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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
何かが変わる予感
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4 フェル



犬は下腹部が濡れていた。

だから馬車の中でリドレイは、膝を濡らすことになった。


「冷たくはない?」

「ううん、平気。だってフェルは生きてるもん」

「そう」


リドレイはその犬に、ファル、という名前を既につけたらしい。

なぁフェル、と言いながらリドレイが毛並みを撫でると、犬の耳が小刻みに動いた。


(そういえば精霊って言ったたような…)


しばらくしてリドレイの声が聞こえなくなった。

リドレイが寝ているのを見ているうちに、アリコスもいつのまにか眠りについていた。


アリコスはセサリーの奮闘によって起こされた。

何度も、アリコスお嬢様、と呼ぶのだ。


「あっあらおはよう」

「おはようございます…」


だからこそセサリーは少し疲れた様子だった。

リドレイも同様にして、マッチによって起こされたが、フェルは相変わらずリドレイの膝の上で寝息を吐いている。


「どう…しましょう」

「フェル、おきて」


リドレイが言ってもフェルは眠っている。

仕方がないのでリドレイは、フェルを抱き上げて母屋へ入って行った。


「ただいま帰りました」


アリコス、リドレイが並んで言うと、フィオラが大階段から降りてきた。


「おかえりなさい。どうだった?」


どうやら興味津々のようで、アリコスは何事かと思ってハッとした。


「みんな喜んでくれました」

「そう。やっぱり好評だったでしょう」

「はい、ケーキが思いの外一番人気でした」


今度はリドレイが答える。


「そうよね、すごく美味しいものね。そうよ、さっき待っている間にハワードとも話していたのだけど、ケーキに生クリームを塗るの、どうかしら」


(それはつまり…ショートケー…いちごが足りない)


アリコスは気がついて、素早く言葉を選んで資金運営を頼もうと思った。

次いで、リドレイに蜜柑などもあるか聞こうとする。


「すごくいいと思います。ですがそうすると甘ったるくなってしまいそうですよね」


アリコスは周りくどいと思いながらも、考えるフリをした。

しかし少なくとも心は踊っている。


「何か酸味のあるものが欲しい気がします。ベリーズ、グーべ…あとは柑橘類もいいですね」


それぞれ以前、随分昔に感じられるが、メイト達に再開したばかりの頃、厨房で鑑定したものを懸命に思い起こして言った。

普通に採取して得られるベリーズはストロベリー。

B級モンスターグズベリーのドロップアイテム、グーベはクワノミ。


「いくらか用意させるわ、レティア。いる?」

「はい、奥様」


フィオラ付きのメイドであるレティアは、ドアの前に立つジムの隣から、大階段の途中に立つフィオラの前に進み出た。


「聞いたたわよね。用意して」

「はい」

「アリーお姉様、柑橘類というと僕の思いつく限り沢山あります」

「リドレイ、あとでリストにしてレティアに渡して」

「はい」


レティアはうなずいて見せた。


「クゥーワァーーン…」


あくびのような声がして振り向くと、先程アリコスもリドレイが待っていたようにフェルが目を覚ましていた。

前足と背筋を伸ばして顎の開く限りに息を吐き、目を瞑る。素直に可愛いと思った。


「お母様!」


アリコスが言うより先に、リドレイが急遽バスケットに入れられていたフェルを抱えてフィオラの方へ歩み寄る。


「あの、この子、飼ってもいいですか?」

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