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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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六章エピローグ/王都で出会うは定番種族



 「――お待ちしていました。カイセ様」

 「なんというか…俺担当になってません?」


 王都に辿り着いたアーロン家の馬車一行。

 彼らは予定通り王都の検問、門番たちの検査を受けることになった。

 すると…そこで待っていたのは、普段はここにはいないはずの人物。

 かつて勇者と共に魔境の森に足を運んだ"三従士"の一人。

 以前にも、ダンジョン絡みの一件の際に、王様の命でカイトを迎えに来たその人物が、既にその場に待っていた。


 「えぇまぁ…私達三人は様々な仕事を仰せつかるのですが、得意分野の都合か私は王都に残る事が多く、結果お会いする機会も多くなっているかと」


 再びのカイセ案件の出迎え役。

 今回は鑑定師エルマの先触れの手紙を受け、事情を知る対応役としてこの場に待っていた。

 鑑定の効かない兄妹に、子龍に不死鳥と検問場の騒ぎの種。


 「事情のある皆様方は私の方で対応させて頂きます。ただ、他の方々は普通の検査をお受けください」

 「分かりました。皆さんはそちらに――」


 この一行の責任者であるエルマが護衛や使用人たちに指示を出す。

 問題の無い人々は普通の検査を受け、こちらの特別枠には最小限、カイセにエルマ、ボイスにベル、ジャバにフェニが受け入れられる。

 普通は違和感ある案内だが、エルマが居るおかげで事情を知らぬ一般兵にはあくまでも"特級鑑定師"の出迎えと特別対応として見えるだろう。

 その後いわゆるVIP用の特別室に通され、一応の鑑定は受ける。


 「…本当に、何も出ませんね。高位の鑑定持ちのお二方すら鑑定出来る代物なのに…」


 その部屋の中で、鑑定機を用いた鑑定すら弾いてしまうボイスとベルの結果に、事前に知らされていたとはいえ驚きを見せる。

 

 「そして子龍…だけでなく、不死鳥。あの森にはこんな希少な存在まで居るのですね…」


 ついで面識もあるジャバ。

 以前にボコられた(・・・・・)記憶が蘇ったのかちょっと身は引け気味。

 そして…初めましての不死鳥ジャバ。

 魔境の森視点で言えば外からやって来た外来種なのだが、どうやらあの森に元々隠れ棲んでいたものだと勘違いしている様子。


 ちなみにその二人はと言えば暇な様子で、モコモコ服で床上をコロコロと転がるジャバに、そのモコモコ服を嘴で啄んで遊んでいるフェニ。


 「あの…もしかしてあのモコモコは、ダークシープの?」

 「ですね」

 「王族の祝いにも献上される羊毛が…あんなに…」


 ジャバのモコモコ服に使った羊毛は、世間で言えば超高級羊毛。

 元々は黒い毛なのだが、毛を刈り本体から離れると純白になる不思議な〔ダークシープ〕の羊毛。

 魔境の森以外にも住んでいる魔物だが、魔境の森に住めるレベルの魔物というだけでも当然脅威度の高さはお墨付きの希少品。

 それを使った服を着たジャバは…価値など関係無く好きなように床をコロコロ転がり、フェニは啄んでダメージを与えていく。

 その光景が価値を知る者には衝撃的な雑な扱い。


 「……と、あまりのことに仕事を忘れるところでした。実は此方を身に付けていただきたく」


 そんな蛇足から本題に戻り、彼が出して来たのはサイズの異なる二つの〔首輪〕。


 「もしかして…従魔のですか?」

 「その通りです。こちらを付けていただければと…」


 それはジャバとフェニに用意されたもの。

 従魔の証である首輪、つまり野生でなく誰かの管理下にあるという証明。

 

 「ただこれは、それをデザイン的に模した普通の首輪(イミテーション)です。本来の拘束効果は付与されていません」


 〔従魔の首輪〕には従魔の暴走を抑えるための罰則機構が付与されている。

 だが目の前のそれにはなく、ただ見た目がソレなだけの普通の首輪。


 「本来は真龍種、そして不死鳥のような存在には不要な代物なのですが…その正体を誤魔化すのでしたら、首輪はつけておかねば不自然ですので」


 普通ならば不要な代物らしいが、しかしその正体を隠そうと言うのなら付けておかねば周囲の不信を買う。

 一種のお忍びのサングラスのような偽装アイテム。


 「ただこちら…従魔の首輪ではないという意味で普通(・・)と称しましたが、実際は《鑑定除け》も備わっています」


 だがその首輪の、一番の重要で普通じゃない部分。

 それはこれ自体が《鑑定除け》。

 王様の王冠や、王子の所持アイテムのように《鑑定》を弾ける機能を持つアイテム。


 『首輪から賢者の石と同じ要素を感じます』


 すると神剣からの報告。

 薄々推測していたが、どうも国の抱える鑑定阻害系のアイテムには、かつて賢者の残して賢者の石由来の素材なり技術が使われている様子。

 

 「そういう希少なモノですので、あくまでもレンタルということで、王都を出る際には返却いただければと…」

 「あ、わかりました」


 モノがモノだけに王都滞在中だけの貸し出し品。

 それを踏まえた上で受け取り、二人の了解を得て装備させる。


 「おそろいー」

 「グル」


 そして二人に装着する首輪。

 普通はこの手のアイテムを嫌いそうだが、むしろ同じデザインでお揃いと喜んで身に付けるジャバとフェニ。


 「実はこれをどうつけて貰えるように説得するか、考え緊張していたのですが…」


 事前の不安も完全に拍子抜けするあっさり感。


 ――そんなやり取りもありつつ、特別枠も一般枠も、無事に検査を終え合流。

 無事に王都への入場が許可された。


 (…相手が検査担当者だと、お礼の一つも気軽に渡せないな)


 わざわざ出向いてもらったお礼に、実はあのモコモコの余りを渡そうかとも考えたカイセ。

 だが相手は検査担当。

 下手に物を渡せば賄賂の疑いもかけられかねない。


 (…まぁ、首輪を返却する時に一緒に預ければいいかな?)


 とにもかくにも難所は無事越えた。

 こうして見送られ馬車は王都の中をゆっくりと進み…本当のゴールとなる屋敷の前に止まる。


 「――という訳で、これでお仕事完了かな?」

 「………そうですね」


 長い間の後に現実を認めるエルマ。

 今回の転移護衛の期間はこのゴール(屋敷)まで。

 道中の守りのみで、辿り着けた時点で終了になる。

 そしてそれは雇われの冒険者達も同様。


 「では、お二人は一日に一度は顔を出すように。王都を離れる際にもですよ?」

 「「はい!」」


 ただ、冒険者の中でもボイスとベルはエルマが身元保証人ゆえに許されている王都滞在なので、定期的に顔を出すように従者さんに念押しをされている。 

 なお二人は初めての王都。

 バッチリ観光気分の様子。


 「ちなみに…カイセさんはどうされるのですか?」

 「まぁせっかくだし、俺もこいつら連れて観光でも、かな?」


 ジャバやフェニにとっても初めての王都。

 色々とキョロキョロと物珍しそうに建物を見渡すジャバ。

 どちらかと言えば道中に見かけた飲食店が気になる様子だが。

 しかしせっかくの機会なので、抱え込んでいる現金の放出も兼ねてジャバたちの興味を満たそうかと思っている。


 「その…気が向きましたら、カイセさんもいつでも屋敷(ここ)に寄ってみてくださいね?」

 「まぁ、機会があれば」


 泊まるのも宿を使う気なので、用件としてはエルマともここでお別れ。

 一応王都を離れる際には声を掛けるようにはしておこうと思う。

 

 「…ではカイセさん。ありがとうございました」

 「あぁ、じゃあまた。仕事頑張って」


 そして場も解散。

 散っていく冒険者たちに次いで、カイセもエルマに見送られながら屋敷から去る。




 「カイトさん!お世話になりました!」

 「今度はちゃんと森の正門から遊びに行けるように頑張ります!」

 「あぁ、無茶すんなよ?ほんとに気を付けてけよ?本当にな?」


 その後には兄妹とも、賢者の孫であるボイスとベルとも別行動。

 何とも大変な代物を抱えた人生を送ることになる二人は、そんな特別な事情など全く感じさせない無邪気な様子で、初めての王都を楽しそうに駆けて行った。


 賢者が生前に隠し続けた秘密を知り、そして抱えてこれからも生き続ける彼ら。

 そんな別れはあっさりと、だがそれゆえにいずれの再会を予感させる。

 そして…ほんの一瞬だけ、姿もなくただ微かな気配だけを露わにした二人の背中の存在。

 賢者ゴーストも、言葉は無くともその気配のオンオフで挨拶をして去って行った。 





 「――カイセ、あれなにー?」

 「グー」


 その後はまぁジャバたちのお世話係兼観光案内役のようになるカイセ。

 何か王都に来るたびに食べ物に絡んだ動きしかしていない気もするが、あちらへこちらへと覗いて回る。

 

 (…やっぱ目立つな、微妙に)


 なおその道中、綺麗な鳥と、謎のモコモコ生物を連れるカイセは無駄に周囲の視線を寄せる羽目になった。

 ただしその正体に気づく者はいない様子なので一安心。

 

 ――しかし騒動は警戒していた二人とは別のものに目を付ける。



 「あれは…おい、そこの!!」

 「ん?」


 ジャバたちを伴っての王都観光。

 その最中に声を掛けられるカイセ。

 振り向くとそこには、フードを被った二人組の謎人物。

 顔もハッキリと見れないので、自然と《鑑定》で確かめる。

 するとそこには……


 (…エルフ!?)


 その二人の鑑定結果、種族の欄には〔エルフ〕の文字。

 それはある種、元の世界の知識(空想)で言えば、異世界では定番の種族(・・・・・)の名。


 「お前!その剣(・・・)を何処で手に入れた!!」

 「え…剣?」


 てっきり連れ添うジャバフェニ案件かと思えば…そんな定番種族の二人組は、子龍(ジャバ)でも不死鳥(フェニ)でもなく剣をと問い始める。


 「剣って…え?もしかして…」


 人目にはカイセは無防備な装備無し。

 盾もなければ鎧もなく剣も持たない。

 しかし…人目に見えない部分、姿を消して隠れた〔神剣〕を携えている。

 消えている時はカイセすら普通の眼だけでは視えないその腰の神剣。

 二人組のエルフが声を荒げて指摘する『剣』は、その視線の先は確かに神剣。


 「言わぬのか?ならば吐かせて――!!」

 「ちょッ!?」


 するとよりにもよって町中で、腰のナイフを抜くエルフ。

 当然のようにその矛先を、カイセらに向けて威嚇する。


 ――こうしてカイセ達は、今度は伝説の〔神剣〕をめぐる騒動に巻き込まれていく。

 

 

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