6 目標がより、はっきりとしましたね
「なるほど…」
「主に女性ウケを狙っているので」
「僕も好きだよ!」
「そう、リドもか。嬉しいな」
「これを売るの?」
「え?」
(お母様、それはつまり…商品化するかってこと?)
色紙を使ったのはあくまで中身を区別するためだったけど、ここまで工夫を凝らすとなるとたしかに出費は痛い。
これまでにこれに当てた金額、メイトとエティの人件費を入れた銀貨10枚を思うと、もったいない気も相当してくる。
でも元はといえばぼっち回避、好感度アップであって、ただの方がいいような気もしなくはな…。
(どうしよう)
一人悩み、アリコスはあと数口のクレープを片手に無言になる。
その間、リドレイ達は先程食べたものと異なる果物の入ったクレープに口をつけていた。
「店か。いいかもしれないわね」
「僕これ好き。毎日食べたい」
「私はけえきの方が好きだわ」
「ふむ。パンけえきは食べやすかったな」
アリコスはがっつり聞き耳を立て、金勘定を始めた。
(たとえば城下町に新しく店を立てるとして、金貨70枚。人件費は作成だけでふたり。あのふたりだとして銀貨10枚。限定何個という形をとっても、営業にひとりは必要で、材料費が…)
ちなみにこの世界に食中毒という概念はない。
毒がはいっている事が多すぎて、完全にないのかは知らないが、お店が毒を盛ったという話は聞いた事がない。ないと考えていいだろう。
「できるのなら、お店、開いていいですか?」
「いいとも」
「私達の分もいくらか作ってね?」
「はい!」
この世界に地震はない。なぜか家も空き家以外ならほとんど老朽化が進まない。
なので四代前から同じ家とか、ざらにいる。
そのため人件費は安い割に、土地代、建築代合わせてが高い。
イメージが悪いのか、道路沿いに空き家やシャッター通りは一軒もない。
しかし一本道を入れば話は変わる。
(空き家をリニューアル。それが一番効果的だろうな。あとでマクス様に相談しよう)
「アリーお姉様、すごいね!」
「まだよ。今管理しているお金から貯めて、それに使います。しばらくは一層切り詰めますから、社交界デビューはもう少し先にしていただけると…」
「ああ、もちろんだ。だがイネック王子様と来客の時には正装で挨拶に来るように」
「はい」
ゲームでは最初っから人馴れしているようなキャラクターだったから、近々かと思っていたが、伸ばしてくれるならありがたい。
仲間は作っておくに越した事はないが、早めにイネック以外の婚約者も見つけなくてはならないだろう。
「それと、人はこちらで派遣しよう。だから人件費を抑えようなどと考えるな」
「…はい」
会社なんて経営した事はないが、これはつまり、全て一任してくれているという事?…なのか?
「そうだな、5人くらいか?」
「いえ!3人です。午前午後合わせて3人でなんとかします」
「アリー、まさか自分で働くなんて言わないだろうな?」
「わ!…ではセサリーとカイを交互に…」
「だめだ」
「…わかりました。でも、まずは私に試させてください。誠実で仕事に困っている人を雇いたいです」
「よかろう。それで何ヶ月くらいだ?」
「半年…とか?いえ、もっとですね。一年、二年?」
「はぁ……。社交界デビューについてはまた今度話そう」
ああ。そうですよね、そうなりますよね。
「じゃあ、アリーお姉様!明日もくれーぷ食べたい」
「わかった。メイト達に頼んでおくわ」
こうして夕食が終わった。




