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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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エルフの国



 「――ここがエルフの国か…」


 入国審査を終え越えた門。

 その先に待ってたのは目的地であるエルフの国の内側の風景。


 (ある種イメージ通りの風景って感じがするなぁ)


 するとそこに待っていたのは前情報と、そもそもエルフに持つイメージ通りの在り方。

 国の中にも多くの木々が生え、自然に合わせて人々が暮らしている空間。


 (いくつもの巨木にツリーハウス。木々を結ぶ空中橋のネットワーク。高いとこ苦手な人はキツそうだなぁ。そんな人はそもそも来ないだろうけど)


 この国の建物の大半は木の上に建ち、同時に巨木同士を結ぶ橋のネットワークが蜘蛛の巣の如く張り巡らされている。

 地面の上に建つ建物も高床式のように一階分の隙間を地面との間に空けて建つ。

 ただし…それぞれの建物自体にはさほど差を感じない。

 同じ規格で複製されたような、見た目同じなデザインの建物たち。


 「私達は家の大きさや広さや、後はデザインなどを重視して家を選ぶだろうが、エルフにとってそれらは特に気にしない要素だ。彼らが家選びで重視するのは家を支えてくれる樹木の年齢と質だ。より古く立派な樹木に建つ家ほど彼らにとっては価値が高い。後は世界樹の近さもかな?」

 「その通りですね」


 そんな王子の解説に相槌を打つエルフの案内人。

 シンプルなデザインの建物。

 エルフ族は家の見た目にこだわりはなく、基本的な生活スペースさえ確保できるならそれ以上の広さも求めない。

 ただ、彼らが新たな家選びでこだわりを持つのは土台になる〔樹木の立派さ〕と〔国の中心の世界樹への近さ〕だけのようだ。


 「だからこの辺りの樹木に建つ家は〔世界樹への近さ〕という要素においては一番遠いから、どちらかと言えばお客さん用に貸し出す家だね。そっちの、地面に建つ建物とかは高さが苦手な人用でもある。まぁここに来る時点でそんな人は来れないと思うけど」


 ゆえにこの門の近くに、今見ている周囲のツリーハウスは主に来国者向けの宿代わり。

 後は門の警備達の詰め所や休憩所など、通常の居住区としては使われていない地区。

 特に地面の上に建つ建物などは決してエルフは住まいにはしない。

 

 「という訳でエルフの国の生活空間は上だ」

 「皆さま、あちらの階段をお上りください」


 そうして王子らが示したのは、一本の木に巻き付くように取りついた螺旋階段。

 地上三階ぐらいの高さがエルフの国の生活領域であり、その高さに上がる為の道。


 「ちなみそちらは高いところは大丈夫かい?」

 「問題ないですね」

 「へいきー」

 「グゥ」


 なお当然ながらカイセもジャバもフェニも高い所は平気。

 ジャバフェニに関しては特に、種族的に飛べる存在なので高さが苦手だったら大問題だろう。


 「それじゃあ行こう。代表者として僕が先頭を歩くよ」

 「いえ、先頭は私がご案内しますので、私の後ろを付いてきてください」

 「む…そうか、仕方ない」


 そして一行は王子を先頭にして歩み出そうとしたが案内人に咎められ二番手に甘んじる。

 好奇心ゆえに誰よりも先頭を歩いて行こうとした王子。

 

 「なお我々の案内する場所以外には行かないようにしてください。はぐれたりすると安全の保障は致しかねますので」


 若干物騒な注意だが、このエルフの国の中でも、精霊たちはフリーパスで行き交う。

 彼らは無暗に危害を加えにくる存在でもないのだが、気まぐれがいつ起こるかも分からない。

 とは言え生活共同体とも言えるエルフの前では配慮と節度を持つらしいので、言うなれば案内人は精霊に対する盾とも言える。


 「ではこちらへ。階段はあまり広さがないので二列に並び直して昇ってください」


 そうして一行は歩み出し、指示通り二列で螺旋階段を昇っていく。

 

 (…見られてるなぁ…人に)


 階段を昇る一同に、姿の見えない遠くから刺さる人の視線。

 門での検査を終えた後にも、昇る階段での見分。

 

 「申し訳ありませんがもうしばし我慢を。登り切れば落ち着きますの」


 ただその視線も、昇るほどに数を減らしていき、登り切った頃には言葉通り綺麗に消え去った。

 

 「この階段はいわゆる最後の試しの儀なのです。詳細は省きますが、皆さま無事に辿り着けたということで…改めまして、ようこそ我々の国へ」


 そしてそこで改めて、歓迎の意志を示される一同。

 門を越えて既に入国済みだが、エルフの国の本題はこの上の空間に辿り着いてからが本番。


 「まずは皆様の拠点へとご案内します。左の橋を進みます」

 

 そのまま一行はお客さん用の居住区へと案内される。

 世界樹からは最も遠い区画に建つ巨木に付く家屋。

 王子一行は三組に分けられ、それと別にカイセ達は別組としてそれぞれ用意された家屋へと踏み入った。


 「――特に不便は無さそうだな。スライム(・・・・)が住んでること以外は…」

 「ぷにぷにしてるー」

 「グルゥ」


 家の中は特におかしな部分も無く、三人暮らしにも十分な住処。

 ただ…気になるのはそこに住む先住民。

 半透明の【スライム】の存在。

 魔境の森に居るヤバイのではなく普通のスライム。

 雑食で主食は水だが差しだせば何でも食べれるその習性で、エルフの国でごみ箱(・・・)の役割を担っている。


 「おやつ?たべていい?」

 「食べちゃだめだからな。ゼリーじゃないからな?」


 その半透明のプルプルにゼリーを重ねたのかそんな事を言い出すジャバ。

 いや…ジャバからすれば魔物な時点で大体食用可な存在なので、本当にスライムをおやつ代わりにしている可能性もある。


 「わー」

 「グルー」


 そしておやつ扱いをやめた後は、フェニと共にボール扱いで遊び始めたジャバフェニ。

 そのまま少しまったりしていると…扉をノックする音が聞こえてくる。


 「――カイセ様。お迎えにあがりました」


 エルフの国側からのお迎え。

 本題の異なる王子一行とは別の行動の始まりの知らせ。


 「ではカイセ様を世界樹の御許へ(・・・・・・・)ご案内いたします」


 

 

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