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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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兄妹の共振



 「――これってもしかして?」

 「出来るか?流石にキツイと思うけど」

 「でもこの感覚は…」

 「だけどさ…」


 ボイスとベル。

 賢者の孫の兄妹の最初(・・)の模擬戦から数日。

 秘密裏に賢者ゴーストに怒られた後、今も二人はカイセの家に残り毎日のように模擬戦を行い、そしてその後はしっかりと検討分析の話し合いをする日々を繰り返していた。

 どうもあの模擬戦以降、二人に何かしらの〔思う所〕が出来た様子で、今日も模擬戦の結果を踏まえて、また話し合っている。


 そしてそんな二人の模擬戦審判に日々付き合わされるカイセ。


 (…正直、いつ帰るんだろうな?とか思ったりする訳だけど…)


 カイセはそんな二人を見守りながら、一体いつまで滞在するんだろうか?と少なからず内心で思っている。

 当初の想定よりもしっかりがっつりと居座っている二人。

 勿論追い出すようなことをするつもりはないし、別に追い出す理由も今のところはない。

 だが無期限で居られるのもちょっと…と、思わなくはない微妙に複雑な現状の内心。


 二人からは滞在日数に応じて代金は払うと言われている。

 正直女神に押し付けられたお金を減らしたい立場のカイセとしては受け取らなくても良いとは思ってるが、そこはやはり道理の問題として受け取るのが筋だとも思う。

 なのだが…その対価の支払いをしっかり話し合った結果むしろまだまだ…少なくとも今の模索に何かしらの成果が出るまでは堂々と、この家に居座る様子の二人。


 『ちなみに、その代金を払えるだけのお金はあるの?』

 『大丈夫です!いざとなれば祖父のお金があるので!』


 元々、祖父である賢者は結構な大金を遺産として残してくれていたらしい。

 ただこの魔境の森までの旅路は、自分たちで稼いだお金で行きたいと、冒険者としてバイトしながらここまでたどり着いた律儀な兄妹。

 だが事ここに至っては、御守ありで色々と試せる環境に身を置けると知って、稼いだお金だけでなくいざとなれば祖父の遺産に手を付けてでもここに滞在し続け、この機を逃さず今の二人の問いの答えを求めたいようだ。

 つまり最大で遺産を食いつぶすまでは居座る可能性がある二人。


 (…まぁいいや。今のところは困ってないし、本当に困る時が来たらその時には追い出す相談をすればいい)

 

 ということで更に数日。 

 兄妹を見守り続ける家主のカイセ。

 そして…ある日。

 ボイスとベルは自力で偉業(ソレ)に辿り着いた。





 「――これは?」

 「私達の胸の賢者の石が《共振(リンク)》してる状態です」


 ここでの模擬戦とその結果の考察を重ね…兄妹が感じていた〔何か〕に答えが出た。

 するとその何かは、カイセが思っていたようなものとは違った。


 「私達が模擬戦で戦ってた時、何かこう…胸の、心臓代わりの石がうずく(・・・)ような感覚があったんです」

 「ベルだけでなく俺も。それでその原因を探ったりしてたら…思い出したのがあの大きな石だったんだ」


 模擬戦の中で感じた違和感。

 その答えを探して…過程で行き着いた感覚の類似。

 あの空間、地下にあった〔賢者の巨石〕の〔共鳴現象〕。

 形見の小石を回収されたあの一件の時に感じた、自分たちの胸の石の脈動の小規模版(・・・・)

 あの時の刺激がキッカケとなったのか、、模擬戦の最中に兄妹同士の石は僅かに共鳴の兆候を見せた。


 「どうも戦いに熱が入るほどに私達の石が僅かに共鳴するみたいで」

 「あの時みたいに引っ張られるような力は感じないけど…せっかくだからこの、俺らにしかないコレを何かしら利用出来ないかなと思って色々試していたんだ」


 微かな共鳴を利用できないか?

 それが兄妹のここ数日の課題。

 勿論できないならそれは仕方ない。

 元より賢者の石など、知って数日の二人が早々扱いきれる代物でもない。

 だがそれでも、祖父の残した形見を、自分たちの命を救うために賢者が手放した時間を、自分たちの更なる糧に出来ないかと画策した兄妹。

 そして…行き着いたのが《共振》。


 「こう…ある程度魔力が減った状態でないと使えないんだけど、俺らの間で意図的に小さな共鳴を起こせるようになって」

 「そしたらこう、自分の中に突然魔力が増えた(・・・・・・)んです」

 

 賢者の石の妨害効果で二人のステータス、魔力数値は確認できない。

 だが確かに、今までよりも魔力枯渇状態からの脱却が早いように見える二人。

 加えて何故か、ちょっぴり心臓辺りが光をこぼして(・・・・・・)いる。

 多分その《共振》とやらの状態の胸の欠片が光を放ち、それがちょっとばかし体の外にまで漏れているようだ。


 『まさか…魔力炉心の片鱗か?!』


 すると姿が見えぬまま賢者ゴーストの声だけ聞こえて来る。

 消えたまま、思わぬ事態に無自覚に声を出してしまった感じだろうか?

 当然二人には聞こえないが、カイセにだけは届いたその言葉。


 (魔力炉心…賢者の石の、魔力を生み出す核としての力の話か?)


 賢者の石が持つとされる力の一つ。

 不老の為の命の水とは別に、魔力を生み出す動力源としての力も想定されている。

 だが森で拾えるほどの小石にはその機能はない。

 あるとすればあの巨石クラスのもの。

 ただ、あそこにある《封印》は、巨石を魔力炉心としてではなくあくまでも〔魔力増幅器〕としてのみに限定して稼働させていた。


 あの場の封印は賢者が関わった時のモノから『改変されていた』と、実際に直視して気付いた賢者ゴーストがお喋りになっていたあの時に愚痴の一つとして零していた。

 当時はただの封印だったが勇者により、汲み上げられた魔力の増幅器としても利用される巨石。

 その初代勇者が、意図して炉心としての活用をしなかっただけなのか、もしくは技術的に出来なかったのか。

 どちらかは分からないが…目の前の兄妹はその賢者の石の炉心機能を、欠片の石で再現して見せたようだ。

 

 (それを共鳴で…いや共振?で…二つの石の掛け算でごく小規模だけど再現できたのか?)


 多分だが、カイセが拾った普通の賢者の小石には無理な現象だったと思う。

 この《共振》は賢者が埋め込んだ欠片の細工があるからこそ、兄妹という繋がりがあるからこそ実現可能だっただろう裏技(・・)

 二人にしか達しえなかったろう事象。


 「という訳で、明日からはこれの慣らしをしたいので」

 「もう少しお邪魔します!」


 そして兄妹は、一つの模索の答えは出たが、今度はこの《共振》を踏まえた上での模索をする為にもう少しここに滞在すると宣言したのだった。


 

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