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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
ゴタゴタ大戦争っ!
79/121

1 メイト目線

その3日後。

メイト達はアリコスがいなくても、パンケーキ、餃子、ケーキ、クレープの全ての焼き加減がバッチリになった。

最初に料理を出して以降、ハワードが専属で料理に付き合い、同じ焼き加減、同じ膨らみ方、同じ形になるよう特訓をしたのだ。


「調子はどう?」


その日の夕方、セサリーの叔母、マリコッタによる筆記の勉強を終えたアリコスは、手紙を携えてやって来た。


「まあまあですよ」

「まあまあって…ふふふっ。随分と余裕が出たものね。こないだまで焦げないかどうかも怪しかったのに」

「だってよ、メイトにいちゃん」

「エティだってそうだろ?」

「こないだ話したかしら。お金が貯まったら、お店を作るの」


はい、とアリコスはメニューの原案を書いた二通の手紙を渡した。


「ええ!!!!俺聞いてませんよ?」

「俺も知りませんでしたよ」


二人はアリコスが予想していた以上に大いに驚き、あえて封をされていない手紙を開ける。アリコス曰く、封をしなければ封筒はまた使えるのよ、だそうだ。

その度にメイトは、どうせくれるなら変な気遣いしなくていいのにと思う。

さて先にも書いたように内容はメニューだ。

ただし、けえきのケーキという綴りや、ぎょーざの餃子という綴り以外に、聞いたことのない名称ばかりが並んでいる。

しかもそれのすぐ下には、それについて簡単に説明した文が載っているが、よくよく読むと見たことのない食材を使い、生地に混ぜたり、やったことのない盛り方をしたりするらしい。


「無茶ですよっ」

「あら、あと1年はあるのよ?できるわよ。私とハワード様がいるんだから」

「そうなんですか?」


ハワードには手紙が行き渡っていなかったため、メイト宛の手紙を覗き込むような形で、メイトの質問に答えた。


「俺も作ったことないからな。でもこのうちの半分はできないことはないんじゃないか」

「半分ですか…」


便箋6枚に及ぶメニュー、2×6種───余白は俺たちにわかりやすいように書かれた説明書きだ。

これの半分。たったそれだけで店というのはやっていけるのだろうか。


「これで店が成り立つとお思いですか?」


メイトは思っていた事を口に出す。


「まあ、そうね。もともと人にあげるように、全面赤字の予定で作ったレシピだから、美味しいという評価がつけば満足なの」


つまり、利益はいらない、と。


「本気ですか?」

「みんなに笑顔になってもらいたいから、しばらくはとんとんでいいのよ。学園に入る頃にはまた別かもしれないけどね」


死ぬよりはマシでしょ、そんな世間一般で悲観的な考えをアリコスが持っているとは、メイトも思わなかった。なのでつい辛く当たってしまった。


「そんな事の為に俺らを使うんですか?」

「嫌?」

「ええ、嫌ですね。俺らはハワードさんにたくさん助けてもらってますけど、公爵様への恩返しと、サイモン兄さんを支えるために来てるんです」


なのに既に笑顔な人たち(領民)をこれ以上喜ばせて、どうするというのだろう。大概の人間は一度いい思いをすれば、もっともっとと優しくしてもらうことを当たり前にする。

そう思うともうやり切れない気持ちになって、メイトは厨房の出口へスタスタと出ていく。それしかないと思った。

つまるところ、メイトには不可解すぎたのだ。


「アリコスお嬢様、すみません。僕は賛成です。やりますよ、アリコスお嬢様のためですからね」

「ありがとう、エティ」


エティが必死で繕っているのも嫌だ。

厨房の扉が、ガコンと大げさにしまって、メイトは自分の世界へ隔離されたような寂しさを感じた。

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