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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
何かが変わる予感
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1 お出かけの朝




アリコスは浮わついた気持ちで目を覚ました。

目の前にケーキの甘い匂いが広がっている気がする。


「セサリー!」


叫べる限りの大声で、セサリーを呼ぶと、普段の格好でセサリーは現れた。


「少し早いですが、お目覚めですか」

「ええ。楽しみで仕方ないの。遠足にいくような気分」

「遠足?」


そうだった、私はあまり外出をしないでこれまで過ごしてきた。

確かな名称はありすぎてよくわからないが、それでも言及される内容ではない。適当にごまかそう。


「ほら、外出とピクニックを一緒にした感じいうのかしら?こないだのルードリックお兄様との外出を思い出したのよ」

「なるほど」

「とにかくっ!早く支度しましょ」


急ぎ足にワンピースに着替え、早足に母屋へ向かう。

ここ数日の運動で少し体力がついたのか、息切れはしないが、気にかけてみると若干の筋肉痛かもしれない。


………

……


「おはよう!」


ドバシンッ!!

うまく言えないが、強い音がして、エティは嵐が来たのを悟った。


「できましたよ」


エティがクレープの生地を大皿に広げて進み出ると、狐色の片面を見て、アリコスは満足げに笑った。


「上出来ね。ケーキはもう少しってところかしら?」


遠慮がちにオーブンを見やると、まだ生地は入っていない。

おはようございます、という声に振り向くとメイトがボールをかき混ぜながら挨拶をしていた。


「まだ時間はありますよね?」

「ええ。特に着く時間まで明確に予約しているわけじゃないけど、リドレイとは十二時に外へ出ると約束してるわ。そうね、あと3時間?」

「じゃあ、余裕を持って間に合いますね」

「そうだアリコスお嬢様。あの、どのくらい量持ってきますか?事前に大量の粉は来てるんですけど、あんまりたくさんやるのもなって話してて」

「そう?言ってなかったかしら?」


セサリーを見やると、セサリーは軽くうなずいた。


「一緒に食事をするのが、10数人なの。だからクレープは人数分。ケーキはそうね、3つくらい。餃子は…ああ。まだ作ってないみたいね、よかった。ほらお茶会におかずは少し、ふふふっおかしいでしょう?」


エティやメイト、セサリーなど厨房にいた数名はアリコスが上機嫌なのに気がついて、適当に合わせた。

するとアリコスはまた、ふふふっと笑う。


………

……


昼食は餃子だった。

普段より少しだけ早い、十一時にリドレイとアリコス、フィオラで食べる。

ハードは実は言えなかっただけで、アリコスが来た時にはすでに、餃子の生地を仕上げていたのだ。


「まぁこれはやはり美味しいわね。ギョウ?だったかしら?」

「ふふふっ餃子です。今日はみんなにこれをお披露目する気はまだないんです。だってほら、お茶会におかずはおかしいでしょう?」


アリコスは先程厨房でやっていたように、繰り返す。


「確かにそれもそうだけれど…」


そう言いながら、フィオラはもう一つ餃子を取った。


「こんなに美味しいものを知らないなんて。そうだ、また行ってあげなさい。そうよ、それがいいわ」

「いいんですか!?」

「ああ、そうよね。セレルドがきっと許さないかも。お父様に聞いてみて」

「わかりました」


(少し期待を裏切られたような気持ちだけど、お母様もいいって言っているなら、次回はほとんど確実よね)


こうしてアリコスは二度目の訪問をする前から、次の計画を軽く進め始めた。

ちなみにこの間、リドレイは話について行けず、味見と称してクレープを味わって頂いていた。


………

……


今度もまた馬からの眺めはいいに違いない。

しかし今回は、乗馬が得意でないアリコスとリドレイ、そして魔法学一本のマッチという顔ぶれだった為、馬車が用意されていた。

用意されていた、というのはアリコスだけでなく、「そうでした…」との発言によればマッチもすっかり気付かずにいて、4日ほど前にマリコッタさんがお母様に伝えていたらしかった。


「いい天気ですね」


ともかく私たちは、ジムが馬を指揮する馬車で町は降りていく。


「こないだとはまた違うけど気持ちいいわね」

「景色、すごくいいんだね」

「ええ。リドレイもいつかルーお兄様の馬に乗せてもらったらいいわよ」


小窓から風に吹かれながら、アリコスとリドレイは向かい合わせに話す。

馬車は貴族が使うものだから、どうしても目立ってしまうが、私たちはまだお披露目もまだなので、誰もマントをかぶることはしない。

ただどうしてもシーマ達に身分をバラしたくはないので、事前にジムには、徒歩で十五分程離れた場所で止めてしてもらうことにしている。


「それも楽しそうだけど、僕はこれで十分だよ」


そういうとリドレイは、馬車の揺れを使って、アリコスの膝に座った。


「特等席だね」


リドレイの上目遣いの微笑みに、アリコスが心打たれている中、マッチは「そんなはしたないことをなさって」と言いかけて、口をつぐんだ。

そうだ、この幸せなひと時は私のためのもので間違いない。

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