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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第五章:めちゃくちゃダンジョン攻略(?)記
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その頃、地上



 「――本当に良かったのですか?国王様」


 王都王城、国王の執務室にて、側近の大臣は自らの主に問いかける。


 「それは何に対しての確認だ?大臣」

 「第三王子アルフォード様のお話です」


 国王の息子にして第三王子、つまりは王位継承の第三位である【アルフォード・サーマル】。

 かの息子の申し出に応えた、国王の判断に大臣は些か不安を感じている。


 「確かに初陣(・・)は成人までの何処かで済ませねばならない王族慣習ではありますが、それにしても第三王子の御歳では二年程、少しばかり早い上に事も早急ではないかと」

 「まぁ、それも分からなくはないがな。だがあの(・・)アルフォードがやる気になった今こそが最大の機会だと思わぬか?こちらからここに行けと命じるのではなく、あやつ自ら出たいと申し出るなど、次またあるかも分からぬ話だ」


 話題は第三王子の実戦初陣について。

 この国の男性王族は、十六の成人までに実戦への初めての出陣を果たすのが慣習になっている。

 何処ぞとも戦争の無い今の時代では、魔物の討伐への出陣・部隊指揮がメインとなっており、それに見合う場を成人までの何処かしらの機会に見繕うつもりでいた。

 しかし当の第三王子は、そのいずれの初陣を今この時に、最近話題の〔新たに生まれたダンジョン〕で行いたいと言い出した。

 魔物相手の初陣とはまた異なるが、既存のダンジョンでなく未だ未開部分の多い新規ダンジョンへの出陣ならば、その役割にも足る場となるだろう。


 「準備期間を鑑みれば確かに早急やもしれないが、通常の斥候による先行調査の役割もダンジョン調査隊のそれで代替出来ている。その他必要な目安も、何とも都合良く満たされている。それに加え、元より開放式典には王族の誰かしらを派遣する予定だった訳だが、その役割もアルフォードが引き受けてくれる。――ダンジョンでの実戦戦闘・部隊指揮に()の名代としての、この二つのデビュー戦を一度にこなせる絶好の場なのだ。正直断わる理由の方が少なかろうさ」


 ダンジョンでの初陣。

 そこに加えてダンジョン開放式典への王族の参加。

 更に言うと、第三王子は既に何度もパーティーなどの社交の場に姿は現してはいるのが、それは全て相応の地位を持つ者達の前での事であり、王族として一般庶民の前に出た経験はまだ一度もない。

 言うなればこれは国民への、第三王子の初のお目見えの機会でもある。

 それらを踏まえ、こうして色々と先の予定をこの日にまとめて片づけられるのは、当人にとっても周りにとっても都合の良い話であったのだった。


 「まぁ……そのやる気の根源(・・・・・・)に些か思う所は無くはないがな。お相手に迷惑が掛からぬ範囲ならば好きにさせて置けば良い」

 

 そうして初陣に向かう第三王子だが、そのやる気の源は、言ってしまえば色恋沙汰(・・・・)である。

 参加したお見合いの場で見染めた相手を、一度は自分を振った相手を、自分に振り向かせるための下準備である、いわば自分磨き(・・・)だ。

 「自分が未熟だから振られた」という思考は正直言って間違いではない。

 ただ、それ以外にも存在するだろう色々な要因を全く考察せずに放置して、自身を鍛えればチャンスが生まれると単純かつ短絡的に思い込んでいる節が第三王子にはある。

 なのだが…周囲としては我がままな面で扱いづらい第三王子が、日頃の鍛錬にもやる気になる変化を起こしたキッカケに水を差すのも忍びなく、とりあえず相手に迷惑をかけない内は触れずにいる方針になっているのだった。


 「……ちなみに、かの者(・・・)の研修の進捗は?」

 「順調に、もう間もなく終えるものかと」

 「となれば尚更か。正直言えば、アルフォードの想いが成就するに越したことはない。お相手としてかの者は家柄も良く特級の技能の資格を有し、外見内面ともに優となれば拒否する理由もない。相手がかの者であれば王としても父としても大歓迎ではある」

 「とはいえ正直、その脈は相当に弱いと思いますけれどね」

 「まぁそれはそれとしてだ」


 話をする二人からしても、第三王子の初恋に希望はほぼ無いという印象だった。

 とは言え人の心の問題ゆえに、完全にゼロとは言い切れない。

 万に一つ、億に一つであろうとも現実に本当に成し遂げたならば、とても大きな大金星だ。

 

 「とにかく、自分磨きは大いに結構。ただしそのお相手に迷惑が掛からないようにきちんと舵取りするように、側付き達に徹底させている。あとはあやつ次第だ。我らは出来る範囲の応援だけして、後は見守るだけでいい」





 ――そうして国のトップ達が噂する当人はその時、まずはと目指した目的地の目の前に立っていた。


 「これが本物のダンジョンか。実際目の前にそれがあるんだから、明日とは言わずに今すぐにでも突入してもいいんじゃないかと思うんだけど。駄目か?サンタ」

 「絶対にやめてくださいね、アルフォード様」


 この地方の、そして最寄りの町の名を取って〔アキレスダンジョン〕と名付けられることになった新たなダンジョン。 

 そのダンジョンを目の前にして眺める二人の男の姿。

 一人はこの国の第三王子【アルフォード】。

 そして今回その護衛を任された"三従士"の一人である【サンタ】。

 彼らは明日の式典参加、そしてダンジョン初陣の為に、アキレスの町に滞在していた。


 「明日か…まずは明日が始まり。そこから必ず彼女のもとへ、俺の道を繋げてみせる」



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