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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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石の正体



 「――なぁ、これってマジなのか?」

 『《鑑定》は視えているのならばそれが真実です』


 夜、カイセの自室。

 昼間の賢者の石を巡るゴタゴタも落ち着き、それぞれが眠りに付き始めるその時間。

 カイセは自分の部屋であのモノに向き合う。

 それは…イエティから摘出した〔賢者の石〕。

 正確にはその成れの果て。




 『――回収した賢者の石は機能を停止しました。この状態ならば《鑑定》も有効だと思われます』


 イエティの暴走原因であった賢者の石。

 神剣によって摘出されたその石は、回収後は沈静化していた。

 そしてゆっくりと力は弱まって行き、気付けば完全にただの石となった。

 神剣曰く、手元の石は力を既に失った残骸。

 賢者の石のジャミングにより阻害されていた《鑑定》も、今ならば通用するとのこと。

 と言う訳で実際に《鑑定》した結果…そこには新たな謎が生まれた。





 「――賢者の石じゃなくて、隕石(・・)?」


 そうして認識した賢者の石の鑑定結果にカイセは困惑する。


 〔隕石の欠片〕


 そこには〔賢者の石〕という文言はなく、隕石(・・)という、カイセにはそこそこ聞き慣れた単語が刻まれる。


 前提としてこの世界にも(そら)は存在し、時折流れ星も落ちて来る。

 なので隕石という言葉での認識はともかくとして、宙から降る星としての認識は普通に存在する。

 ただ…それが今カイセの手元に、しかも賢者の石だったはずのモノがそう表示されていることに違和感しかない。

 しかし、神剣の言葉と鑑定の結果を信じるならば答えは見えたその結果一つ。


 「…賢者の石は、この世界の隕石だった?」


 歴史に刻まれる賢者の石は、かつての賢人たちが挑み…そして敗れた夢の産物。

 しかし現実に賢者の石が存在することを知ったカイセは、疑うことなくそれは人の手で生み出された人造物質だと思い込んでいた。

 だが現実は自然界の物質。

 隕石となればちょっと特殊ではあるが、そこらへんに転がっている石ころや、資源鉱石である石炭やダイヤ、オリハルコンやミスリルなどと大枠では同じ枠組みの存在。


 「いや…今はそれよりも(・・・・・)――」


 だが正直言えば、今感じる不安(・・)に比べれば出自などどうでも良いに等しい。

 この石が、賢者の石が鑑定可能になった理由。

 〔力を失くした賢者の石〕という存在そのものが、今のカイセにとっては重大事。


 



 「――駄目だな。レベル10でもこの程度なのか…」


 そんなカイセがやって来たのは一種の精神世界。

 スキルによるアクセス権限に基づく《星の図書館》への入館。

 この世界全ての知識を内包する本の空間。

 そこでカイセは賢者の石に関するお目当ての情報を探してみる。

 いつもはノータッチにしているレベル5以上の本にも手を出して確認し、レベル10にも手を出した。

 だが…目当ての情報は見つからず。


 「何処を読んでも、賢者の石の核心(・・)を突く本が見つからない…」


 より深い情報を求めて、レベル10付近の書物も重点的にあたるが…最高レベルであるはずなのに大した情報が載っていない。

 賢者の石の正体が隕石という記述すら見つからない。


 「もしかして……もっと上?」


 レベル10の本に求める答えを見つけられないカイセ。

 そして…今立つのは〔禁書庫〕の扉の前。


 「……まぁ、開かないよな」


 試してみるが当然開く訳もなく。

 カイセの持つ《星の図書館のアクセス権限》、そのレベル10は人の身で知れる情報全てにアクセスできる権限ではある。

 だが…それの情報全てを知ったとて全知(・・)には程遠い。

 レベル10はあくまでも人間に許された最大知。

 しかしこの図書館にはそれ以上(・・・・)の書物も、要するに現地生命には見せられない本も所蔵されている。

 それが〔禁書庫〕の所蔵書であり、そこは神様や天使の領分。


 「となると…直接聞いてみるか」


 そのままカイセは図書館を後にする。

 





 「――それで、私のところへ来たと?」

 

 その後、カイセがやって来たのは神様空間。

 夜中でも開放されてる教会の礼拝堂から跳んできたカイセ。

 いつものと言っていいほどによく来るポカ女神のお仕事場。

 

 「賢者の石…ですか。まぁあの地で暮らしていれば、いずれは関わりそうな事柄でしたけども」

 「ん?どういう事?」

 「魔境の森の成り立ちにも関わってますから、賢者の石って……いえまぁ、正確に言うならこの世界の成り立ち(・・・・・・・・・)に関わるのが一番最初ですけど」


 詳しくは語らぬが、そう口にする女神様。

 そして迷いつつ…カイセに尋ねる。


 「一応、賢者の石絡みは人に教えたくない部類の知識なんですけど…でもそうですね、賢者の石ぐらいなら条件次第…では貸し(・・)を使うという事ではどうでしょうか?」

 「うん、それでいい」


 貸しとは、ダンジョンの一件の協力に伴う報酬。

 一応は金銭報酬を受け取っているカイセだが、あれは半ば押し付けられた形のものなので本命として後回しに…貸しとして保留にされていた本命の報酬。

 それを使っての、禁書庫分類の情報の開示。


 「即答ですね…一応神様への貸しなんですから、もっと大事にして少しは迷って欲しい所なんですけど……まぁいいです。それで、お話は賢者の石についてですよね?」

 「そうそう」

 「では…そうですね、まずは賢者の石は正確には隕石ではなく、この世の創星物質の端材(・・・・・・・)ってところから始めましょうかね?」




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