7 お互いの研究
マクスに許可をもらうべく、メイト、エティ、セサリーを連れて執務室へ行く。
「マクス様、アリコスです」
「は…」
「はいりなさい」
お父様の声だ。
「はい。お父様、研究の具合はいかがですか?」
「!う、うーむ。それが芳しくなくてな。だがうまく行くと思っている。そうだ、もうだいぶ前だが、アリーの送った下級ポーション。喜ばれていたよ」
「そうですか。それは良かったです。あの、マクス様をおかりしても?」
「ここで話せばいいだろう」
途端にお父様の顔が険しくなった。
何がどうしたというのだろう。
「はい」
「では失礼します。どうしましたか?」
何も分かっていないアリコスとは反対に、マクスは全て分かっていた。
早く話を終えてしまいたい。背中が痛い。話す中でそんな言葉が今を飛び交う。マクスにはちょっとした苦痛であった。
「私のちょっとしたわがままで、ここの厨房を使わせてもらうことになったのですが、ニワトトの卵、小麦粉、ケンタウロスの乳、あと実験がてらビックアントの胸の粉末など、欲しい材料があるんです」
「それを、欲しいと?」
「はい。でも手配だけで結構です。お金は貯め始めたばかりですが、これも目的の一環ですから」
「はあ、わかりました。ですが…」
「アリー、足りなくなったらいいなさい?」
「ああ、わかりました。でも自分で上手く管理できるよう、やってみます」
「うーむ、がんばりなさい」
アリコスが喜ぶ顔は見たいが、金銭的なことからは遠ざけたい。セレルドの心中は複雑である。
「はい!!」
愛娘にこんないい笑顔をされるのは、反則だと思う。
「それで量のことですが…」
マクスはセレルドが浮かれているのを、チャンスと思って、話をどんどん進めていく。
「けえきとパンけえき、くれえぷ、ぎょうざ。どれも粉を使うので、とりあえず1キロくらいは欲しいです。あと油も」
「そうね。乳は、どうしましょう。私、目分量だったから…」
「ではこれも1キロくらいですか?」
「そうなるわね」
「ひき肉は適当に集めてほしいわ。それとオリオンに似た系統の植物も。あと、ガーリックみたいな名前の調味料ない?」
「ガーガリック、ですか?」
「そんな名前のものよ」
「ガーガリックといえばガーガリアじゃないですかぁっ。もうっ、アリコスお嬢様、ゴイル様に怒られちゃいますよ」
「あ、えっと、そうね!」
そうだ。そうだったのだ。
これまで調味料なんて気にしたことなかったから気がつかなかったが、ガーガリックは辛味のある調味料と料理に重宝されている。そしてなんと、にんにく特有の匂いはない!
(しかもこんな失態を、お父様の前で!)
と思ったら、お父様は絶賛仕事中だ。
ありがたい。




