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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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ちょっとしたお茶会?

少しお休みさせて頂きましたが、体調が戻ったので投稿を再開します。

またよろしくお願いします。




 「――まだあるのか…この小石」


 とある日のカイセ。

 魔境の森の中を歩いて、お目当ての素材を採取していく。

 そんな中で見つけて拾い上げたのは〔賢者の小石〕。

 

 「まぁあの日も、全域調べ尽くしたわけじゃないし…この調子だとまだ残ってるかもな」


 賢者の孫である兄妹に、以前に拾い集めた賢者の小石は全て渡した。

 だがそれとはまた別に見つけた小石。

 あの時も森の全てを調べ尽くした訳ではないので、まだ探せば数個程度は見つけることが出来るかもしれない。

 

 「…さて、戻るか」


 そしてカイセは新たな小石一個を手土産として、必要な採取品を集め終え自宅へと帰っていく。




 「――ただいま」

 「あ、お帰りなさい。もぐもぐ」


 自宅へと帰ってきたカイセ。

 するとリビングで出迎えたのは…クッキーを頬張る来客アリシア。

 なんだか最近は本当に食のイメージしか重ならない元聖女候補。

 この日はいつもの納品に来て、今はカイセが用意したお菓子を頬張っている。

 ただまぁ…モグモグしながら喋らないだけマシになってるかもしれないが。


 「…あれ、ボイスは?」

 「兄なら早々にお部屋に戻りました」

 「まぁこの場には居づらかったか」


 カイセの質問に答えたのは賢者の孫の妹の方ベル。

 彼女もまたアリシアと共にテーブルについて、お菓子とお茶に手を出しながら女子同士のお話に興じる一人。 

 そして、ここにはもう一人少女の姿が…


 「えっと…何と言いますか、魔境の森の中とは思えない穏やかな雰囲気が懐かしい気がします」


 そこに座る三人目の少女。

 今この場で…魔境の森でお茶会(・・・)していることに、久しぶりに感じるこの領域にそぐわぬ平和な雰囲気に少しばかり苦笑する彼女。

 割と久しぶりなような、別にそうでもないような、しかしやっぱり久々な気もする来訪となる【エルマ・アーロン】。

 "神眼"の称号持ちの貴族の少女。

 最近顔を合わせる機会のないの無かった彼女が、アリシアと共にこの家を訪れていた。





 ――カイセが採取に出かける前。

 来客としてやって来たアリシア。

 いつものようにお米の納品に転移して来た彼女は、やはり久々に思うエルマを伴ってやって来た。

 勿論そこには用件もあるのだが、ちょうど出かけ間際だったカイセに気遣い帰って来てからで構わないと、今までの間待っていた。


 『あ、じゃあ待つ間、お茶会でもします?ちょうどお菓子とお茶も出てきましたし』


 そんな彼女達にとりあえずお茶請けに出した菓子を前に、お茶会の提案をしたのはアリシア。

 そうしてカイセが留守の間に彼女達はお茶会を…どちらかと言えば〔女子会〕を繰り広げていた様子。


 (まぁ…女子三人に男一人だと居心地微妙だよな)


 元々はその中にボイスも混ざり、お菓子に手を出していた姿を出かけ前に目撃していたカイセ。

 だが帰ってみれば彼の姿はなく。

 考えてみればカイセが居なければたった一人で女子三人の輪に置き去りにされる形になるのだから、まぁ思春期男子としては居づらさがあったのだろう。

 その結果お茶会は女子会に変化した。


 (にしても…あの量がもう売り切れ間際か…)


 そんな場に帰ってきたカイセは、自身が提供した菓子の器がほぼ空になりつつある様を見て静かに驚く。

 せいぜいが一時間程度の時間で、喋りながら片手間に摘まんでいては枯らせるような量ではなかったと思っていたのだが…そこは男視点の甘い計算でしかなかったようだ。


 「…それで、カイセさんの用事は済んだんですか?」

 「あぁ。まぁ取って来る予定だったものは一通り終えてきたかな。余計な拾いものもあったけど…まぁとにかく、これでエルマの用件も聞けるかな」

 「ごくん…え?あ、はい!そうでした!」


 何にせよ、帰ってきたカイセは女子達の囲うテーブルの椅子に腰かける。

 来客であるエルマの正面の席。

 早速、彼女が訪れた理由を確認しようとするが…当の本人はその本題よりも、残りの菓子を食すことを優先していた様子だった。




 「――それで、今日はご用件は?」

 「えっと…まずは報告から…先日無事に諸々の研修(・・)が終わりました」

 

 そして語りだす際に前置き。

 "神眼"の称号を持つエルマの目は、文字通り眼にまつわるスキルを複数備えた末に至る特別なもの。

 まぁその辺りは女神のポカ案件だったのはかつて知った通りなので今はおいておく。

 とにかく特別な眼が国にも認められたエルマは〔国家認定鑑定師〕、それも"特級鑑定師"としての認定を受けることとなった。


 ただ…なったからと言って、認定を受けてすぐにその手のお仕事に就く訳ではない。

 言うなれば研修(・・)のようなものがあり、最近会う事がなかったのもその関係で家や町を離れていたからでもある。


 「それで…正式に特級の鑑定師として勤めるにあたって、本格的に拠点を王都へ移すことになりまして…」

 「あ、王都へ引越し?」

 「はい…実家はそのままですが、私は両親と共に王都へ正式に移ります」


 そしてその鑑定師としての役目の兼ね合いで、王都へと引っ越すことになるらしいエルマ。

 今のアーロン家はそのまま本宅として、現当主と冒険者である二人の兄達が中心に、アーロン家としてのアレコレの中心として機能し続ける。

 ただそれに加え別邸として王都に住まいを用意し、特級鑑定師として王都常駐が基本になるエルマの活動拠点として、更に当主を息子に継がせてその手の役目からは一線を退いた父親と母親が移り住むらしい。


 「そう言えば、アーロン家って王都に屋敷を持ってなかったんですね」

 「えっと、昔はあって…だけど私の病気の関係で…」

 「あ、すいません…」


 ふと口をはさんだアリシアの疑問。

 一定以上の地位を持つ貴族は、大なり小なり王都に住まいを持っていることが多い。

 義務ではないが、やはり貴族の役目や交流を踏まえるとその方が都合が良い事が多いらしい。

 そんな中でアーロン家は、以前に護衛として王都に伴った際にも宿に泊まったことから、王都には屋敷を持たない様子だった。

 だがそれは今のお話で、どうやら昔は王都に屋敷を持っていたようだが…そのあったものが無くなった理由に、かつてのエルマの病が関わっている様子で質問をキッカケにエルマが苦い笑みで反応をしめした。

 結果、余計なことを聞いたとアリシアは口をつぐむ。


 「王都に引っ越しかぁ…となると、アリシアのところにも早々遊びには来れなくなるな」


 そんな空気を変えるために話を逸らすカイセ。

 友人であるアリシアのもとに遊びに来にくくなるという現状認識を言葉にしたのだが…そこにもまた微妙そうな反応なエルマ。

 

 「…そうですね。確かにそちらもですがこちらにも――いえ、えっと…それで今日はその挨拶と、その…実はカイセさんにまた護衛(・・)のお願いが出来ないかと…思いまして」

 「護衛…転移護衛?」

 「はい」


 そうしてまもなくあの家を離れ、正式に王都へ移り住む予定らしいエルマ。

 そして…本題はそれに伴う〔転移護衛〕の再びの依頼。


 「それで…また私を王都まで守っては貰えないでしょうか?」


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