6 護身術について4
先ほどのマリコッタに比べるともちろん遅いが、ずっとこんなもんなんだろうと思っていた魔法の寄り道はずっとずっとよくなって、杖から真っ直ぐ進んでいく。そして人形の手に当たった。
掠ったわけではない。ちゃんと当たっている。
「まあっ」
「まあ!リドやったわね!」
マリコッタやリドレイよりも驚いたのは、何を隠そうアリコスだ。
そしてリドレイの信じられないとか、やっとできたとかの達成感を含んだ表情を見ると抑えきれなくなってリドレイの方にかけていくと、リドレイが手を伸ばしたこともあって、ぎゅっと抱きしめた。
「ほんとは肩を狙ったんだ」
「そうなの?でも十分よ、おめでとう!」
しばらく少し長いくらいそうしていたが、遂にアリコスがリド?と声をかけると、リドから返事がない。
「リド?」
心配になってもう一度声をかけると、後ろからマリコッタの声が聞こえた。
「もうすこしそっとしておいてあげてください。今日はこれで終わりにしましょうか。皆さんお疲れ様」
「「「お疲れ様でした」」」
三人が小声で言い終えると、早くもセサリーとマッチは革のワンピースを脱ごうとしている。
「今日は四回も打ってたでしょう。特にほら、四回目は相当集中していたし、お疲れのことでしょう。アリコスお嬢様の方に寄りかかれたから相当うれしかったんじゃないかしらねぇ」
そういってマリコッタはわらった。
微かに吐息が聞こえる。
(リドってば、寝顔もかわいい)
「そういえばアリコスお嬢様、回復が早いですねぇ」
言われてみればそうだ。あんなに痛かったのに、もう痛みを忘れていた。これもポーションのおかげだうかと思って、ふと気が付いた。
「休憩にポーションを飲んで…。そういえば私、マリコッタさんに自作したポーション差し上げましたっけ」
「ええもらいましたよ。マクスさんとセサリーから」
「それはよかったです。治りが早いのはそのおかげだと思います」
「随分いいみたいですね」
「ええ。ぜひ使ってみてください」
「いえいえっそれは無理ですよ。あれはうちの家宝ですからね?」
「家宝?」
(家宝って言った、この人?)
「ええ。それはそれは大事な。アリコスお嬢様からの贈り物でしょう。しかもアリコスお嬢様の作品だなんて、カルレシア公爵家のお屋敷で働いている人はきっと使えませんよぉ」
「そ、」
(それは困る。なにをするにも実用性第一。ほどほどに周りに引けを取らないくらいの見栄えはその次くらい。え?私上絶対理論」)
「それはいいすぎでは…」
「そんなことありませんよ」
マリコッタは目を細めて笑った。相当心地いい時の笑いだが、どこがツボか、アリコスにはわかりかねる。
「夫には使うのは、私の棺に一滴垂らすのが最初で最後よ、ってぇ伝えてますよぉ?」
「もっと使ってください。いつかまた差し上げますから」




