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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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この世界の作り方



 ――世界の生まれ方にはいくつものパターンが存在する。

 その中でも一番古くから存在し、そして神々の間でも注目度が高い〔神の子〕を大枠(・・)とした世界誕生。


 【創造神】の子を成した女神が生む概念的な存在(・・・・・・)

 この場合に生まれて来るのは人の知識として分かりやすい子孫的な子供でなく、世界を管理する神々のような個々の意志を持つ存在ですらもない。

 生まれて来るのは〔世界という概念の大枠〕。

 言ってしまえば新たな世界の箱庭(・・)である。


 新たな世界の創造を任された神は、創造神の子である箱庭の内側にに、あれこれと世界の基盤を構築していく。

 星を生み出し、大地を生み出し、海を生み出し、空を生み出し。

 神によってはそのまま生命の誕生まで手を加えていく者もいるし、星の誕生すら手を出さず種だけ撒いて成り行きに任せていく者もいる。

 何にせよそうして整えられた〔新たな世界〕は動き始め、管理神の見守る下で育ち発展していく。


 これが数多ある世界の生まれ方の一つ。




 「――確か、前任者が身籠ったって言ってなかったっけか?」

 「はい。私の前任者であるこの世界の管理神の先輩は、その〔世界の大枠(子供)〕をこの先に生む事になりますね」 

 「規模桁外れだなぁ…神様の子供って」


 そんな世界の成り立ちの一つを語ってくれたのは現在の世界の管理者であるポカ女神。

 カイセが転生したこの世界も、そんな神様の子供をベースに成長した世界らしい。


 「…というか、そんな大事な世界で普段からポカをかましまくってるの…クビ切られない?」

 「あーうーあー…まぁ、基本的に創造神様は放任主義なところがあるので…失敗してもカバーできてるなら大丈夫かと…問題が起こらない世界など存在しませんし!」

 「人災…というか神災?はまた別な気もするけど…」


 きちんとしてれば起きなかった問題を起こしているのだから『問題は起きるのは仕方ない』の範疇を超えているような気もするカイセ。

 とは言え…神様の尺度が人間のそれとは異なるのも事実だとは思うので、本当にこの程度(・・・・)と捉えられている可能性もある。

 ダンジョンの一件などは神々の真面目な不祥事でもあるので怪しいところではあるが。


 「……それで、賢者の石のお話で何故そんな創造神話?」

 「賢者の石がこの〔世界の成り立ち〕に関与しているからですよ。さっきも口にはしましたが〔創造物質〕が関わって来るので」


 ポカ女神の語り出しに口にした〔創造物質〕。

 これはどうやら〔箱庭〕の中身に使用する建築資材(・・・・)のようなものらしい。

 創造物質を消費したり加工したりして、星や大地を生み出していく。


 「それでまぁ…人が賢者の石と呼ぶその物質は、本来は〔創造物質の端材〕なんですよ。非公開ワードなので地上の鑑定には絶対に創造物質というワードは出ませんけど」

 「あれ?もしかして賢者の石が鑑定不能になってるのって」

 「あ、違います違います。そこは非公開ワードの秘匿は関係無く、ご存知の通りの賢者の石の力の副作用みたいなものです」

 「そうなのか…と、逸らしてスマン。話を続けてくれ」


 脱線した話は戻され、〔創造物質の端材〕の解説。

 これはその文字通りに世界を組み上げる際に使用した創造物質の端材(・・)

 世界の構成要素の一つだったものであり、消費されずに残ったもの。

 それが賢者の石の真実。

 するとそれを明かした直後、ポカ女神が何か唸り出す。


 「で…うーん、ここから先は言いづらいんですよね…ルールとかでなく心情的に」

 「あ、うん。もう雰囲気で神様が何か適当やったのは理解した」

 「別に、私のせいじゃないんですよ?その当時まだ私生まれてなかったですし」

 「なるほど、大丈夫。他の神のポカだって言われても納得できるから。神様全体がアレだってのはこの前である程度理解したつもりだから」

 「その理解もどうなんでしょうか……まぁそれで、ちなみにカイセさんって森に家を立ててましたよね?その際に使用した材木の端材はどうしましたか?」

 「え?普通に別のところに再利用したり、まだボックス内に眠ってたり…何にしても残った分はちゃんと片した(・・・)けど?」

 「そうですよね。普通は(・・・)お片付けしますよね?」

 「あ、うん、片さなかったんだな?物質の端材を」


 〔創造物質の端材〕。

 レベル10の本にも記載のない、基本的には禁則ワードな創造物質の余り物。

 その成れの果てらしい賢者の石が、何故地上に存在するのかの根本原因。


 「普通は、創造物質って使った分以外は回収(・・)して、世界の内側に利用可能な状態で残していてはダメなんですよ。でも…この世界の創造を担当した神が、お片付けをサボって(・・・・・・・・・)そのまま端材を世界の中に残してしまったんです」

 「理解したつもりだけど…根本的にまともな仕事してる神様っていないの?」


 責任ある立場での資材の管理不備。

 使った余りを片す事無く放置して…結果今のこの世界の中に、本来は取り除かなければいけない端材が残り続けた。


 「隕石…って書いてありましたよね?カイセさんが住むその星の外、分かりやすく言うと宇宙にはその時に回収しなかった端材が未だに残されているんですよ。小惑星や…スペースデブリ?のような形で宇宙空間に浮いてるんですよまだ」

 「宇宙開発進めば賢者の石回収し放題だなぁ、この世界」


 その事実で、賢者の石の流れも理解する。

 神様が片付けなかった〔創世物質の端材〕が、今の宇宙には複数存在する。

 その端材が何かの拍子に重力に引かれて星の内側へと落下、そのまま〔隕石〕となって地上に落ちる。

 その後に誰かの手で拾われ分析の結果、未踏となった伝説の石に近しい力を持っていた為に〔賢者の石〕と名付けられたのが始まり。

 人間は賢者の石の精製に成功したのではなく、拾った石を賢者の石と名付けただけ。

 賢者の石の正体は文字通り隕石であり、その根源は片付けられなかった創造物質。

 この世ならざる神様の世界のモノ。


 「…それ、後から回収できなかったの?」

 「一度動き始めた世界は、その直後はとっても不安定なので管理神も余程の事態でなければ介入しないんですよね。創造担当の神が残した端材も、気付いた時にはその最中で様子見扱いにされたようです。更には結局、創造物質としての真価は私達神々の力や技術があってこそ発揮されるものなので、仮に今後地上の存在が入手しても大した事には使えないって判断でその後も放置されたようです」

 「まぁそりゃ、神様世界の超物質を人間がまともに扱えるわけもないけど。とはいえ種族寿命超えてる人間出ちゃってるけど」


 ゆえに放置された端材の回収。

 端材は残ったままでも問題ないと完全に判断された様子。

 結果未だに宇宙には、残された創造物質の端材が浮かび回っている。


 「ちなみにカイセさんの見たという安置された巨石は、地上に落ちてきた物の中で最も大きな石になります。しかも…あれが原因で、あの森が魔境の森に育ちました」

 

 賢者が長寿延命を実現した〔命の水〕。

 飲むと老化を押さえられる賢者の石から生まれる秘薬。

 宇宙から地上へと落ちてきた賢者の巨石の隕石は、他にないその大きさもあってか、他の小石には起きなかった落下の熱による命の水の精製という誤作動を起こし、更に地面との衝突の際には原液(・・)を周囲にばら撒いてしまった。

 それが隕石落下で、一度はクレーターと焼け野原となった落下地点周辺に強靭な森を生み出し、結果としてそこに住み着いた生物たちの強化にも繋がった。

 つまり賢者の巨石が落ちて来なければ、あの場所に魔境の森は生まれなかった。

 

 「完全に放置の悪影響出てない?」

 「偶然、生物の成長に繋がっただけだし、その数値も許容範囲内だから問題ないです。ちゃんとしてたら起らなかった事象なのは確かですが」


 そうして魔境の森の生みの親となった巨石はその後沈静化。

 他の隕石同様に静かにその場に存在し続け…そして森を訪れた賢者たちに発見された。


 「そこから先はまぁここで語ることでもないので、賢者の石の成り立ちについてはこの辺でしょうかね?ちなみに不安(・・)は解消されましたか?」

 「いいや。だから聞かせてくれ」

 「お応えできるかは内容次第ですね」


 ここまでの、賢者の石の生い立ちに関するお話。

 しかしカイセにはこの情報の中に、自分が求めるものは無かった。

 だから改めて確認する。


 「…真っ先に本題を上げるなら『兄妹の心臓の石がどのくらい保つものなのか?』って話だな」

 

 


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