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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第七章:エルフの国のもう一振りの神剣
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エルフの国への旅路



 「――あ、倒したー」

 「みたいだな」


 エルフの国へと向かう道中。

 当然ながらその道行きには、相応のリスクも存在する。

 馬車に国の紋章を掲げている以上、盗賊などと言った人間側の犯罪者の襲撃は余程の事でもない限りはない。

 勿論ゼロとは言わないが、わざわざ精鋭騎士が張り付いていると宣伝している相手を略奪の標的にするほど犯罪者も考え無しではない。

 ゆえに道中の困難の殆どは、自然や魔物の脅威によるもの。


 (流石騎士、手際が良い)


 そして出立初日の午後。

 早速道中に魔物の襲撃。

 本来、普通の馬車ならばまだ安全圏を走るだけだっただろう旅路も、快速馬車ゆえに早々に安全圏を抜け、今の辺りは何処で魔物と遭遇してもおかしくはない地帯。


 「――発進しますね」

 「あ、はい」


 すると御者さんの発進の知らせ。

 襲撃魔物の討伐も済み、一行はまた馬車を走らせる。

 魔物たちは護衛の騎士たちによりしっかりと倒された。

 王子の護衛を任されるほど、しっかりと実力のある騎士一同。

 襲撃からあっという間に、複数体の魔物を撃破し、後始末も終え馬車は出発する。


 (というか…三従士ってこれ以上なんだよな、当然だけど)


 そんな騎士たちの戦いを馬車の中から軽く見守っていたカイセ。

 位置関係的にも全部が見えた訳ではないが、ステータスも技術も含めて騎士たちの強さは確かめられた。

 そして…そんな騎士たち、国のエリートな"三従士"を比べる。


 (正直第一印象がアレだったせいで、全然そんな風には見えないんだよなぁ…やっぱ出会い方って大事だな)

 

 優秀な騎士たちと比較して、"三従士"の二つ名を持つ彼らが全てとは言わないが多くの部分でそれよりも優れている人材なのは理解は出来るし、ステータスを比べるだけでもわかりやすい。

 そもそも魔境の森へと出向けるだけでも相当なのだ。

 なのだが…最初の出会い、魔境の森で"勇者"に振り回された彼らを見ているカイセとしては、何となく威厳に欠けるというか、第一印象の大切さをしみじみと感じる。


 「カイセー。また遊んでていい?」

 「ん?あぁ大丈夫だな」


 一応もしもに備えて戦える準備はしていたカイセ達。

 勿論この集団には取り越し苦労なのは分かっていたが何事も備えは大事。

 だがそれも終わり、馬車が再び進みだしたので、ジャバたちはまた馬車の中でじゃれ合う。


 (ほんと仲良いなぁジャバフェニ。さてと…俺も続き読むか)


 そんな子龍と不死鳥を余所に、カイセはカイセで本を読みだす。

 転移護衛としてエルマらに帯同して居た時は仕事だったのでちゃんと常に周囲を意識していたが、今回は護衛対象も居ないし、気を配る相手もいない。

 なのでまったりと、昨日買った何冊かの本の内の一冊を読みながら時間を過ごしていく。

 数日掛かりの旅路で、どう考えても暇潰しは不可欠なのは分かりきっていたゆえの準備。


 「やー」

 「クル」

 「あ、馬車壊すなよー」


 そんな道中まったり過ごしつつ、その後は何事もなく初日のゴール、中継地点となる本日の宿の町に辿り着いた。




 「――流石に王都の宿に比べると質素だけど、むしろこっちのほうが落ち着く感じがするのは染みついた貧乏性ゆえか…」


 そして本日の宿。

 手配してくれた一室に宿泊するカイセら。

 ちなみに王子やその側近や使用人、エルマも含めた彼らはこの町の一番偉い人の屋敷にお泊り。

 この宿は騎士や御者たちに用意された一般宿でやはりそこは別々。

 とは言え護衛は必要で、宿で休める小隊もあれば屋敷で護衛のお仕事の最中の小隊もある。

 彼らは予め予定に合わせたシフトを当然組んであり、町に付いたからとすぐ安堵は出来ず、まぁ仕事とは言え大変そうだなと外野でその様子を眺めていた。

 宿に着いて考え無しにゆっくりと休めるのは外様のカイセらと仕事を終えてあとは明日に備えるだけの御者くらいだ。


 


 「――私らは飲みに行くが、カイセさんもどうだい?」


 なおその夜、御者さん達に夕食かつ飲みの誘いを受けたカイセ。

 この世界では友人関係も乏しく、その手の機会も虚無だったので割と新鮮な気持ちになった。

 ただ…お誘いは申し訳ないが断らせてもらった。


 「すいません。あ、よければこれで俺の分まで飲んできてください」


 だがせっかくのお誘いをただ断るだけなのも微妙だったので、銀貨を数枚提供する。

 例の如く女神の死蔵していた埋蔵金なのでカイセのお布施と言っていいのか微妙なところだが。


 「いいんかい?じゃあ遠慮なく。それじゃあまた明日」

 「はい、お疲れ様です」


 そうして見送ったカイセ。

 ちなみに断った理由はいくつかあるが、その中でも特に致命的なものは飲んでも酔えないという点だろうか。

 というのもこの転生後の体、意図して付けて貰った《状態異常耐性(全)》だが、予期せずレベル10となったせいでアルコールすら効かなくなっている。

 つまりどれだけ飲んでも欠片も(・・・)酔えない。


 ちなみにその事実に気付いた時…試しに飲んだお酒をジャバにも飲ませて見たりもした。


 『……美味しくない。ペペ』

 

 龍の里には普通にお酒もあったので、龍に合わないわけではないが少なくともジャバには合わないようだった。

 普段から野菜より肉、辛い苦いよりも甘いを好むジャバ。

 子供や大人の好みの差は、その辺りは人も龍も変わらないのかもしれない。

 勿論ただのジャバ個人の好みなだけの可能性もあるが。


 (不死鳥はどうなんだろうなぁ…と思いつつ、火の鳥とアルコールは何となく掛け合わせる気になれないし、謎は謎のままにしておこう)




 「すー…すー…」

 「くー…」  

 「こいつら…」


 ちなみにその夜、部屋に一つしかないベットは気づけばジャバフェニに占領されていた。

 少し動かせば何とかスペースも確保できそうだが、仕方なくカイセは手持ちの寝袋を取り出し、床の上で眠ることになったのだった。

 


 

 

 ――そして翌朝。

 旅路の二日目。

 その日に問題は起こる。


 「ちょっと、苦戦してそうですね」


 二日目の道行きで起きた問題。

 いくつかの馬車に起きた破損。

 初日同様に魔物と遭遇し、初日同様に騎士たちが仕留めた。

 だがその際にいくつかの馬車が車輪を破損させてしまったのだった。


 「魔物の中には知能が高いものも居ますからね。標的を逃がさぬように足を奪ってきたようです」


 飲みには参加しなかったが、お金を渡したことで昨日よりも饒舌に接してくるようになった御者さん。

 彼によればどうも先頭の数台が遠距離で足を潰されたのが戦いの狼煙であったようだ。

 逃げの手段を潰してから押そう。

 確かに賢い手とも思えるが、戦力差を鑑みればその不意打ちで相手の戦力を減らすのが先決だったのでは?とも思わなくはない。

 結果として馬車に損害を被ったが、魔物自体は騎士たちの敵ではなく早々に仕留められ、人的被害はゼロの様子。

 今はその修復の為に全体が停車中。


 「…これはもしかしたらこの馬車の出番かもしれませんね」


 その進捗を見てそう口にする御者さん。

 そしてその推測は正しく訪れ、予備の馬車の出番がやって来てしまうのだった。


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