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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
厨房へお邪魔しますね
65/121

1 ポーション作成

「お父様、これです」

「おお。わかった見よう」


駆け足で研究室に行くと、お父様が先程のガラス張りの温室、研究室に隣接された施設にいるのが見えた。マクスさんの案内のもと向かい、お父様に見せると、案の定、大丈夫だったようだ。


「それでは、またお夕食で」

「あっ…ああわかった」


何を悲しんでいるのか、お父様が弱々しく言っている。

だがアリコスは気にせず部屋へ戻り、残りの薬草を全てポーションに変えてみる。


搾取ミズ・ヨ・ワレノ・モトムヲ・アタエヨ


これでよし。

一人でも上手くできたと思う。


(試しに一本分飲んでみようかしら)


出来上がった3本のうち、ひとつに手をかけ、飲み干す。

調味料なしで葉野菜を煮出したような味だ。

決しておいしいものではないが、なんだろう。食べたことのある気がする。

しかしそんな記憶はない。


(なんだろう)


既視感とも断定できない違和感を感じながら、とりあえず、傷跡を見る。

左手。傷口の生々しい血は消えた。かさぶたになりかけという感じだ。足。さすっても変化なし。考えると痛くなってきそうな右手。あれ、なにもない。

傷ってこんな簡単に塞がるものなんだ。

ポーションの効力に驚き、ふと思い出して、セサリーに呼びかける。


「お父様の研究室に行って、使い終わった薬草を全部もらってきて。あとどこかから熱湯も」

「え?あ、はい」


セサリーは腑に落ちなさそうにしているが、アリコスは椅子を立って新しい『六冊目』の副題に、【レシピ】と記入した。

そして1ページ目に、【薬草→ほうれん草?】と書き込んだ。


他の薬草もポーションに変える。

中級ポーションとSPポーションになるはずだ。

いまいち色にこれといった変化はない。ピンクっぽい赤と、濁った青。漬物の余った汁のそれに似ている。

てっきり染物の染料みたいなエグい色になるかと思っていたが、これなら飲めそうだ。


「うえっ。まずい…」


中級ポーションの方は、酸っぱくて、砂糖と塩をとばっといれたような味だ。


(どう考えても配分間違えてるでしょ。)


とりあえず水で口をゆすぐ。

SPポーションはとてもじゃないが飲む気になれない。

どうやら『良薬口に苦し』を制作者側は、そのまんま受け取って思いっきり『不味し』に取り替えたらしい。

ついでにこのポーションも成功したらしいと分かった。

だって左手にはかさぶたさえない。綺麗に傷が塞がって、絵に描いたようなきめ細かい綺麗な手に戻っている。おまえにズキズキとした痛みも、どこかへいってしまった。

これを成功と言わず、何をもって成功と言おう。


「さてさてさて?ようやく味も消えたし、せっさくセサリーもいなくなったことだし、ステータスオープン」


言いながら着替え室に入る。

もちろん部屋の鍵はかけている。準備万端だ。


《通知一覧より通知の内容を確認できます》


通知一覧の文字に触れる。


《通知一覧

通知▶︎……

通知▶︎ほうれん草を見抜いたことにより、レアスキル〈鑑定Lv.1〉を獲得しました

通知▶︎開封済み。……》


真っ先に目に入ってきた通知にぎょっとする。

やっぱほうれん草なんだ、と。

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