7 護身術について 5
前日、不思議な題で投稿してしまってすみません。
ミスでした。以後気をつけます、すみません。
「そお?それはありがたいんだけど…。でもねぇ、やっぱり難しいと思うわ」
「いいですからっ」
「ぷぷっぷ」
かわいい声がする。
どういうわけか幼少期・アリコスの声はかわいい仕様だが、それ以上にかわいいのはリドの声だ。
「あはははは」
「リド、起きてたの?」
「うん。おもしろいから黙ってた。アリーお姉様の匂いで気持ちよかったし」
「そう。よろこんでもらえてうれしいけど、どこから?」
「えっとね、家宝ってとこから」
「なるほど。相当聞いてたのね」
「うん」
リドレイは悪びれもせずに天使のような笑みを見せる。
(あぁ。こいういうところが小悪魔っぽい)
念のため言うと、アリコスにとってリドレイへの今のところ最高の褒め言葉だ。もっとも悪気はないが今後も一応、口に出すのは控えておこう。
「リドレイお坊ちゃまは使ったの?あの、ポーション」
「まだっ。でも今日は使うかも。そしたらまた頂戴ね!アリーお姉様っ」
「え?うん。でき次第でいいなら」
「うーん…」
リドレイは顎に手を当てた、考え込むポーズをしながらアリコスを見上げる。
(上目遣いっっっ!かわいい!)
アリコスが胸が波打つのを感じていると、リドレイはそのまま笑って見せた。
「うん、もちろん。また沢山もらうから」
「えーーーっとそれはどうかな。結構作るの疲れるし」
アリコスはこのかわいすぎるリドレイからなんとか視線を外して声を出した。
しかし付け加えると、実際に問題なのは、お父様がまた山に入れてくれるかということ。
朝から行かないととてもあんな量は採れない。
「それにしても、もっと使えばいいのに」
「無理だよ。今、すごく大事にとってあるもの」
「やっぱりね。リドレイお坊ちゃまのならそうすると思ってたんですよ」
「マリコッタさん、いってたもんね。僕もね、えっとね、6本×2本分のポーションサイズのガラスの箱を発注してね?インテリア風に保管してる。でも数が足りなくてほとんどは空だけどね」
(リド…なんでもない笑みっ…かわいいっ)
アリコスは見てしまった。せっかく観賞に浸っていたのに、頰が…声が出そうだ。
そのツボを短略化させていうと、1ダースのポーションという言葉を聞いた時のマリコッタの推しのSレアカードを引いたような羨ましそうな顔と、『空だけどねっ』とリドレイが笑った瞬間の安堵した顔の差が…じわじわ頰にくる。
「本当はマクスがアリーお姉様に渡してた貯金箱と同じ箱が欲しかったんだけど、僕のおこずかいじゃ買えないからさ」
「ですよね。私も貯金はたいて買おうかと思ったんですけどね、さすがに夫に止められまして、泣く泣く金の箱に綿を敷いて保管してますよ」
「消耗品だからっ!!使って?…あとなんで貯金箱の話知ってるの?」
「アリーお姉様の事ならたくさん知ってるよ。聞いたらみんな教えてくれるし」
「私も使用人とのことなら相当知ってるつもりですよ。ここの使用人網は結束力がありますからね」
リドレイもマリコッタも随分自慢気だが、使用人と言ったら当然セサリーも入るし、マクスも入る。すると執務室でのことも、食事中も、第一倉庫のことも、部屋の中も全部わかってしまう。
(じゃあ私のプライベートは一体どこで保護されているのだろう)
考え込むフリをしてみたものの、無駄と決まっている。
答えはたぶんない。
高等教育受けられるし、食べ物には困らないけど、貴族って不自由だ。
空を仰いでいるアリコスを見て二人はふっと笑うと、ポーションつながりでまた話に花を咲かせていた。




