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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第五章:めちゃくちゃダンジョン攻略(?)記
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最終階層③/ダンジョンのラスボス




 「――ここが最後か」


 その地へと足を踏み入れたカイセ一行。

 この色々とめちゃくちゃなダンジョンの、最後の関門・最後の障害。

 〔ラスボスの間〕。

 今までよりも特に、数倍は広いこの部屋の中央には、これまた特大で緻密な〔モンスター陣〕が設置されている。


 「シロ」

 「分かってる…そい!」

 

 ビターン!という効果音は現実でも本当に鳴るらしい。

 引きずって来た簀巻きの便乗犯を、適当な壁面に思いっ切り叩き付ける。

 すると壁に触れた瞬間、ぐるぐると巻かれた拘束具が壁に一瞬で張り付いて、粘着罠に引っ掛かった虫のようなオブジェが出来上がる。


 「いや…そこまで雑でいいのか?」

 「大丈夫大丈夫、分神でも神なのは変わりないから、この地上で死ぬことはないわよ。例え業火に晒された(・・・・・・・)としても、「めっちゃ痛い」で済むだけだから」


 と言って、あの便乗犯の守護を放棄した様子の天使シロ。

 だがそれはそれとして、勿論自分達の身は護る。

 

 「ほい、ほい、ほいっと」


 自らとアリシアには可能な限りの守護を重ね掛け。

 その上でカイセの背後に陣取る。

 

 「さぁ準備完了よ!」

 「その位置で良いのか?」

 「この辺がちょうど守りやすいの」

 「ならまぁ良いけど…それじゃあ始めるぞ」


 その言葉と共に、カイセは一歩二歩と前へと進む。

 すると特大のモンスター陣が起動する。

 やたらと荘厳で派手な演出(エフェクト)は一体誰の趣味なのか。

 だが今はそんな事よりも、この後の一撃(・・)にカイセは集中する。


 『出現確認。計測情報は全てお話の通り(・・・・・)です』


 あらかじめ手にした情報に偽りがなかったことを神剣が伝えて来る。

 

 ――便乗犯の分神。

 馬鹿をやらかしたこの存在は、現状このダンジョンを最もよく知る存在でもあった。

 そして天使シロは、そんな分神よりも現状においては高い権限と強制力を持つ。

 シロはその馬鹿から〔ラスボス〕に関する情報を引き出した。

 性能・ギミック・その先に仕込む罠の可能性。

 権限の差で偽りを語れない便乗犯に遠慮なくネタバレ(・・・・)をさせたのだった。

 もちろんその情報はカイセにも伝えられた。


 ……つまり、カイセはこのラスボスが何者かを知っており、どう攻略するべきかを既に検討済みなのである。

 完全初見ダンジョンのセオリーからすればあり得ない邪道っぷりだろうが、正直そんな事は言ってられない。

 ここで手こずれば手こずる程に、タイムリミットは迫って来る。

 間に合わなくとも人死には出ないだろうが、神の信用、国の経済、色々なものに大きな影響を与える。

 ゆえにカイセは、躊躇する事無く攻略本(・・・)へと手を伸ばした。

 

 【纏魔(てんま)神龍(しんりゅう) ジャバ・ザ・ドラゴン 脅威レベルEX】


 いい加減ジャバの名前を使うなとか、どこぞの何を参考にしたのかとか、レベル11の失敗を躱す裏ワザ使うなとか、色々と言いたい事はある。

 しかし今はそんな場合でもない。

 この大それたラスボスは、余計なあれこれ全て含めてまとめて吹き飛ばし一撃(・・)で仕留める。

 それがカイセらの出した、一番効果的な答えだった。


 「――《詠唱再開・待機解除》」


 目指すは文字通りの一撃必殺(・・・・)

 幸いにしてこの部屋は特に広くて頑丈。

 洞窟で心配するような崩落の可能性も無い。


 ――そしてこの場所は…便乗犯が自身の好き勝手の無茶を通す為に、ダンジョンで基本の〔いくつかの縛り〕が無効化(・・・)されている。

 本来は揺るぐことのない基礎。

 めちゃくちゃなダンジョンゆえに出来てしまった、根幹そのものの改変行為。

 ダンジョンオタクが聞いて呆れる好き勝手ぶり。

 その結果の一つが〔魔法の持ち越し制限〕の無効化。


 「《最大開放》」


 ダンジョンにおいては、持続型を除く魔法、特に《攻撃魔法》に関しては、各部屋を超えて持ち越せない基本的なルールが存在する。

 単純な話、安全を確保した前の部屋で大規模魔法を準備して、次の部屋へ突入・陣の展開による出現直後に最速で先制攻撃をするという手が封じられているのだ。

 無理に持ち越そうとすれば魔法はダンジョンの仕組みによりキャンセル(・・・・・)される。

 

 ――だが今現在、カイセの頭上には〔小さな太陽のような火球〕が生まれている。

 これは予め準備してあった魔法。

 便乗犯が外した縛りにより持ち越すことが出来てしまった、本来ならば発動までにかなりの時間を要するはずの《最上級魔法》である。

 しかもこれは念入り(・・・)に、カイセのステータス999の魔法・魔力をありったけをフル稼働させて、更には神剣による手入れ(・・・)もされた、手加減も一切ない、正真正銘のカイセの最大火力の魔法。

 かつてポカ女神が「痛いからやめて」と制止した魔法の上乗せ版。

 ……と言えば何だかしょぼく思えるが、神様すら嫌がる攻撃魔法。  


 「――《極炎撃滅天烈破》」


 それが目の前のラスボスへ向けて、出現直後に速攻で放たれる。 

 瞬間、視界が赤に染まる。

 確かな手応え、味方の声。

 だがそれらはカイセから遠のいていく。





 『……お疲れ様。後の事はこっちでやるから、貴方はゆっくり休んどきなさい』


 本当に残りのありったけを使い果たしたカイセの耳に、ただその声だけが確実に届く。

 カイセの魔力は空っぽに。

 魔力枯渇による肉体の安全装置が働く。

 そしてカイセは静かに眠りにつく。


 ――カイセが眠った後、一同は目的地とした最深部最奥へ。

 ダンジョンの宝物庫(・・・)

 そしてダンジョンコア(ゴール)のもとに辿り着く。







 「――だけどまぁ、俺はそんな大事な光景を全く拝めずに、眠ったまま外に(・・)帰ってきた訳だが」


 カイセが目覚めたのはその翌朝(・・)

 気が付けばそこはとある町の宿屋のベットの上。

 

 カイセが目覚めた時、そこは既にダンジョンの外(・・・・・・・)であった。


 


21/8/16

今月残りは投稿タイミングがいつもより前倒しでずれるかもしれません。

前倒しなので今までの二週に一回より遅くなることはありません。


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