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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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兄妹の模擬戦と観戦者



 「――完了。これで内側からの攻撃にも強くなったな」


 カイセは家を覆う守りの《結界》を弄る。

 基本的に結界は〔外から内への干渉〕に対する守りとして機能する。

 拠点防衛など、守る場所を外から攻撃されても大丈夫なように固めるのが基礎用法。

 その《結界》を今回は〔内から外への干渉〕に関しても守れるように強化した。

 これはこれから行われる模擬戦(・・・)の影響を外の森に、流れ弾を飛ばさないための処置である。


 「…よし」

 「準備出来ました」


 そしてその模擬戦の主役は兄妹。

 賢者の孫であるボイスとベル。

 二人は兄妹揃いの杖を持ち、賢者である祖父直々に魔法の手ほどきも受けた弟子とも言える存在。

 その二人の真剣勝負が始まろうとしている。


 「さてと…まぁフェニが居るから死ななければどうとでもなるだろうけど、でもそもそもヤバイ傷を負いそうになったら癒し任せにせず問答無用で止めるからな?」

 「はい!そうならない程度に無茶します」

 「無茶すんなって言ったつもりだったんだけどな」


 だいぶやる気に満ちている妹ベル。

 いつもよりも言葉の力が強い。

 対する兄ボイスは…むしろ静か。


 「………」


 自らの手にする杖を振り回し、魔力の流れを整える。


 (模擬戦の空気じゃないなぁ…いやまぁ、二人にとって本気を出せる模擬戦(・・・・・・・・・)が希少なのは理解するけど)


 兄妹、そして賢者ゴーストのお話からすると、かつては賢者のもとで訓練として頻繁に行わていた兄妹模擬戦。

 だがその恒例がぷつりと途絶えたのは…二人の心臓が壊れ、賢者の石が代替心臓と化してから。


 二人の胸の賢者の石は、他者からの《治癒》も《回復》を、傷を治すための多くの術を拒む。

 唯一受け入れる本人と互いのもの。

 しかし二人の治癒魔法にもまだまだ未熟ゆえの限度がある。

 そんな状態で本格的な模擬戦をして、怪我をすればそれがそのまま大惨事になる可能性もある。

 ゆえにその事件以降、二人の鍛錬内容も安全重視で大幅に変更せざる得なくなった。


 (でも…ここにはフェニが居る)


 しかしそんな二人の前に、不死鳥たるフェニが現れる。

 本来は弾くはずの他者の治癒だが…フェニの《癒しの炎》は健全に機能する。

 自分たち以外で唯一、自分たちを癒せる存在の出現。


 (それで…やる事が全力の模擬戦って…いやまぁ命の危機感じた後だから強くなりたいって気持ちはあるんだろうけど)


 そして今回、そのフェニの存在ありきで久々に行われるボイスとベルのタイマン模擬戦。

 仮に怪我をしてもフェニがヒーラーとして控えているので問題ないという論。

 この魔境の森…カイセの家にお世話になっている間しか出来ない、比較的安全な真剣勝負。


 「……さて、それじゃあ合図お願いします!」

 「はいはい。それじゃ…両者位置つけー」


 ちなみに流れで審判役という名の緊急待機要員を任されるカイセ。

 それ自体は別に構わないのだが…微妙にやる気を削ぐ()を浴びてちょっとめんどくさくなってきている。


 『久々の模擬戦か。二人の成長度合いを確かめるにはちょうど良いの』

 「再会早かったなぁ…」


 存在を表し会話をするだけで、その存在の為のエネルギーを消耗させるはずの賢者ゴーストは、この孫たちの模擬戦を特等席で鑑賞するためにカイセの傍に顕現する。

 この場ではカイセにしか見えない聞こえない存在。

 もう一生会わない可能性の方が高かった存在と、あっという間に再会するカイセ。


 『まぁ出ては来たが、これ以上何かしようとすれば文字通りワシ自身が消えかねない。ゆえにもしもの時は任せたぞ?』

 「まぁ…ウチに居る以上は出来ることはしますよ」

 『頼んだ。ワシは静かに眺めさせて貰おう』


 と言いつつも、姿を消さない時点で、もしもの有事に備えその時には消滅も覚悟で手を出すつもり満々に思える賢者ゴースト。

 とは言え本当に消えるほどの覚悟のもとで何かを行うのは最終手段。

 備えはしつつ…基本的にはこの場はカイセに託す。

 託して…自分は特等席での鑑賞に専念するつもりのようだ。


 




 「――さて、じゃあ始めるぞ」

 「はい!」

 「あぁ」

 「…位置についてー、よーい……はじめ!!」

 

 そしていよいよ始まった兄妹模擬戦。

 その二人の最初の一手は……


 「「《雷撃》!!」」


 互いに同じ速度で同時に放ったのは《雷撃》。

 雷属性の基本攻撃魔法。

 二人の初期位置のちょうど真ん中でぶつかる一手目。


 『ふむ、以前よりキレは上がってるな』

 

 そんな二人の戦いを、ふむふむ言いながら楽しそうに観戦する賢者ゴースト。

 独り言が多く、全然静かな観戦にはならない。


 『さて次は…風と炎かの』


 だがその衝撃の余波も消えぬ間に、二人の手は賢者の予想通り(・・・・)に動いていく。


 「風撃!」「炎撃!」


 次は属性違いの同魔法。

 そしてそこからしばらくは、似たような魔法のぶつけ合いになる。


 (…速さの割に一発一発しっかりとしてるな。流石賢者直伝ってところか?)


 魔法自体の難易度は低いが、それでもこの連発の中でも魔法に乱れが生じない優秀さ。

 速さと丁寧さを兼ね揃えた二人の魔法。

 そのぶつけ合いは次の段階に進む。


 「…《炎雷弾》!」「《風連撃》!」

 『威力と手数、戦い方の好みは相変わらずじゃの』


 ベルは魔法の威力を上げて、ボイスは手数を増やした攻撃。

 初期位置から動かずに同種魔法のぶつけ合っていた模擬戦のステップが上がり、二人は足も動かし始める。


 『さて本番はここから。イエティとやらを相手に見せた無様を再現するのだけは勘弁してくれの?』


 


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