物だったのは事実です」

 「となると…初代勇者が神剣を二本も持っていたって話になるよなぁ…」


 そしてこの二振りの神剣のかつての所有者がどちらも初代勇者その人である事実。

 一振りしかない神剣を二振り所有した経歴が気になるところだが…神剣本人には二本持ちの記録はない。


 『当剣を手放した時点では、もう一振りの神剣は初代勇者のもとにはありませんでした』


 その二振りの所有経歴は、時期的に重なることは無い。

 手元の神剣が魔境の森に安置されるまでの間に初代勇者が二振り目の神剣を手にした記録はこの神剣のもとにはない。

 つまり一度、元々の神剣を手放した後の時代にどこから二振り目の神剣を手にした。

 そして最後はこのエルフの国に預けて手放した。


 「初代勇者は、なんでこの国に?」

 「どうなんでしょうかね?元々、初代勇者がこちらを訪れた記憶は三度ほどあるのですが、その最後の来国の際に神剣を預けてゆき、その後訪れることは無かったようです」

 「元々預ける為に来たのか、それともやって来た際に何かあって預けることにしたのか」

 「神剣や初代勇者に関しては口伝で語られてきたことばかりで、詳しい記録が残っているわけじゃないんです」


 何を目的にしエルフの国にやって来たのか、何があって神剣を預けるに至ったのか。

 詳細不明のその行動。

 カイセの神剣に関しては役目を終えた事と、世に騒動の種を残さぬ為、それでいてもしもの後世に継がせる為にあの空間に仕舞った。

 だが二振り目の神剣に関しては入手経緯から最後まで分からない。


 (…もともと有名人だから仕方ないけど、あっちこっちに痕跡あるなぁ…それも大きめの)


 初代勇者が密かに残したアレやコレとの遭遇率。

 嫌な縁を抱えてるもんだと、ちょっと溜息を付きたいカイセ。


 ――トントン。


 「…あの、この小人たち、本当に自我ないの?人の方に乗って『ドンマイ』って風にトントン軽く肩を叩いて来たんだけど?」

 「可愛いですよね。私が失敗した時にもよく慰めてくれます」


 まるで自我があるような、どころかこっちの思考を読み取ったような慰め行動を取る小人。

 これがただのゴーレムなのだとしたら異次元に高性能過ぎる。




 

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