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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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不死鳥の成長



 イエティから暴走状態の賢者の石を摘出し、フェニの治癒により傷を癒し、元々の住処付近へと送り返したカイセ。

 その後は普通に自宅への帰還。

 一足先に避難した冒険者兄妹たちの待つ自宅へと帰って来た。


 「――で、これは何事?」


 そんな帰って来たばかりのカイセが目にしたのはちょっとしたボヤ騒ぎ(・・・・)

 テーブルの表面には黒い焦げ跡。


 「あ、カイセおかえりー」

 「うんただいま。とりあえず説明してくれない?この状況を」


 痕跡の割にジャバは落ち着いてカイセを出迎える。

 対してベルは鎮火済みの今もちょっとあたふた。

 とは言えそのままとも行かず深呼吸し、無理矢理に落ち着かせて語りだす。


 「えっと…実はフェニさんが燃えまして…」

 「そりゃ不死鳥だし燃えることも…あれ?この焦げ跡ってフェニの炎で?」

 「はい…」


 テーブル上の焦げ跡の正体は不死鳥フェニの炎。

 ただしそれはそれでちょっとした違和感。

 不死鳥の性質上、自ら炎を纏ったり放ったりは当然ある出来事。

 だが…今まで一度たりとも、フェニは望まぬモノを燃やすことはなかった。

 癒しの炎は傷つけるのではなく癒す為の炎であり、先ほどもそうであったように何かを焦がし傷付けることはない。

 更に通常の攻撃や習性上の炎であっても、余計なものを燃やす事無く今まではしっかりとコントロールされていた。

 時にはジャバやカイセの頭の上に乗った状態で炎を纏ったり放つこともあったが、一度たりとも二人の頭が燃えた事など無い。

 そんなフェニの炎がテーブルを焦がしたという不測の事態。


 「……それで、そのフェニは?」

 「今は兄が――」

 「戻ったぞー…お、カイセさん」


 するとそこへ、何処かへ行っていた様子のボイスが戻って来る。

 その腕の中には件のフェニの姿。

 だがそのフェニは…なんだかちょっと大きい(・・・)


 「うわっと」


 フェニはカイセの姿を見つけ、ボイスの腕から飛び立った。

 そして例の焦げ目の前に立ち、ゆっくりと頭を下げた。


 「グゥ…」

 「ん?いやまぁ謝罪は謝罪として受け取るけどまずは先に説明をして欲しいな。その体とかについても」

 「グゥー」

 「…成長?」


 全体図が見えハッキリとした今のフェニの体。

 目視すると確かに以前よりも一回り程大きくなっていた。

 その説明にフェニは、自らの体が育った結果だと告げる。


 「そもそも…言葉も少しハッキリしてる?」


 カイセは《言語理解(全) Lv.10》を持っている。

 これは要するにフェニのような人語を介することが出来ない存在とも、ある程度(・・・・)の意思の疎通が可能になる。

 ただしそこにも限度はある。

 まだ言葉を理解できない赤ん坊や、本能だけで生きている動物、思考や言語の存在しない植物は通じないし、言語を理解するだけの知能があってもその発達度合いによってやはり断片的になったりもする。

 

 そしてフェニ自身も、まだ再誕後の未成熟な知能。

 勿論他の相手に比べれば十分過ぎる知能ではある為に、単一的だがカイセも意志の疎通は問題なく図れていたが、単語を繋ぎ意志を汲み取る努力は必要だった。

 だが今のフェニは、その意志が以前よりも少しばかりハッキリと言葉に乗っている。

 今のやり取りも今までは『体』『成長』の単語だったのが、『体が成長した』と文が出来るぐらいに聞きやすくなる。

 ゆえに今回の事態に関して、フェニ自身が自ら大筋を語ってくれた。


 「治癒から帰ってきたら、魔力の制御がいきなり不安定になって炎が溢れた。炎は抑えようとしたけどちょっとテーブルを焦がした…って感じでいいのか?」

 「グー」

 「で、何とか炎が沈静化したけど、今度は体が熱くなり…え?水?風呂場で水浴びして来たの?」

 「子龍に言われて俺が風呂場に連れて行きました」


 その火照る体を物理的に冷ます為に水を浴びたいと思ったフェニだが自力ではまだ身動き取れず、更には当然人間二人には言葉が通じない。

 なのでジャバを通訳代わりに経由し、ボイスに水場に連れて行って貰った。


 「抱えてみたらすっげぇ熱で、《耐熱強化》がなきゃ抱えるのすらキツかったぐらい熱かった」

 

 それだけの発熱に慌ててボイスはフェニを運び、残ったベルとジャバはこの焦げ跡をどうするかで悩んでいたところにカイセが帰還したようだ。


 「で、水浴びを終えたら成長してたと。フェニ、体の方は大丈夫なのか?痛かったりとか」

 「グゥ」

 「大丈夫か…でも、ちょっと見てみるか」


 そんな成長?を果たしたフェニを《鑑定》で確認するカイセ。

 するとそこには、項目こそ増えてはいないものの明確な成長が見て取れた。




 個体名:フェニ

 種族:不死鳥(フェニックス)

 年齢:0歳

 職業:―

 称号:"聖獣"


 生命 500 → 600

 魔力 100 → 300

 身体 100 → 300

 魔法 100 → 300

 

 火魔法 Lv.3 → 6

 光魔法 Lv.1 → 3

 

 特殊項目:

 自動再生 Lv.10

 自動回復 Lv.10

 転生輪廻(真) Lv.10




 カンスト済みのスキルを除き、ステータスは出会った直後から急上昇。

 普通の成長だけでは説明出来ない見事に綺麗な上がりっぷり。

 そんなフェニに、腰の神剣が見解を述べる。




 『不死鳥としての転生前の、自身の起源の一つに触れた事で覚醒・成長が促されたのではないかと思われます』


 そもそも転生直後の不死鳥の成長は、普通の生き物の成長とは異なる。

 言うなれば〔思い出す〕〔取り戻す〕。

 前世で自らが持っていた力に、転生後に時間を掛けて戻っていく(・・・・・)

 ゆえに普通の地道な成長にはない上昇値を見せることがあるらしい。

 だがそれには切っ掛け(・・・・)が必要。

 

 『地下で確認した過去の自分の姿。あれがキッカケになったのだと思われます』


 初代勇者の遺産の一つ。

 賢者の巨石の向こうで見つけた当時の集合写真。

 そこに写されていた過去の不死鳥(フェニ)の姿。

 自分自身の過去に触れたフェニは、それをキッカケとして成長が促され、先ほどイエティを癒した炎による魔力行使が明確な刺激(スイッチ)となった。

 結果、フェニの負担を顧みない急激な成長に発展。

 一時的な魔力の漏洩・暴走によるテーブル焦がし、体温の急上昇。 

 キッカケから本来は数日掛けて露わになる変化が、この数分に一気に押し寄せてしまった。


 (それ自体は悪い事ではないと。ただ急だったせいで負担が掛かっただけか。とりあえず今は大丈夫みたいだし)


 事情を把握しきれぬボイスとベルがまだ困惑した表情をしていたが、元気そうにジャバとじゃれ合う姿を見て安堵し始めた。

 そもそも仲の良いジャバが一切慌てる様子がなかったのを見ると、ジャバも本能的に大丈夫だと理解していたのかもしれない。


 (まぁ大事でないなら良かった。焦げぐらいどうとでもなるし。でも…多分まだ今後も成長はするよな?)


 あの写真に写る不死鳥はもっと大きかった。

 あれが不死鳥の全盛期かは不明だが、少なくとも今後もフェニはあの大きさまでは何かをキッカケに急成長する可能性はある。 


 (フェニの過去物の取り扱いは要注意だな。早々出会う代物でもなさそうだけど)


 今回は問題なさそうだが、今後もそうとは限らない。

 なので出来ればフェニにはゆっくりと、時間を掛けて力を取り戻して欲しい。


 「…さて、大丈夫そうならここ片して飯にしようか」

 「ごはんー!」

 「グル!」


 焦げたテーブルは後々修復するとして、今は予備と手っ取り早く交換。

 全員ハラペコ状態なので、せっせと食事の準備を始めるカイセ。


 「あぁ、うん。まぁ体でかくなれば食う量も増えるよな」


 今までは小食だったフェニの食事量が倍になった。

 それでもまだ一人前よりは少なくて済むのだが、果たして今後はどうなるかである。


 

 


22/05/29

誤字のご指摘がありましたので修正しました。申し訳ありません。

頂いた誤字報告は確認次第対応させて頂いております。

ご指摘ありがとうございます。

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