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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
プロローグ:異世界転生
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女神がポカして、異世界転生


 「おーここが〔異世界〕!俺の新天地……あれ?地面がな…いいいいいいいいいい!!」


 開幕早々に落ちていく【大野 櫂誠(オオノ カイセ)

 この異世界では【カイセ】。

 異世界での新たな人生のスタート地点は、まさかの〔空〕であった。


 「あの女神ッ!!また(・・)ポカしやがったな!!!」


 絶賛落下中のカイセの脳裏には、早くも走馬灯が過っていた。





 こんなことになったのも全ては女神のポカのせいだ。

 櫂誠(カイセ)は元々地球、日本で生活していた。

 だがその人生も、ある日突然終わりを迎えた。


 「申し訳ありませんでした!」


 櫂誠(カイセ)の眼前で深々と土下座を披露するのは、自称【女神】。

 折角の美人が台無しの、正にこれぞ土下座たる威風堂々とした構えだ。

 まぁ生土下座を見るのは初めてなのだが。

 実際に見ると引くものだなぁ。

 何でも櫂誠(カイセ)は、この女神の失敗(ポカ)によって死んでしまったのだと言う。

 ひとまず櫂誠(カイセ)は女神に向き合う形で正座をする。


 「……それで?」

 「元の世界に戻すことは出来ませんので、いくつか挙げた候補の中からお好きな世界をお選び頂き、そこを次の人生の舞台として生まれ変わって頂ければと……」

 「……とりあえずその候補とやらを見せて」


 正座は解かずに頭だけ上げた女神が、何かしら指で操作をする。

 すると何冊かの冊子が現れた。

 櫂誠(カイセ)が手渡されたのは、観光パンフレットのように各世界の情報を紹介するための冊子数冊だった。

 この状況自体は半信半疑ではあるのだが、事実として死に際の記憶も感触も残っていた櫂誠(カイセ)は、少なくとも既に死んでいるという事実には信憑性を感じていた。

 となれば後は〔次〕の事を考えるしかない。


 「……良し、ここだな。この世界だ」


 パンレットの中から選んだのは、ファンタジーにありがちな〔剣と魔法の世界〕であった。

 他にも色々あったのだが、〔超科学世界〕も〔原始文明世界〕も〔大宇宙世界〕も〔魔獣世界〕も選ぶ気にはなれなかった。

 ファンタジー脳と言われるかもしれないが、ここが一番無難な世界だと思ったのだ。


 「分かりました!では早速この世界へ転生を――」

 「待った!出来ればただ生まれ変わるのではなく、色々とオプションが欲しい」


 せっかくの機会なので、物語定番の要求をしてみることにした。

 後から考えると、多分これが間違いだったのかも知れない。


 「オプションですか?本来はそんなもの設定出来な――」

 「俺が死んだのって誰のせいだっけ?」

 「――いんですがッ!今回だけ特別サービスですッ!!あまり大きな事は出来ませんが、出来る限り優遇させて頂きます!」


 女神を脅す人間の構図が完成していた。

 卑怯な言い方なのは自覚しているが、相手の不手際で無くした前世だ。

 せめて来世はまともに……そのために出来る限りの事をしておきたい。

 幸い櫂誠(カイセ)にはそのチャンスが与えられた。

 それを活用しない手はない。

  

 「とりあえず、どんな事をお望みですか?」

 「そうだな……例えばなんだが、今のこの姿のままで転生する事はは出来るか?記憶や人格も遺伝子もそのままに」

 

 普通に生まれ変わると言う事は、今のこの人格も記憶も、全て一度リセットされてしまう事だ。

 流れのままに生まれ変わるならば気にする余地も無い事だっただろうが、今の櫂誠(カイセ)は少なからず「自分が消える事」への恐怖を感じていた。

 

 「そうですね……因果を調整する必要がありますが……一人分なら何とかなりそうです。ただしその場合、両親や兄弟と言った血縁者が存在しなくなってしまいますが、それでも大丈夫ですか?」

 「あー…まぁ仕方ないな」


 新しい人生は孤独スタートだ。

 家族との触れ合いも、幼い頃の思い出も青春もスキップする事になる。

 結局体感としては〔転生〕よりも、〔異世界召喚された第二の人生〕と言った方が正しいだろうか。

 正直、今の人格と記憶を持ったままという部分は譲れないため、どこぞの何も知らない家庭に生まれるのも気が引ける。


 

 「それじゃあ早速転生を――」

 「ちょっと待った!この世界には【ステータス】や【適性項目】ってものが存在するんだろ?ここを少し調整出来ないか?」

 「……まさか!?全項目をカンストさせて、最強無双ハーレムを求めて――」

 「無いから。そんな面倒なもの必要としてないから。身の安全と生活の保証のために少し弄るくらいだ」


 パンフレットを見る限り、ステータスは身体能力系で上限数値999、適性や特殊スキルはレベル表記で上限10のようだ。

 

 「ちなみに俺の年齢での基本数値ってどのくらいなんだ?」

 「えっと…このくらいですね」


 女神がサンプルデータを見せてくれた。 

 どうやら普通の大人で身体能力は大体100ちょい。

 適性・スキルはあまり参考になるか怪しいが、2~3くらいにするのが良さそうだ。


 「そうだな……じゃあこのステータスにオール+100。適性系は付与できる限り全て付けて、それぞれのレベルは2でいいかな?あと状態異常の耐性は出来る限り高めがいいな」

 「謙虚なのか強欲なのかよく分からない中途半端な数値になりますね。項目が多くなっても分かりづらいと思うので、【魔法適性(全)】【状態異常耐性(全)】にまとめてしまっていいですか?」

 

 まぁ確かに、情報量が多すぎても見切れない可能性がある。

 簡略化してくれるのなら文句はない。

 だがアレは無いのか?


 「いいけど……魔法適性だけで、剣とか職業技能とかの適性はないのか?」

 「その辺りはあえて表記していません。全ての適性を明確に表示してしまうと皆がその適性に合わせた決められた道にしか進まなくなってしまう可能性があります……まぁ可能性というよりも、他の世界で実際にそうなったことがあります。なので伏せています。本当は魔法適性の項目も無くしたいのですが、魔法は指標無しに行使すると本当に大惨事になる可能性があるので仕方なく表記するようにしています」


 ドジっ娘の割りに神としてそれなりに考えてはいるようだ。 

 少しだけ見直したかもしれない。

 

 「そういう事なら、それで頼む」

 「【ステータス オール+100】【魔法適性(全)・状態異常耐性(全)がLv.2】の設定で……あ、耐性は高めなら、ここだけ+8して上限値にしておきましょうか。後はおまけで【言語理解(全)】【鑑定】【アイテムボックス】もLv.2で付けておきましょう」


 おまけが付いてきた。

 確かに言語に関しては完全に失念していた。

 アイテムボックスは……どうやら四次元ポケットの類のようだ。

 Lv.2なので容量制限はあるが、普通に鞄を持ち歩くよりも多く、異空間に物を収納出来るようだ。


 「ありがとうございます。――出来れば知識系も少し欲しいんですが」

 「確かにあったほうがいいですかね。なら【〔星の図書館〕へのアクセス権限】もLv.2で付けておきましょう。いつでもどこでも行ける、ほぼ全ての知識を納めた精神世界の図書館です。あくまでもアクセス権限だけなのでご自身で調べ物をして貰う必要はありますが、時間経過が現実世界よりも遅いので急な状況にも対応できなくはないと思います。あ、当然レベル以下の本は開けませんので」


 このドジッ娘、割と大盤振る舞いじゃないのか?

 もしや女神なのでは?……女神だった。


 「とまぁ、こんなものですかね?もしどうしても困ったことがあれば現地の〔教会〕でお祈りをしてください。稀に私と話が出来ると思いますから」

 「何故稀」

 「こう見えても忙しいのです」

 「自分の失敗の尻拭いに?」


 女神が半泣きになってしまった。

 あながち大外れでもなかったようだ。

 とりあえず平謝りを続けて事なきを得た。

 

 「それでは……この度は申し訳ありませんでした。せめて、貴方の次なる人生が幸多いものであるように……それではいってらっしゃい!」




 ――と、言った感じに色々と貰って、この異世界にやって来たのだが……現在地は空。

 順調に落下中。

 恐らくあの女神がまたポカをしたのだろう。

 流石に空中スタートは無いわ。


 「高いなー長いなー……ふむ、どうするか。あ、せっかくだから〔魔法〕を使ってみるか!適性はあるから使えないことはないはず……えっと図書館で……よし分かった!《風よ》!」


 試しに〔魔法〕で風を操り、落下先の地面に向けて叩き付けてみた。

 使ったのは星の図書館で調べた〔風の基本魔法〕。

 風を少し操るだけの魔法だったはずなのだが……


 「――へ?」


 落下予想地点周辺の木々が、大型台風のような暴風と共に吹き飛んだ。

 そしてその状況に呆然としたまま、受け身も取らずに地面に激突した。

 

 「……なんで無傷?」


 《風》の反動でだいぶ減速はしたが、カイセは一切の怪我も無く完全な無傷であった。


 「……ん?なんだこ……れえええええええええええ!!?」

 「五月蠅いぞ虫。我が眠りを妨げよってからに……望み通り踏みつぶしてやろう」


 目の前に現れたのは、真っ黒で巨大な龍。

 【鑑定】がその正体を知らせてくる。




 個体名:ジャバドージャ

 種族:邪龍

 年齢:265

 職業:―

 称号:災厄最凶の龍/七星龍(闇)/魔境の主


 生命 666

 魔力 666

 身体 666

 魔法 666

 

 魔法(闇) Lv.9

 魔法(火) Lv.7

 魔法(龍) Lv.9

 

 アイテムボックス Lv.4

 邪堕 Lv.9

 


 

 パンフには勇者の情報も書かれていた。

 伝説の勇者だって自身300~400超えを専用の伝説装備で600~700くらいに引き上げているような世界だよここは。

 これってラスボスなのではないだろうか?

 七星龍とかあるから幹部内の最強ポジか?

 少なくとも転生直後に遭遇していい存在ではない。


 「逃げ――」

 「られると思うか?」


 命の危機を感じ、足がすくみながらもカイセは星の図書館で、手当たり次第に本を漁っていく。

 この場から逃げる方法。

 何とか許して貰う方法。

 ジャンル無差別に漁る中で、一つの魔法に行き着いた。

 やれるだけやって、ダメなら死後の世界で女神に文句を言いに行こう。

 カイセはその、見つけた魔法を唱える。


 「堕ちし者を救いし光…邪悪を滅する聖なる光…その者の魂を解放せよ!《神聖邪払滅破》!!!」


 何やら無駄に文字数の多い名前の魔法を発動した。

 普通なら大人にもなって若干恥ずかしいと思うような詠唱ではあったが、背に腹は代えられないしそんなことを考えている余裕も無い。

 そして周辺は眩い光に包まれる。

 カイセ自身もその光に視界を塞がれていたが、視界が復活し気が付くと目の前には……


 「――あれ?ぼく、何をしてたんだっけ……」


 先程の邪竜が居なくなり、代わりに小さな子供?の龍がいた。

 ここでカイセは違和感(・・・)を感じた。

 そして自分自身(・・・・)を【鑑定】してみると――

 

 


 個体名:カイセ

 種族:人間(男)

 年齢:24

 職業:未設定

 称号:到達者/魔境の主/(転生者)


 生命 999

 魔力 999

 身体 999

 魔法 999


 魔法(全) Lv.10


 状態異常耐性(全) Lv.10

 言語理解(全) Lv.10 

 アイテムボックス Lv.10

 鑑定 Lv.10

 星の図書館アクセス権限 Lv.10



 

 「――あ、なるほど。あのドジッ娘(めがみ)がまたポカしたな?」


 どうやら女神のポカのせいで、カイセのステータスはカンストしてしまったようだ。 

 相手の弱みに付け込んでちょっと欲張った罰だったりするのだろうか?


新作の投稿を開始しました。

よろしくお願いします。


初日はこの後21時にも一話分投稿されます。


異世界で女神様の使い魔になりました。(https://ncode.syosetu.com/n4470fc/)と並行して投稿していきますので、お時間がありましたらそちらもよろしくお願いします。

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