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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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賢者の石の秘密のお部屋




 ――賢者の石。

 カイセの故郷である地球にも、主にファンタジーの領域の秘宝として名は存在していた特殊な石。

 題材によりさまざまだが、〔錬金〕により富を生む装置として、〔不老不死〕を成す生命の石としても語られるアイテム。

 とは言えあくまでも、地球に置いては全て空想上の物品、もしくは実現しなかった夢の産物としてしかない賢者の石だが…この異世界にも存在はある。


 この異世界での〔賢者の石〕は、過去に大国がこぞって実現を目指し…しかし断念した夢(・・・・・)の代物。

 世間一般には実在しない物として知られている伝説の石。

 そう言う意味では地球の空想と大差はない。

 だが現実に…この異世界には賢者の石は実在した。


 《聖女専用ゴーレム》に動力源として実装されていた〔賢者の石(偽)〕の存在もその証明の一つ。

 ステータス表示によりわざわざ(偽)と付いている以上は、偽物があるならば本物もある。

 本物が実現していない状態で偽物という表記は使われない。

 空想や目標でなく、明確な実物としての〔賢者の石〕がこの世の何処かにあるのだとカイセは認識していた。


 そんな中で…冒険者の兄妹【ボイス】と【ベル】が、その胸に神剣いわく本物の(・・・)〔賢者の石〕を携えて現れた。

 勿論カイセもそれ自体には驚いた。

 だが……あの時以上の衝撃を、カイセは今この空間、神剣の眠っていたあの広間の真下にあたる場所に辿り着き、その中央に据えられた巨大な(・・・)賢者の石を見て感じている。



 「(……やっぱり鑑定効かないんだけど、これ本当に賢者の石なのか?かなりデカイけど)」

 『はいマスター。ボイス及びベルの身にある賢者の石と同様の波長を発しています』


 神剣による肯定。

 この地下部屋の中央に据えられた石が本当に本物の賢者の石なのだと。

 勿論カイセとしても、ボイスとベルの目的地にあったものが賢者の石でしたという話自体には特に不思議もない。

 彼ら自身が心臓に賢者の石を持つのだから、このゴールも理解は出来る。

 だからこそ、驚きの要因のほぼすべてがその大きさ(・・・)

 カイセのイメージする賢者の石は、テニスボールや大きくともサッカーボールほどの大きさ。

 片手で持てる程度の代物を想像していたカイセの前には今…自分よりも大きい(・・・・・・・)賢者の石を驚きの視線で見つめている。


 (このサイズ…ワゴン車くらいの大きさあるか?マジの賢者の石ってそんなに大きいの?)


 賢者の石があったことよりも大きさにびっくりして見つめ続けるカイセ。

 その傍らで…この場所を目指した兄妹は、目の前の石にある事に気づく。


 「ベル…もしかしてこれって」

 「うん。おじいちゃんの石の…コレと同じ」


 巨大な賢者の石を前にして、ベルは荷物の中から石の欠片(・・・・)を取り出した。

 その淡く綺麗な欠片は、確かに目の前の賢者の石と同質。

 つまりは二人の心臓と同じ、賢者の石の欠片なのだろう。


 「じいちゃん、これを欠片って、昔に割ったって言ってたけど…もしかしてこの大きな石が?」

 「かもしれな…え?なにこれ!?」


 その直後、ベルの手にする石の欠片が蒼い光を放ちだす。

 するとそれに呼応するかのように、巨大な賢者の石も輝きだす。


 「なにこれ…引っ張られて…きゃ!?」

 「欠片が!?」


 そしてまるで惹きあう磁石のように、手にしていた欠片が引き寄せられ…抗えず手を離すベル。

 二人が持ち込んだがその欠片はそのまま、巨石に引き寄せられ取り込まれた(・・・・・・)


 『――マスター。二人を部屋から出すことを推奨します』

 「え?いきなり何を――」

 「んぁ!?なにが…!」

 「胸が…熱い!」


 神剣からの忠告。

 直後、ボイスとベルが苦しみだす。

 二人ともに胸を押さえながらその場に膝をつく。


 『心臓代わりの賢者の石が共鳴し、元ある場所へと還ろうとしています』

 「それって目の前の……悪い二人とも!すぐにここを出るぞ!!」


 意図を理解したカイセは急いで、兄妹を引っ張り部屋の外に出る。

 そしてすぐさま扉を閉めると…二人の苦しみも落ち着いてくる。


 「はぁ…はぁ…はぁ…」

 「いまのは…いったい?」

 「みんな、どうしたのー?」


 部屋の外で待機していたジャバ達は、慌てて戻って来たカイセ達に問いかける。


 ……彼らの持ち込んだ欠片は、あるべき本体(・・)のもとへと還った。

 するとその次は兄妹の心臓。

 彼らの心臓は本来の生身でなく、神剣曰く賢者の石の欠片が心臓の代わりを担っていた。

 その心臓が元の場所へ、彼らの体を離れて本体へと還ろうとするならば結末はロクでもないのは簡単に想像できる。


 「(部屋の外なら大丈夫なのか?)」

 『あの部屋の魔法陣、地面及び壁に刻まれていたものも含めて、その大半が石の影響を外に漏らさぬ為のものです。一種の封印、外への影響・内への影響を遮断するためのものだと思われます』


 それは一種の《封印》。

 だが…どうやらそれだけでもない様子。


 「(大半がって…あの魔法陣、他にも役目あったのか?大きくて複雑でぱっと見じゃ判別できなかったんだが)」

 『あれらの目的は二つ。〔石の封印〕の役目と、それとは別に封印の隙間(・・・・・)を通して、龍脈から引き出した僅かな魔力を通し増幅させ、必要な各所へと供給する式が組み込まれています。恐らく上の空間、〔迷いの森の霧〕などの〔この空間の運用・維持〕に必要な魔力の大半はこの石から引き出されていたのでしょう』


 魔法陣の内容は二つ。

 賢者の石そのものの実質的な《封印》ギミック。

 賢者の石の力には〔注いだ魔力を増幅させる〕ものがあり、その分の余地だけ封印に隙間(・・)を作り、この地の霊脈なり龍脈と呼ばれる〔世界の持つ魔力〕から引き出した少量の魔力を〔魔力増幅器〕としての石の力で増やして、この空間全体の維持に必要な燃料として運用していたようだ。

 初代勇者時代に作られたはずのこの場所、その入り口にある〔迷いの森の霧〕ギミックなど、それらが未だに燃料切れにならずに稼働しているのも、〔賢者の石〕を利用することで維持できていたからなのだろう。


 「カイセさん…今のは一体?」


 だがそれらの情報を手にしていない兄妹はただただ困惑するだけ。

 何処まで説明すべきか迷いつつ…まずは根本的な部分から確認する。


 「そもそも二人って…自分の心臓については知ってるのか?」

 

 

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