2 はじめてのお茶会
「コークスも誘ったんですがね。学園が忙しくて無理だと」
「ああそうですか、長男はさぞ大変でしょう。うちもルーが忙しい忙しいと、私より忙しそうにしていますから」
「メコッド様は学園はどうですか?」
お母様はよくある世間話をメコッドに回す。
「そうですね。たしかにAクラスより上は、みんな魔法にばかり打ち込んでいますね。でもうちのところは楽しいですよ。よく言えば和やか、悪く言えば危機感がない。少なくとも実戦向きではないですね」
メコッドはファムリス侯爵家が次男で、Bクラスだそうだ。
「そういえば、近々実戦訓練をこれから鍛えるかもしれないと友人達が噂していましたが、何かご存知ですか?」
それはつまり、近々戦争が起きるかもしれないというのは事実か、と言ってるのと同じだ。
突然、とてつもないことをいきなりぶっ込んでくる人だ。
ノエタールは紅茶を吐き出す寸前で、ごくりと飲み込み、アリコスは唖然としてしまう。
それなのにお父様達は、何事もなかったようにしている。
「そうならないようにするのが私達の役目だ。大丈夫だよ」
「そうですか」
メコッドは早々に引き下がった。
今までこんな場に来たことがないから意識してこなかったが、息子にこんな話させても何も言わないオルティース様から察するに、貴族って情報の引き出し方がえぐい。
考え過ぎかもしれないが、オルティース様が情報欲しさに子供にこう言わせているのだとしたら、恐ろしいことこの上ない。
それにしても、こうして隣で悠々とクレープ3つ目を食べているリドレイは、お父様の血を色濃く引いているのか、それとも理解していないのか…。サブキャラだし、前者と考えておこうか。
………
……
…
「なんとかなりましたね」
ファムリス公爵の馬車が見えなくなって、ようやくアリコスはため息を吐いた。
「おいしいって言ってくれてたね」
「ええ。リドも美味しいと思った?」
「うん。だけど僕はくれーぷが一番」
「ふふふっそっか」
人差し指を差し出しているのを見て、アリコスは思わず笑ってしまった。
(やっぱりリドかわいい)
「次はアリコスの縁談だな」
はい?
「そうね」
お母様?
縁談を目的とした茶話会では女性主催のことが多い。
とするとゲーム通りに進めばイネック王子…。
困る!
「あの、社交界デビューは2年後では…」
「ハハハッ。嘘だよ、気にするな。ただし2年後は長い。次帰った時にでもまた話し合おう」
「はい」
そしてお父様はお母様をエスコートして母屋へ入っていく。
次はやはり確定で泊まりがけだそうで、その支度をするのだろう。
「じゃあマリコッタさんのところよってこっか」
「うん!」




