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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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夢の中のお説教




 「――ぜぇ、ぜぇ…」

 「ふぅ…はぁ…」


 地に伏せて呼吸を荒くする兄妹。

 賢者の孫であるボイスとベルの兄妹模擬戦。 

 賢者の石の事情で、だいぶ久々となる怪我を気にせず出来る鍛錬。

 その好機にはしゃいだ兄妹は今…魔力枯渇状態で倒れていた。


 「…ちなみにフェニ、その癒しの炎って魔力の回復は出来る?」

 「グー」

 「まぁ無理だよな」


 怪我に備えて控えていた不死鳥フェニもお手上げ。

 不死鳥の炎は賢者の石のデメリットを回避しつつ傷を癒すことが可能。

 だがあくまでもそれは傷にのみ左右する炎

 失った魔力の回復は、石の影響に関係無くそもそもフェニには無理なお話。


 「カイセさん…あの…何か…魔力の回復は…」

 「フェニは傷専門だし、二人には魔力回復薬(マナポーション)が効かないから俺も無理」

 「うぅ…吐きそう…」


 傷を癒す手段を得て、調子に乗った兄妹達は見事なまでに本気で戦った(・・・・・・)

 その結果、魔力を消費し過ぎて〔魔力枯渇〕に陥るほどに。

 今の二人の苦しみはそれゆえの当然のもの。

 

 「…で、ご感想は?」

 『途中までは良かった。以前の失敗を繰り返さぬようにという意志と工夫をちゃんとしておったからな。だが…最後の魔法を、よりにもよって魔力切れで不発(・・)にした。これで台無しのゼロ点じゃ』

 「厳しいけど仕方ないのかなぁ」


 そんなのたうち回る二人を尻目に、観戦していた賢者ゴーストに感想を尋ねてみる。

 すると帰ってきたのはゼロ点評価。

 道中の評価は悪くなかったが、最後の最後で大爆死した。


 『魔力枯渇は仕方ない。時にはそれ程になってでも戦わねばならぬこともあろう。正直、実戦ではそうなる前に逃げろとも思うが、模擬戦ならばそこまで全力をもってして挑むのも勉強の一つじゃ。だが……発動した魔法を不発に終わらせたのはいただけん!あれほど魔力管理は徹底せよと言い続けたのにこの有様!』


 賢者ゴーストの大減点の要因はそこ。

 魔力枯渇自体を咎めるつもりはないという。 

 だがその枯渇により発動途中(・・・・)の魔力切れで魔法をしくじった事が、師匠であり賢者である魔法使いにとってはあり得ないと評する点。


 〔魔法を発動したものの魔力不足で失敗した〕というのは〔魔力管理の杜撰さ〕ゆえ。

 あの時の二人の驚きからも『あると思ってた魔力がいつの間にか無くなっていた』という表情は明らかで、自分の中にあるはずの持ち物である魔力の把握・管理・運用の明確な甘さを示すものに他ならない。

 更には誰にでもある〔枯渇の予兆〕すらも見逃す程に悪い集中(・・・・)をしていた証拠でもある。 

 

 『何事も集中してればいいという話ではない。更になけなしの魔力を、生きる為に逆転の、もしくは逃亡の可能性に繋げなければならぬ大事な最後の一手でこの有様。出るはずのない大技よりも出せる小技が大事な場面で残量を見誤る…これは流石に看過できぬ!となれば……ブツブツ』


 そんな教え子の体たらくを見せつけられた賢者ゴーストは、何かしらを思案しブツブツとつぶやく。

 その内容は聞き取れないまま、気付けば姿を消していた。


 (…何となく面倒の予感がするけど、まぁ矛先は兄妹だしいいか)


 とは言え、それはあくまでも兄妹に対するもの。

 カイセは関係無い面倒だと思うので、特には気にせず放置することにする。


 「それより…今は回収だな」

 「うぅぅ…」

 「ぐふ…」


 魔力枯渇に肉体的疲労の相乗効果で顔色の悪くなった二人をゴーレムで回収。

 家の中、二人の使う客室に運んでいき、そのままベットに転がして休ませるカイセ。


 「…気持ち悪くて寝れません」

 「頑張って寝ろ」


 魔力枯渇の自然治癒には休む・寝るが一番の手。

 だが気持ち悪さで中々眠れず、かと言って睡眠誘導の魔法も二人には弾かれる。

 なので頑張って自分たちで眠りに入って貰わねばならない。


 「――うぅ…すぅ…うぅ…」

 「………」


 それから少しして、ようやく眠りについたボイスとベル。

 するとその瞬間、二人の頭上に姿を現す賢者ゴースト。


 『すまぬな、手間を掛けさせて』

 「まぁこのぐらいは…というか結構頻繁に出てきますね」

 『ちょっと用があっての。少しばかり…そうだな。明日の朝頃まで二人は起きぬゆえ、それを伝えて起きたくての』

 「明日の朝まで?何かあったんですか…?」

 『ちょっとばかしお説教と鍛え直し(・・・・・・・・)をな?では行って来る』

 「え…うぉ!?」


 そう言って賢者ゴーストの半透明な姿はただ消えるでなく、眠る二人に溶け込むように(・・・・・・・)消えていった。







 ――そして翌朝。


 「…祖父が夢の中に出てきて怒られ、そのあとみっちり魔力管理の修行させられた気がします…」

 「俺も…」


 しっかりと眠り魔力も回復したはずなのに、精神的にはむしろ疲れて起きて来る兄妹。

 ベルに関してはいつもの寝ぼけもなく、その()ゆえにボイスと共に起きれてしまった。

 話を聞けばだいぶ過酷な修行を、死んだはずの祖父に施される夢を見たらしい。


 (…賢者ゴーストが何かした?けど魔力干渉は石に邪魔され…いやでも賢者なら裏技の一つくらい?)


 昨日の去り際の発言と鑑みて、それは賢者ゴーストの行った何かによって生じた夢だと推測するカイセ。

 賢者の石の影響を鑑みると、精神干渉も無理だと思うのだが…そこは賢者とでも言うべきなのだろうか?


 『成果がぼやける上に、場合によっては歪んだ身に付き方もする可能性があるゆえにあまり使いたくない鍛錬法だったが…今回ばかりは流石にのう。しかし…そろそろ本気で使い過ぎたゆえ、本当にしばらく消えねばな。後は任せる…』


 そう最後に一言だけ言い残し、それ以降は本当に姿を見せなくなる賢者ゴースト。

 備えておきたい魔力を使ってでも、孫たちへ一喝入れるべきだと判断したようだ。

 

 (死んでからも孫に付き添うお爺ちゃんってのも大変だなぁ…望むべくではあるんだろうが) 


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