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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第六章:隠居賢者の隠しゴト
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新たな扉



 「――霧、ですか?」

 「この辺りには不思議な霧が立ち込めるんだ」

 「もしかして…この霧を記してた?あの地図は」

 「多分ね」


 カイセは冒険者兄妹を連れて、例の地図の印の場所へとやって来た。

 そこは予想通り、《迷いの森の霧》の出現地点周辺。

 一同の前には、予想通り時期外れの霧が生まれていた。 

 この霧は、あの勇者の秘密空間への入り口でもある。


 (一度目は勇者、二度目は聖女。次は…賢者の石、いや賢者関係か?)


 この辺りの霧は普段は一定の時期にしか現れないが、今までのパターンから何かしらの条件でより特殊な、あの場所の入り口としての霧が出るのは分かっている。

 そして今回のその条件らしき要素は、やはり兄妹が胸に秘めた〔賢者の石〕なのだろう。

 伝説の物品。

 そもそも存在自体が信じられていなかった点では、確かに実在すると知られていた勇者の神剣よりも異質な存在。

 この霧が何に反応したかと問われて、まずそれこそがと思ってしかるべきだろう。


 「二人とも、はぐれる可能性があるからどっか掴んでて」

 「あ、はい!」

 「そんじゃあ…よっと」


 カイセの忠告を聞いたボイスとベルは、すぐにカイセの手を取った。

 別にローブでも掴んでくれればよかったのだが、右手はボイスと繋ぎ、左手はベルと繋ぐことになった。


 (……なんだこの状況?)


 築けば両手に兄妹を。

 そして頭の上には子龍と不死鳥。

 なんだか締まらないポジショニング。


 (まぁカッコつける意味もないしいいや)


 誰が見ている訳でもないのでカッコつける理由もない。

 気にせずそのままゆっくり歩く。

 

 「…あれ?今、光が」


 そんな中で、ベルが霧の中に小さな光を見た。

 恐らくは〔光虫〕。

 霧だけでなくその目印も出て来たのならやはり兄妹は当たり(・・・)なのだろう。 

 そのままゆっくりと霧の中を歩んでいると…気付けばあの場所、洞窟へとやって来た。


 「…え?」 

 「なんだここ!?」


 森を歩き、霧の中を進んでいたら気付けば洞窟の中。 

 何も知らない兄妹が戸惑い慌てる。


 「カイセー、ここどこ?」

 「あ、そうか。ジャバもここ初めてか」


 それとは別に、頭の上のジャバも初見だったのを思い出す。

 ただジャバは特に慌てる様子もなく、危険な雰囲気も無い為まったりと尋ねて来る。


 「ここはまぁちょっとした隠れ家みたいな場所だな。龍の里の…あ、ジャバはあの時、別行動だったか」


 龍の里でもちょっと似たような秘密基地は見ているのだが、思い返せばあの時はジャバは別行動だった。

 なので初代勇者がらみの隠れ家を見るのは始めてなジャバ。


 「龍の里…ってあの龍の里か!?」


 なおその不注意な言葉に反応する少年が一人。


 「龍の里って、龍種が…すげぇ龍達が住んでる里だよな!?カイセさん行ったことあるのか!?」


 何やらテンションの高いボイス。

 男の子として、やはり龍というものに一定の憧れを持っている様子。

 目の前の見た目普通の洞窟よりも、カイセの頭の上の威厳のない実物の子龍よりも、カイセが出したある種伝説の龍の里の話題の方が気になるようだ。


 「はい兄さんそういうのは後。今はここの事が優先」

 「いててて…分かってる!だから耳引っ張るなよ!?」


 そのプチ暴走を妹のベルが強制的に宥める。

 仲が良いのは良い事なのだが、ここが彼らにとって未知の領域であることはちゃんと認識して欲しいものだ。

 冒険者としてはもっと周りを警戒して欲しい。


 「それで…ここは何処なんですか?」

 「森の何処かの洞窟。正確な座標は不明。あの霧が一種の転移装置みたいなものだと認識してればいいかな?」

 「じゃあ…あの地図は正確には霧の、その先にあるこの場所への手がかりだったんでしょうか?」

 「霧による視界不良・感覚阻害の要注意危険地帯として警告で付けた可能性もゼロじゃないけど、危険って意味なら他にもこの森にはヤバいとこあるし、なのに目印があそこだけってなるとやっぱりココ目当ての目印だったって可能性の方が高いと思うな」

 「ここがじいちゃんの地図の…」


 改めて兄妹は周囲を見渡す。

 だがそこはまだ目新しくもないただの洞窟。

 ここはまだ入り口、目指すならこの先。


 「先に進もう。何かを探すにも、帰るにも、この先に進まないとどうしようもないから」


 そうして一同は再び歩みだす。

 一本道の洞窟をただ静かに歩み進む。

 その静けさに、流石に兄妹も緊張感を出している。

 杖をしっかりと握り、横道はないがそれでも周囲を睨み続ける。

 そして――


 「さて、ここが目的の広間なんだけど…何か変化はあるかな?」


 そして辿り着いたのは開けた空間。

 かつてその中央には神剣が眠っていたあの広間。

 

 「なんだここ…」

 「こんな広い空間が…あれ?」

 「ベル?どうした?」

 「兄さん…あそこ、何か感じない?」

 「あそこって…あれ?なんか変だな」


 するとベルが何かに気付く。

 やはりカイセの感覚には引っ掛からない何かを感じ取る兄妹。


 「変なのって何処だ?」

 「あそこです。あの辺りが」


 ベルの指差す場所へと向かう。

 そこは見た目には只の岩壁。 

 聖女ゴーレムの眠っていたあの場所と同様に、見た目には何かがあるように見えない。

 でも何かがある(・・・・・)


 『マスター。二人の手をあの辺りに触れさせてください』

 「(何か見つけたのか?)」

 『いえ。今回は何の要求も来ていません。この場の鍵を当剣は所有していません。これはあくまでも推測からの提案です』


 前回にはあった二重鍵。

 神剣の持つコードと、聖女適性。

 だが今回は神剣に出番は求められていない。  

 

 「…二人とも、ちょっとその壁に手を当ててみてくれないか?」

 「え?あ、はい。わかりました」

 「良し!せーので振れるぞ」

 「うん――「「せーの!!」」


 こうして兄妹は息の合ったピッタリのタイミングで岩壁に手を振れた。

 すると…その岩壁の一部が変色(・・)する。


 「どうやら当たりみたいだな」


 そして一同の前に〔扉〕が現れた。



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