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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
ゴタゴタ大戦争っ!
82/121

4 猛特訓、フル活動ですね

その翌日も、その翌々日も、その次の日もマリコッタは来てくれた。

普段は週に二回、マリコッタの授業がある。主に筆記の勉強だ。


「今日はこんなものですね。明日は防御魔法、シールド《ミズ・ヨ・ワガミ・ヲ・マモレ》と簡単な攻撃魔法、火矢ヒ・ヨ・ワガミヲ・オビヤカスモノヲ・イレ、短期特化魔法、消灯《チ・ヨ・アタリヲ・クラヤミ二・シロ》を覚えて、それぞれ半径自分の行動域、相手の弱点、相手の目を的確に狙えるようにしてきてください」


2日目からは毎日こんなテンポだ。


「僕つかれたー」


マリコッタの魔法の授業は、魔力の枯渇がどの程度か知るために、必要な特訓だとかで、すっかりくたくたになるまで魔法を使う。


「お疲れ様、リド」

「アリー、お姉様はぁ、疲れてないの?」

「もちろん疲れてるわ」


しかし5歳上の私が疲れているくらいだ。リドレイも体への負担も大きいだろう。

でも私はこんなところで疲れていられない。なんといっても明日はノエタール様が来るのだ。ケーキの焼き具合を見に行かなくては。


「まあ、いい匂いっ」

「アリコスお嬢様!」


いつだったかのフォーク事件以降、厄介払いが普通だったアリコスだが、ケーキの試食会を開催してからは歓迎されるようになった。


「今日もいい焼き加減ですよ」

「今日は一個も焦がしませんでしたよ!ねえ、メイトにいちゃんっ」

「まあ、ああ」


ただし、メイトとの関係は曖昧なままだ。

メイトに何をしていて欲しいのか、逆にメイトがなにをしたいのか、アリコスは測りかねている。だがメイトは聞いてみても一向に教えてくれない。


「食べますか?」

「ええ。よそってくれるの?」

「はい!」


エティは気遣ってこちらに声をかけてくれるが、メイトは離れた場所でクレープを丸め、練習しようとしている。


「ねえエティ、私避けられてる?」

「うーーー?」


無理やりうやむやにされた。

やっぱり避けられているのだろうな。


「仕事がやだって?」

「仕事はいいんですよ!はっ」


エティが息を飲んだ。

何かいけないことでも言ったのだろうか。

メイトは、気付いていないようだ。


「何?」

「なんでもありません!俺には何も聞かないですださいね。あ、にいちゃん達には内緒ですよ」


エティは念を押すように言う。

一体なんだと言うのだ。

疑いながらもアリコスは、ケーキをうちに運ぶ。

ほろっほろでおいしい。


「今日も合格よっ」


そろそろ『七冊目』通り、作れるかもね。明日が終わったら。

アリコスは新作のことを思う。


「盛り付け、上手くなりました」


エティがいなくなって1分ほど。しかしこれほどエティに助けを求めたくなったのは初めてだ。


「いただいてもいいの?」

「はい。あと新作、俺に任せてください」

「え…」

「だめ、ですか?」

「ううん!そんなことないわ、よ」


な、にがあったというのだ。

この心変わりはなんだ?

メイトの目がキラキラしている。

エティは……と思えば、出口付近で笑っている。


「じゃあ早速始めますね!」

「え、ええ。でも明日の分は忘れないでね。ハワード様の言う量に従って…」

「わかってますって!」


(一体なに!?)


不安になって、逃げるように厨房を歩いてく。

そしてふと思い返して、声を張る。


「よろしくね!」


ようやぬ腕の頼れるようになった料理人に任せる新作は、それはそれは楽しみだ。

さてまた一直線に歩く。


「エティ!」


アリコスは癇癪玉起こしたように小声で叫ぶ。


「フォークはありませんよ…?」


エティはビビってみせる。


「ふざけないでっ。メイトったらどうしちゃったの?」

「ご不満ですか?」

「いいえ全く。むしろもっと頑張ってくれていて嬉しいくらいよ」

「それならいいじゃないですか」

「そうだけど、気になるじゃない」

「ふふん。そうですか。そうですよね。聴きますか?」

「もったいぶらないでっ」

「はいはい。メイトにいちゃん、ついに恋をしたらしいです」


恋って誰に?

アリコスの高飛車にやられた?

でもそういうのは困る。


「あ、アリコスお嬢様じゃないですよ?」


エティが恐る恐る声をかけてくる。

やめてほしい。そんな自意識過剰女ではないのだ。少なくとも、私は。


「もちろんよ。で、どなた?」

「学園の人です。多分貴族。それ以上は僕も知りません」

「なるほどね」


(ファイト!メイト!)


「なにしてるんですか?」


どうやらグッドポーズが不審がられているようだ。


「頑張ってって伝えといて」

「はい、はいっ!」


エティも応援組のようだ。二つ返事でか答えてくれた。

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