5 招待当日
今日はいつになく大忙しだ。
事前にお父様と系統でまとめた服から選ぶ。
「豪華なのがいいわ。あと綺麗って思わせるもの」
失礼なことなんてもう言わせないわっ。あっと言わせてやるんだから。
「それとケーキみたいなふんわりとした雰囲気の…」
自分でもわかる。注文がバラバラだ。
「わかりました。ではまず10着ですかね、そこから選んでいってください」
「わかったわ」
「あの、失礼いたします。私一人ですがお許しください」
注文を一通り言い終えると、メイドが入ってきた。
しかし彼女のなにを許せと言うのだろう。ただの着替えに3人もいる方がおかしいのだ。
「気にしないで」
なぜか頭を下げている彼女は、バサッと長い髪が舞うのも気にせず顔を上げた。
「噂は本当だったんですね!」
「だから言ったでしょ!アリコスお嬢様はお優しいのよ」
きっと前との比較話だろう。
「よかった…。他の人たちもいっぱいいっぱいで」
「ほらほら手も動かしながらね」
「はーい、マリコッタ様」
ウェーラによると、ジルはマクスとお父様のところへ。カイとレンドーとマッチはリドレイ。他のメイド2人はお母様の元へ。そしてその他、執事2人と料理人たち、計6名は会場のセッティングをしているんだそうだ。
こうして聞くと、我が家の使用人は多い。
しかも、他にレイシアお姉様の専属メイド、コミカもいる。彼女は今レイシアお姉様について、ルィフラエル学園にいる。
「これは?」「これは?」と服をせっせと運んでくれる。
「イマイチ」「んーまあまあね」「あ、それいいじゃない」「こっちの方がいいわ」「論外」など私も順調にドレス決めが終わり、これまで着ずに仕舞われていたドレスの1つに袖を通したのが朝9時。
「さて、私たちも行きましょうか」
「はい」
どうやらお母様はまだ時間がかかるらしい。
会場にメイドの姿はなかった。
「これはここ、けえきは…まだ置かないで」
インテリアデザイナーのイメージを浮かばせる指示をしているのは、ハワードだ。
普段ふた月から半月、我が家の会場でお茶会やらお父様の会議やらが催される。そういえば最近はそう言うものがなかったが、ハワードは久々の来客にわくわくしているらしい。
「ケーキは真ん中にね。切り込みを入れておいて。クレープはいくつかに分けて、それぞれの位置から手に取れる場所に」
「アリコスお嬢様」
口を出したことに起こりもせず、ハワード様は歓迎してくれた。
「いやぁ、新作なんて久々ですからね。俺も腕がなりますよ」
「ハワードさんじゃなくて、俺たちが作ったんですけどね」
「わかってるって」
メイトは元に戻ったようだ。いつもの膨れつらだ。
「これが成功したら、他の方もお呼びするんですか?」
「そうねぇ」
「呼ぶんですか!誰を!いや、どなたを!」
メイトが叫んでいる。
嘘だよなと、一瞬声の低いエティかとも思ったが、エティは首を振った。
いやでも目の前の光景が目に入る。
「メイト、落ち着いて」
「あ、すみません」
(私、個人的にひじょーーーーに、心配です)
メイトにピシッと言ってやりたいところだが、背が低いせいで視線がまっすぐ合わない。しかし、ヒールのおかげでエティには同じ目線になれた。
「どうしちゃったの?」
「僕も知りませんよ。昨日からあの調子です」
「何もなかったじゃない」
「ずっとああでしたよ」
小声の会話にメイトは気にならない風にしている。
でも実際彼は全部わかっているのだろう。
(変なの)
「そろそろですよ」
懐中時計を持ったマクスが現れる。
「あ、アリコスお嬢様。旦那様が呼んでらっしゃいました。こちらへ」
アリコスは無言でついていく。
(いよいよね)




