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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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白い空間に待つ存在


 「――地面の上に小屋?それに地面に降りて…」


 エルフの国の中心。

 〔世界樹〕の傍へとやって来たカイセ一行。

 そこまでの道のりは空中回廊を辿り地面から離れたまま歩みやって来た。

 だが…この世界樹を囲む道は何処も世界樹そのものには繋がっておらず。

 今カイセ達は階段を下り…そのまま大地を踏みしめた。


 「この領域は世界樹のもとで《聖域》と化した大地であり、神聖な土地ですので土の精霊様も潜むことはないのです」


 元々エルフの道が地面に無いのは、精霊の潜む大地を足蹴にする事をエルフ達が嫌ってのこと。

 だが世界樹の影響が強いこの周囲の土地は精霊が潜むことはない為、大地に足を付けても問題はないというお話のようだ。

 こうして数時間ぶりにしっかりとした大地の感触を取り戻したカイセ。


 「それで、この小屋は?」


 そして目の前には小さな白い小屋。

 人が住む家としては小さすぎて、かといって物置小屋に案内される理由もない。


 「扉を開ければ分かりますが、ここが入口(・・)なのです」


 案内役のエルフはそう言って小屋の扉を開いた。

 するとそこにあったのは停止状態の《魔法陣》。


 「これは…《転移陣》?」

 「はいそうです」


 小さな小屋の中身はその一つだけ。

 物は何もなく、床や壁や天井にギッシリと刻まれた魔法陣の紋様。

 その主題は《転移魔法》。

 

 「文字通りここは入口。物理的に隔絶された空間へ、これから向こう場所に跳ぶ(・・)のです」 


 最終的な目的地には、物理的な手段では行けないようになっている。

 そこに辿り着くにはこの《転移陣》を使った《転移》でしか辿り着けない。


 「…周りのは守りの為の魔法陣か」

 「よくお分かりで。見ての通り外観は普通の小屋ですが、高威力の魔法にも無傷で耐えるほど強固な強度を持っています」


 床に刻まれた陣は《転移》。

 だが壁や天井に刻まれたのは、また用途が別のもの。

 それらはこの小屋自体を守る盾。

 何せこの転移の向こう側は、物理的に辿り着く手段がない場所。

 入口出口の転移陣を壊されてしまえば閉じ込まれてどうしようもなくなる。

 ゆえにここは並大抵でない程厳重な守りが刻まれている。


 (で…他にも認証というか、賊が紛れ込まない対策もバッチリか。ウチで使ってるのより個人認証のセキュリティは高そうだなこれ)


 そして肝心の転移においても、しっかりと不審者を紛れ込まさないセキュリティが仕込んである様子。

 詳しく紐解いたわけではないのでまだ全容は把握出来ないが、理解出来る部分だけでもカイセが自宅で使用している自前の転移陣より完成度は高い。


 「では中へどうぞ」

 「あれ?貴方は…」

 「私の案内はここまでです。後は転移で飛ぶだけなので」


 すると、どうやら案内人の役目はここまでのようで転移先には付いてこない為扉の外で足を止めた。

 この小屋に入るのはカイセらだけ。


 「そういえば、この二人は連れて大丈夫なんですか?転移の認証的に」

 「既に許可は通っております。そのままお跳び下されば、お二方も一緒に跳ぶことになります」


 一応認証の問題で、ジャバたちがどうなるか疑問ではあったが、既にちゃんと対応されていた。


 「ではその陣の中央にお立ちください」

 「ここでいい?」

 「はい」


 そうしてカイセは言われるまま、陣の中心・中央に立つ。

 勿論ジャバフェニを乗せたまま。


 「では扉を閉めますね。大体閉めてから十秒後に起動しますので動かないようにお願いします。あと一瞬真っ暗なのでお気をつけて」

 「あ、はい」

 「それでは…いってらっしゃいませ」


 パタンと、カイセらだけの部屋の扉が閉められる。

 窓も無い為、部屋が暗闇に包まれる。


 「あー、光り出した!」


 すると宣言通り、大体十秒後に光り出した床の魔法陣。

 紋様に沿って光が広がり、全容が綺麗に映し出される。 


 「あ…来るか」


 そして陣に魔力が行き渡ると完全起動。

 次の瞬間…カイセ一行は小屋の中から姿を消した。

 


  



 「――で、ここがゴール?」

 「着いたー?」

 「グル」


 小屋の中から一転、広い空間に立つ。

 大理石のように綺麗な白い床の上。

 周囲を見渡すと綺麗な草花が植えられており、透き通った水が流れる小川もある。

 何やら〔庭園〕のような様相のこの場所。

 そしてこの空間の壁も天井も、床と同じ綺麗な石材で整えられた密閉空間。

 窓はなく日の光は入らず、どこにも照明器具は無し。

 なのに昼間のように明るい。


 (この雰囲気…空気感…見た目は違うけど感覚はあの場所(・・・・)に似てる?)


 そしてカイセが気付くのは、この空間の空気や雰囲気の既視感。

 全く同じということは無いのだが、ここは〔女神のいる場所〕に似ている。

 見た目は全く違っても、捉える感覚がそう思わせる。


 「どうぞこちらへ」

 「え?」

 

 するとカイセらの耳に届く誰かの声。

 全く気配も音もなく、いきなり聞こえてきたのは一度視線を向けたはずの場所。

 改めて振り返ると、そこには先ほどは居なかったはずの人の姿が現れていた。


 「…世界樹の、巫女?」

 「はい」

 

 カイセのつぶやきに簡素な肯定の返事。

 目の前の存在は"世界樹の巫女"。

 このエルフの国でも最高位の存在。

 世界樹に仕え身を捧げる巫女。

 

 「私は世界樹様の巫女のお役目を預かる者です。カイセ様、ジャバ様、フェニ様。ようこそお越しくださいました。皆様の来訪を歓迎いたします」


 

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