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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第五章:めちゃくちゃダンジョン攻略(?)記
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第十一階層+α②/課題


 「――駄目だなこれ。見込みが完全に甘かったか」


 第十一階層の浜辺。

 カイセはいくつかの実験を終えた。


 「結局どうだったの?」

 「ゴーレム二機ともに水中活動(・・)は問題無し。ただ水中戦闘(・・)は今のままだと話にならないな」


 問題の主題は双子ゴーレム。

 その二機の目の前の海、水中での戦闘活動に対応できるかどうかであった。

 カイセはそれを確認する為に幾度か海の中にゴーレムと共に潜った。

 そして結果として、今のままではせっかくの高性能ゴーレム達も足手纏いとは言わないが、本来のメリットデメリットのバランスが崩れ、使用そのものを考えなければならないと判明した。

 ……ちなみに実験の間、やる事の無い天使シロは浜辺で日光浴をしていた。


 (いやまぁ良いんだけど。ゴーレム案件だとシロもやる事無いしその間に休んで貰ってても。だけど…いやまぁ深く考えなくていいや)


 若干釈然としない気持ちはあったものの、別に邪魔や損害がある訳ではないのでそのままモヤっとを放り投げるカイセ。

 そして改めて目の前の問題に向き合う。


 「耐性は充分だから海中でも問題無く動けるんだが、戦闘となると本来の機動は全くで大幅な戦力減になるな。そもそも水中戦闘を考慮してなかったから仕方ないと言えば仕方ないが」


 双子ゴーレムの製作には、当然ながら水属性魔法への耐性も織り込んでいる。

 だからこそ海中に投下しても壊れることは無く、水圧で潰れる程ヤワには作っていない。

 ただ…水中での〔戦闘〕は想定外であり、周囲全てが水の環境下、水の抵抗や水圧に負けないまでも人間の活動と同様にやはり相当の邪魔となり制限が入る海中での戦闘行動は、二機本来の戦闘性能を全然発揮できない事が分かった。

 一応は稼働に使われる消費魔力を採算度外視した力技を行えば、本来の戦闘性能・機動を確保する手も無くは無いが…そうなると魔力消費・燃費の面がとんでもない事になり、そもそもあえてゴーレムを運用するメリットが無くなってしまう。

 その辺を考慮すると現時点での回答は「カイセが一人で頑張れ」なのである。


 「いざとなればそれも仕方ないけど……節約や効率以外でも、物理戦闘能力はやっぱり備えておきたいんだよなぁ。俺が使える戦闘手段ってほぼ魔法だけだし」

 「カイセくんが使ってる水中活動用の魔法、それをゴーレムにも掛けてあげればいいんじゃないの?」

 「それも試したよ。見てみ?」


 カイセは自らが使用している魔法をゴーレムにも使用する。

 以前カイセ自身が魔境の森の沼で使用したのは単純な《防御魔法》の応用だった。

 だがこれはれっきとした《環境適応魔法》であり、酸素精製や周辺環境維持など、増加した魔力消費量と引き換えに水中でも地上同様の活動を長時間維持できる。

 それをゴーレムに使用するのは、今回の問題の一番簡単で分かりやすい解答だと思われるが……


 「あ、そうか。ゴーレム相手だと勝手が違う(・・・・・)のね」


 それを見たシロはポンと手を叩き一発で理解した。

 それほどまでにゴーレムに掛かった《環境適応魔法》は酷い(・・)ものだった。


 ――単純な話、この《環境適応魔法》は生物専用(・・・・)の魔法なのだ。

 人間、生き物が異なる環境下でも活動できるように組み上げられた魔法(プログラム)

 生物の為の魔法、ゆえに非生命であるゴーレムに付与すると、その動作がバグる(・・・)のだ。


 「適応魔法ってバイタル…生体のあらゆる情報も参照(トレース)した上で自動で微調整を行うから、生命とは仕組みの異なるゴーレム()相手だと、むしろその参照(トレース)情報が動作不良(バグ)の元になってしまうのね」

 「一応纏ってはいるんだけど、実際海に入れてみたら形だけで何の効果も得られなかった」

 「となると……そもそもゴーレム自体を改造(・・)してみれば?勿論それも魔力消費との相談になるだろうけど」

 「それも確認済み。魔力消費は案外安くて、確かに良いと思うんだけど…そこはもっと根本的な問題。単純に素材が足りてない」


 ゴーレムの水中戦仕様への改造。

 神剣に確認するとそれ自体は可能であり、消費魔力も思いのほか安く済む。

 だが…そもそも改造に必要な素材が足りない。

 魔力をどれだけ使おうと根本的な材料が無ければどうしようもない。

 ゆえに改造案は頓挫した……かに思えた。


 『マスターに提案があります。ゴーレムの改造に必要な素材の不足分を、【水の聖剣】を解体(・・)する事で確保する事ができます』


 そこに神剣からの提案が来る。

 先程手に入れた〔水の聖剣〕。

 あれには〔水中ボーナス〕としての特殊効果があり、水中での使用を考慮した聖剣であった。

 ゆえにゴーレムの水中仕様化に必要な素材を、そこから手に入れられる可能性があるのだろう。

 ……というよりも、既に神剣が『出来る』と断言した以上は、その水の聖剣があれば確実に素材は足りるだろう。


 「水の聖剣を素材にか……」

 「ん?あぁなるほど、確かに可能性はありそうね。はいどうぞ」

 「おっと!?」


 まだ打診すらしていないが、こちらの思惑を理解したシロはすぐさま〔水の聖剣〕を取り出し投げて寄越した。

 

 「一応、これの所有権は放棄したはずなんだけど…そんなあっさり渡していいのか?天使から人間への武器の供与とかって天使としての制約に引っ掛からないのか?」

 「もちろん普通は引っ掛かるわよ?だけどその〔水の聖剣〕はまだ所有者がカイセくんのまま、私はただ預かってた(・・・・・)だけの代物だもの。神様に渡すために私がカイセくんから一時的に預かっただけ。神様に手渡すまではまだその聖剣の所有権はカイセくんのまま。持ち主に返しただけだから制約は問題無し」


 と言うことらしく、一度手放したと思った水の聖剣は、あっさりカイセの手元に戻って来た。


 「……まぁそれで通用するなら良いんだが」

 「大丈夫大丈夫。制約破りはそもそも出来ないから、こうして渡せてる時点でルール的に問題ないって事だから」

 「そうか。それなら良いや。――そんじゃまぁ早速やってみるか」


 そうして素材の揃ったカイセは、神剣と共にゴーレムの水中仕様化を開始したのであった。

 

 

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