1 生活リズムも完全回復しました
1週間経った朝。
実験はまた1週間経っても変わらないらしい。
昨晩の夕食でお父様が教えてくれた。
アリコスはダンジョンで無理をした分もすっかり元気になり、これまでのアリコスとしての生活に戻っていった。
ここ数日ずっと同じサイクルで日々が回っている。
「アリコスお嬢様、筆記の勉強のお時間です」
またしばらくするとセサリーが来る。
「アリコスお嬢様、剣術のお時間です」
そしてまた
「アリコスお嬢様、魔法学の勉強のお時間です」
あるいは
「アリコスお嬢様、ダンスのレッスンのお時間です」
いつも勉強は家庭教師がしに来てくれる。
ちなみに筆記というのは、貴族会の力関係やら家族構成やらのことだ。
こうして時間はあっという間に過ぎていく。
そして時には、
「アリコスお嬢様、厨房からくれえぷが焼きあがったので見に来て欲しいと」
そういえばこんなこともあった。カイとジルが部屋に来たのだ。
「あの、本当にありがとうございます。仕事になんないとこでした」
彼らは空になったポーションを手に持っていた。
人に喜ばれるのは悪い気はしない。だからといって、自分の命綱である他のポーションを渡しはしない。残念だが、こっちもキチキチなのだ。
そしてまた2週間が過ぎた。
………
……
…
この頃にはもうお父様の実験生活を待つのに飽きてきて、何度も手紙を書いて破った。
もう100枚分の便箋、『7冊目』のノートの6ページが犠牲になった。
こんなもったいないことをする時に、発揮されるのが貧乏性なのだ。
[ノエタール・ファリムス様へ
先日は失礼をしてしまい申し訳ありませんでした。
本当なら会って謝罪すべきなのでしょうが、なかなかいく気になれず
嫌味を言われるのが怖くて
怖くて
また失礼をしたらどうしようと、戸惑う?
正直なところ父と予定が合わず、伺えずにおります。
ところでお父様の研究は
ケーキというものをつくったのですが、もしよろしければ不味いというなら来て欲しくないです]
一番うまくかけたのが上記だ。
まとめると、下記になる。
「[ノエタール・ファリムス様へ。先日は失礼をしてしまい、申し訳ありませんでした。本当なら会って謝罪すべきなのでしょうが、正直なところ父と予定が合わず、伺えずにおります。ところでケーキというものをつくったのですが、もしよろしければ、侯爵様やご兄弟と食べにいらっしゃいませんか?]あー!これじゃだめっ」
なぜか、どうにもうまくいかないでいる。
「アリコスお嬢様、厨房からけえきが焼きあがったので見に来て欲しいと」
「わかったわ!行きましょう!」
先日からクレープをはじめとして作っている。
クレープはうまい具合にいっている。どうにもミルフィーユとは違うらしく、粘り気を強くしてみたが、そのあたり粉を混ぜる分には、私が手伝えばいいのだから。なので今は偏りのないように工夫する、飾り付けと生地を巻く段階だ。
餃子の焼き加減も進歩してきた方だ。
しかし!
「どうですか、このけえき」




