1 ポーション作成
「お父様、これです」
「おお。わかった見よう」
駆け足で研究室に行くと、お父様が先程のガラス張りの温室、研究室に隣接された施設にいるのが見えた。マクスさんの案内のもと向かい、お父様に見せると、案の定、大丈夫だったようだ。
「それでは、またお夕食で」
「あっ…ああわかった」
何を悲しんでいるのか、お父様が弱々しく言っている。
だがアリコスは気にせず部屋へ戻り、残りの薬草を全てポーションに変えてみる。
「搾取」
これでよし。
一人でも上手くできたと思う。
(試しに一本分飲んでみようかしら)
出来上がった3本のうち、ひとつに手をかけ、飲み干す。
調味料なしで葉野菜を煮出したような味だ。
決しておいしいものではないが、なんだろう。食べたことのある気がする。
しかしそんな記憶はない。
(なんだろう)
既視感とも断定できない違和感を感じながら、とりあえず、傷跡を見る。
左手。傷口の生々しい血は消えた。かさぶたになりかけという感じだ。足。さすっても変化なし。考えると痛くなってきそうな右手。あれ、なにもない。
傷ってこんな簡単に塞がるものなんだ。
ポーションの効力に驚き、ふと思い出して、セサリーに呼びかける。
「お父様の研究室に行って、使い終わった薬草を全部もらってきて。あとどこかから熱湯も」
「え?あ、はい」
セサリーは腑に落ちなさそうにしているが、アリコスは椅子を立って新しい『六冊目』の副題に、【レシピ】と記入した。
そして1ページ目に、【薬草→ほうれん草?】と書き込んだ。
他の薬草もポーションに変える。
中級ポーションとSPポーションになるはずだ。
いまいち色にこれといった変化はない。ピンクっぽい赤と、濁った青。漬物の余った汁のそれに似ている。
てっきり染物の染料みたいなエグい色になるかと思っていたが、これなら飲めそうだ。
「うえっ。まずい…」
中級ポーションの方は、酸っぱくて、砂糖と塩をとばっといれたような味だ。
(どう考えても配分間違えてるでしょ。)
とりあえず水で口をゆすぐ。
SPポーションはとてもじゃないが飲む気になれない。
どうやら『良薬口に苦し』を制作者側は、そのまんま受け取って思いっきり『不味し』に取り替えたらしい。
ついでにこのポーションも成功したらしいと分かった。
だって左手にはかさぶたさえない。綺麗に傷が塞がって、絵に描いたようなきめ細かい綺麗な手に戻っている。おまえにズキズキとした痛みも、どこかへいってしまった。
これを成功と言わず、何をもって成功と言おう。
「さてさてさて?ようやく味も消えたし、せっさくセサリーもいなくなったことだし、ステータスオープン」
言いながら着替え室に入る。
もちろん部屋の鍵はかけている。準備万端だ。
《通知一覧より通知の内容を確認できます》
通知一覧の文字に触れる。
《通知一覧
通知▶︎……
通知▶︎ほうれん草を見抜いたことにより、レアスキル〈鑑定Lv.1〉を獲得しました
通知▶︎開封済み。……》
真っ先に目に入ってきた通知にぎょっとする。
やっぱほうれん草なんだ、と。




