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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第五章:めちゃくちゃダンジョン攻略(?)記
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白銀と黒鉄




 「――こんにちはカイセ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 女神たちとの面会の後。

 カイセがやって来たのは教会の一室。

 聖女ジャンヌのお部屋であった。


 「あぁ、ちょっと話を――もしかして忙しい?」

 「まぁ暇ではありませんが…はい終わりました」


 机の上で何やら書き続けていたジャンヌ。

 しかしすぐに書き終えたようで、紙を束ねてカイセに向く。


 「さて、では本日のご用件は?」

 「あぁ、まぁ今回のお礼をしに来ただけなんがんだが、あれは本当に助かった。まじでありがとう」

 「なるほどあれですね。どういたしまして…ですが私は聖女としての役目を全うしただけですので。まぁ……今回の《神託》はちょっと本気で戸惑いましたけど」


 ジャンヌは苦笑する。

 今回のダンジョン騒動、本来聖女ジャンヌは関わる予定は全くなかった。

 しかし女神直々の《神託》によって彼女も少しばかり協力者となった。

 

 「まさか女神様直々にアリバイ作り(・・・・・・)に協力を要請されるとは思いもしませんでしたよ…記録に残せませんよこれ」


 女神から聖女への協力要請。

 それはアリシアのアリバイ作り。

 不測の事態にてダンジョンに転移してしまったアリシア。

 それは家族にも知らされぬまま、ダンジョンの内外の時間差により数日無断で留守にすることになった。

 当然、家族がいきなり消息を絶てば騒ぎになる。

 その上で最終的な行き先がカイセの家だと判明すると、それはそれでまた怪しい疑いも生まれる。

 そんな騒ぎを起こさぬために、聖女は消息を絶ったアリシアが『所用で聖女の下にいる』というアリバイ作り(・・・・・・)を《神託》で承ったのだ。

 そのおかげで、現実時間的に数日振りに帰宅したアリシアは、心配はされたもののそのまますっと家族に受け入れられた。

 勿論出かけ先だったカイセにあらぬ疑いが掛かることもなかった。


 「まぁアリシアさんは元聖女候補ですし、急ぎの残務処理が起きたと言えば素直に納得してもらえたようですけど……なんでしょうね?お二人は女神様公認で駆け落ちごっこでもしてたんでしょうかねぇー?」


 今度はニヤニヤと笑みを見せるジャンヌ。

 当然ながら彼女にはダンジョン騒動については伝えられていない。

 彼女視点で見れば、カイセとアリシアがそういう方向のお出かけをしたようにも捉えられなくもない。

 勿論そんな個人的な事で神様が神託を降ろす訳もないので、違うだろうと分かっていてのからかいである。

 

 「ところで…なんだかダンジョン公開式典でトラブルがあったようなんですが、お二人は特に問題はありませんでしたか?」

 「…ん?」

 「アリシアさんとの屋台デートは楽しかったですか?せっかくの締めの式典観覧があのような事になって残念でしたね」


 更に追撃でからかってくるのだが…そもそも行き先などはカイセも神託も伝えてないはずのに、どうしてこうも具体的に位置や行動が割られているのだろうか。

 恐らくあの場に聖女の伝手があったからなのだろうが…そもそもこの手の情報収集能力は、本当に聖女に必要な技能なのだろうか。

 

 「……で、お礼の話なんだが」

 「はい」

 「とりあえず、お礼の贈り物(・・・)があるんだけど…受け取ってもらえると有り難いんだが」

 「あらまぁなんでしょうかね?」

 「はい、これ」


 ドンと、この部屋に小さな衝撃が伝わっていく。

 カイセがアイテムボックスから取り出した物体。

 それは白黒のゴーレム二機(・・・・・・・・・)

 元々の本題ではあるが、からかいの仕返しに遠慮せず押し付ける。


 「これお礼。聖女専用機でもあるから素直に受け取ってくれ」

 「………なんですかこれ?」


 ジャンヌから笑顔が消え無表情になる。

 目の前に現れた白銀のゴーレムと黒鉄のゴーレム。

 高レベルの《鑑定》を持ち、尚且つ《聖女適性》を持つ彼女には余すことなくその中身(・・)が見えているだろう。





 個体名:白銀(しろがね) / 黒鉄(くろがね)

 種族:人造ゴーレム

 年齢:―

 職業:守護騎士/未登録ゴーレム

 称号:"守護聖騎士"


 耐久 650

 魔力 400

 身体 650

 魔法 400


 魔法(全) Lv.5


 特殊項目:

 剣魔模倣(ケンジ)


 賢者の石(偽)

 ・自動修復 Lv.4

 ・魔力回復 Lv.4


 

 マスター登録制限/必須事項

 ・《聖女適性》Lv.5以上

 ・《鑑定》

 ・《星の図書館アクセス権限》 


 起動コード〔※※※〕認証済み/マスター登録待機




 「なんですかこの怪物ゴーレム」

 「初代勇者の作った(・・・・・・・・)聖女専用ゴーレム」

 「またとんでもないものが…」


 頭を抱える聖女ジャンヌ。

 目の前にあるのは初代勇者絡みの遺物(レリック)

 《勇者の聖剣》のように、常識の中では現代技術で再現不可能とされた道具。

 ゴーレムとしてはあり得ないステータス。

 刻まれた勇者ケンジの名。

 それだけで見る眼を持つ者にはハッキリ本物と判断できる。

 

 「これはどこで?」

 「森の奥」

 「また面倒なところに…まぁだからですかね」


 まず前提。

 そもそも勇者が残した聖女専用ゴーレムは一機(・・)だ。

 

 ――最初に見つけたのはダンジョン内。

 心象投影された魔境の森の再現階層。

 その奥、再現された迷いの森の奥の洞窟。

 剣型の中ボスと戦ったあの場に見つけた〔ブラックボックス〕。

 その中身は勇者の残した空間。

 そこで見つけたダンジョン複製版の〔守護聖騎士ゴーレム〕。

 これが何とドロップ品(・・・・・)として、ダンジョンから持ち帰ることが出来てしまったのだ。



 『いえ要りませんよこんなの!扱いに困ります!!』


 元々仮の主だったアリシアに押し付けようとした一品だったが、完全拒否されてしまったのでカイセが預かることになった一品。

 ただ…その時カイセは思った。


 『もしかして…本物の森にも眠ってたりするのか?』

 

 ダンジョン(複製)の森にあった空間。

 もしやと思いアリシアに協力して貰い、帰還後に二人で魔境の森を彷徨った。

 すると条件を満たしたのか、神剣の一件以降は現れることのなかった〔迷いの森の霧〕が出現し、二人は本物の洞窟へと足を踏み入れた。

 そして……やはり同じ場所に、本物の勇者の空間を見つけ、そこからオリジナル(二機目)のゴーレムを回収した。


 『どうするんですかこれ?』

 『とりあえず、せっかくだから直す』


 回収した二機は共に破損状態。

 それをカイセは神剣の力を借りて修復。

 ついでに見分けを付けるために、それぞれ白と黒を主色に塗り替え。

 併せて名前もリネームし、完全同型同種の二機は、中身は同一だが見た目はそれぞれ白銀と黒鉄の装いにリメイクした。

 それがこの〔白銀〕ゴーレムと〔黒鉄〕ゴーレム。

 図らずも二機になってしまった、初代勇者の遺物・聖女専用ゴーレムである。


 


 「で、見つけて修復したはいいけど、聖女専用だから使い道なくて。こういうのってバラすのも勿体ないし、折角だから助けてくれたお礼にあげます。ちなみに受け取り拒否されたら匿名で教会に寄付してきます」

 「先んじて脅し掛けてきますね。こんなの表に出したらどんな騒ぎになると思ってるんですか…分かりました。受け取らせていただきます」


 初代勇者の遺物であり、現状最強のゴーレム。

 教会の一つの象徴である聖女の手にする圧倒的武力。

 そんなものの存在が表沙汰になれば騒ぎにならないわけがない。

 それの騒ぎを嫌って、聖女ジャンヌは自分のもとで封をする事にした。


 「……まぁ良いです。代々聖女に受け継がれる秘宝として次代の聖女に受け継がせましょう。でも教皇様には報告しないと、一体どこで見つけたことにするのが適切か……」


 ぶつぶつと処遇を計算するジャンヌ。

 仕事は片付いた様子なのに、新たな仕事を押し付けたようだ。

 なおその聖女様も、結局は次の聖女に押し付ける気満々のようだが。


 「あ、これ起動コードの写し。今はもうマスター登録待ちの状態だけど誰かに引き継ぐ時は再入力が必要だから無くさないように」

 「これもまた厳重な管理が必要に…むしろこれは教皇様に預けて多面で…」

 「そう言えば、次代の聖女で思い出したが、新しい聖女とか代替わりとかってどうなったの?」

 「え、あぁ。聖女候補の準備は順調ですから、まぁどんな遅くとも一年以内には交代することになりますね。早ければ次の遠征が私の最後の大仕事になりますね」


 聖女の代替わり。

 アリシアとの出会いの切っ掛けにもなった次代の聖女候補。

 アリシアではない聖女候補の修行は順調のようで、間もなく聖女ジャンヌからその大役を引き継ぐことになる。

 そうなるとジャンヌは正式に聖女を引退することになる。 


 「そうなったら引退した聖女ってどうなるの?」

 「引退聖女の道筋としては、多くは二つ。教会内の幹部職に移るか、完全に教会を離れてるかの二つが殆どですね。まぁ後者の理由は大体結婚が多く、私には築くべき家庭やそのお相手がいないので必然前者になりそうですが……」

 「何か不満や不安?」

 「いえまぁ正直今以上に色々と押し付けられる未来が見えてるので。そもそも何で聖女の私がこんな仕事してるんだろうって案件まで現時点で色々と担っている次第でしたが、これでも聖女の肩書に遠慮してる部分があるので、それが無くなると周囲も容赦がなくなるというか……」

 「教会の人、自分で仕事しろよ」


 教会の若干ブラックを垣間見た気がする。 

 まぁ元々アリシアがあんな目にあった時点でブラックは確定だったのだが。


 「とまぁ、あと少しの任期の内に身の振り方も決めねばなりません。なんならカイセさん、私を貰ってくれません?お相手いれば遠慮なく辞めれるんですけど?」

 「大人しくお見合いでも始めてください」

 「元聖女の肩書って、その辺にも面倒呼び込むんですよねぇ…」

 「たいへんだなー」


 やはり面倒の多そうな聖女の役目。

 カイセはそんな彼女を他人事として見ていた。

 だが…まぁその内しっかりと巻き込まれることになるのは、もはや定番とでも言うべきなのだろうか?


 

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