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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第五章:めちゃくちゃダンジョン攻略(?)記
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第二十二階層+α③/火の聖剣と迷いの森



 「――あぁ、出るんだな〔宝箱〕。ジャバっぽいの倒して出てくるのはだいぶ複雑だな」


 ジャバそっくりのモンスター達の群れを跡形も無く消滅させたカイセ。

 しその跡地には普通の宝箱が一つ出現していた。


 「いっそこれがお目当ての宝箱だったなら良かったんだが……偽物(ミミック)の反応は無し。それじゃあ開封と」


 カイセはその宝箱に手を掛け開く。

 すると中からは、見覚えのある一振りの剣が出てきたのであった。



 【火の聖剣 無名】

 〔全ステータス+25〕

 〔火魔法レベル+1〕

 〔火中活動時全ステータス+25〕



 「あぁそういやあったな聖剣シリーズ。その二本目…火属性の聖剣か」

 「聖剣…あぁ、ここもカイセさんと同じなんですね」

 「ん?どういう事?」

 「常識無視しておかしな存在(ところ)って意味じゃない?」

 「ですね」

 

 普通は滅多にお目に掛かれない聖剣という希少武器。

 それが目の前に、ましてドロップして個人の所有物として手に入れられるこのダンジョンの常識無視っぷりが、以前神剣の力とはいえ勇者の聖剣を作ってしまったカイセと同等のものだと認識しての発言のようだ。

 実際どっちも常識比較でおかしいのは確かなので、割と反論の言葉が出て来ない。

 なのであえて触れずに本題を進めて行く。


 「……にしても、まんま色違いって感じだな」

 

 その〔火の聖剣〕は、以前に手にした〔水の聖剣〕と瓜二つのデザイン。

 見た目的には、赤みがかっているか青みがかっているか、言ってしまえば色違いの範疇でしかないように見える。

 付随する特殊効果も、その属性が変わっただけで殆ど同じなのだが……


 「なぁ、これ火中活動(・・・・)とか書いてるんだけど、火中って…火の中って事だよな?火に囲まれた状態じゃなく直火(・・)に触れた状態」

 「多分そうじゃない?」


 水の聖剣の水中活動ボーナスはまだ分かる。

 環境や状況次第で、水中で何かしらの活動をする機会がゼロではない以上は、水中ボーナスは充分に出番のある効果だと思う。 

 だがこの火の聖剣の火中活動ボーナスは違う。

 火に囲まれた(・・・・)状況が〔火中〕として判定されるなら有用性もあるだろうが、言葉通りの火の中、直火で燃やされてるような状態を示すなら、全く無駄という訳ではないだろうが、それでも活躍の場が狭すぎる気がする。


 「……まぁ、状況が限られるボーナスはおまけとして、他は水同様に順当に使える効果だから良いのか?俺に使い道あるのかは知らんが」


 ひとまずカイセは手にした聖剣を、そのままアイテムボックスに仕舞う。

 先の水の聖剣がゴーレムの水対策に役立った事を鑑みれば、この聖剣もあるならあるで良い収穫だとは思うのだが……ジャバっぽいものを倒して出て来た代物だけに気分は少し複雑だ。


 「……ところでさ、水の聖剣の時のパターンから考えると、この先の階層に火炎地獄なりが待ってたりしない?行く先が海だったみたいに」

 「その先に備えさせる為のアイテムドロップ。そういう仕組みも無くはないでしょうけど…まぁ結局は行ってみないと分からないわね、とりあえず今はここのゴールを探すのに集中しましょう」


 そうして、心の中でこれ以上ジャバジャバと遭遇しない事を願いつつ、再び森を進み出した一行。

 結局その願い通りなのか、そこからの道中ではジャバジャバどころかモンスターと遭遇する事も無く進めた。

 だが代わりに、段々と周囲には()が立ち込めて来た。


 「――この感覚、来たか。〔迷いの森〕だな」


 立ち込める霧と、周辺への知覚が阻害される感覚。

 魔境の森にもあった〔迷いの森〕の現象。

 本来ならば脱出手段を講じるべきものであるのだが、むしろカイセはこれを待っていた。


 「ちょっとごめん」

 「ひゃ…あの、カイセさん?」


 カイセはアリシアの左手を握る。

 この霧の中を対策も無しに進もうとすると〔迷いの森〕の言葉の通りに、そのままでは感覚を狂わされて何処へ進んでしまうか分からない。

 カイセのように霧のジャミング(妨害)よりも高位の感知系の魔法を展開しているならばこの霧の中も道を迷わずにいる事ができるが、流石にアリシアにはそこまでの術は無いはずだ。

 アリシアを迷子にしないように、こうして誰かが物理的に導く必要があった。

 

 「迷子にならないように、それなら私はこっちね」

 

 左手にカイセ、右手にシロ。

 アリシアの両手はしっかりと、二人に捕まれ守られる形になる。


 「……なんだかこの構図、家族三人親子のお出かけみたいになってるわね」

 「私が子供で、お二人が夫婦ですか?」

 「年齢的には親子というより、兄妹におばあちゃん(・・・・・・)て感じが――痛い」

 「言っておくけど、天使に年齢の概念は無意味だからね?」

 「無意味なら気にする必要も――これどっから飛んで来てんだよ!?」


 何処からともなくカイセの額に感知不能(・・・・)デコピン(・・・・)のような衝撃が飛んできた。

 そして若干の怒気を内包する声。

 どうやら天使シロが何かしたようだが、流石という言うべきか、今の立ち位置や霧の影響もガン無視して正確に額のど真ん中にヒットする。

 一瞬の痛みだけど実害はないのだが、それが二発三発と続く。

 そもそも天使の制約はどうした? 




 「……あれ?この光(・・・)


 そうして霧の中をゆっくりと進むと、一番にアリシアがその光を見つけた。

 〔光虫(ホタル)〕のようにこの場を漂う光。

 目的地への案内人の登場。

 

 「ここまで再現されてるなら、やっぱりあの場所(・・・・)もここにはありそうだな」


 この場には勇者は存在しないが、こうしてちゃんとあの時の場所に同じ光が現れたのなら、やはり目的地は存在しているのだろう。

 しかも今回の光虫は、三人全員が認識できる。

 ちょっとした違い…勇者や資格者しか立ち入れなかったあの場所だが、このダンジョンではまた別の話のようだ。


 「まぁこれだけあって実は向こうは無いってパターンも無くはないだろうけど……試してみれば分かる。予想通りなら別の場所に跳ぶはずだから、逸れないようにしっかり握っててくれ」


 繋がるアリシアの手に力が籠められる。

 それを確認し、カイセは空いている左手でその光に触れる。


 ――そして景色は一変し、カイセ達の姿は森の中から消えたのだった。



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