4 もうモンスターとは闘いたくない
翌朝。
目を開けたら朝になっていた。
もちろんそこは昨日の山で、背中が痛む。
火をつけておけば見つかっていたかもしれないと思うと、昨日のことが惜しい。
「うっっっ」
手足と落ち葉の景色から視線を持ち上げたのが間違いだった。
かわいたスライムとゴブリンの死体、そして剣と靴、ズボンのふくらはぎについた彼らの体液に、起きて早々吐き気を催す。
山にはく場所など決まっていないので、寝ていた木のすぐ後ろに失礼した。
もどってみるが、5秒が限界。
「おえっっ」
なんでゲームらしくすぐアイテムに変えてくれないのかと、制作者を恨む。
仕方がないので、魔法という便利な道具で数カラットの魔法石と、唯一の武器、木製の棍棒をアイテムボックスに移動する。
(実体化)
本来アイテムボックスへは、本来手に持っていないといけないらしいが、そういうところがマジックだ。
さて、私もそろそろ移動しようか。それとも、もう少しここに居ようか。
この世界の太陽に位置を見る限り、昇ったばかりというわけでもないらしい。
(このあたりに川はないかな)
ゴブリンの体液なんてつけていては、女衆は絶叫するに違いない。
いつかお金にする用に端から薬草を採りがてら、川を探して移動する。
そうしてしばらくたって、川を見つけた。
水源には動物が集まるというが、そういえば、一匹も動物を見かけていない。
まあ昨日までダンジョンだったのだから、仕方ないかもしれない。人間も嫌うモンスターのいる山なんて、動物も嫌がるだろう。
丁度いい岩に腰を掛け、枝分かれした、比較的細く穏やかな水流に手をつけて顔を洗う。
「痛っ」
よく見ると、右手首から5センチほど血の出た跡がある。
(動脈のある方じゃなくてよかった。そういえば足もズキズキしてきた)
気になって確認してみると、足に打撲が四つ、といくつかのかすり傷。あと左手の甲を思いっきり擦りむいている。
「思い切って洗うか」
足を浸してみると痛みより冷たい感じがする。
「いやぬるい?私の体が冷えてるのか」
特に防寒対策もしなかった昨夜が、体に堪えたらしい。
首と手足で随分な温度差がある。
(奥で焚火するか。間接移動)
「着火」
火を広げるのにはそこら辺の落ち葉を活用する。いい感じにセットしたつもりだが、濡れた手で触っていたせいか火の回りが思いのほかよくない。すこし離れると、徐々に煙ってきたので一安心だ。
さて次は水。少し抵抗があるが、のどがカラカラなので飲んでみる。変な味はしないので、とりあえず合格だ。
のどが潤うと、今度は汚れたものを外していく。誰もいないので恥ずかしい感じもしない。ただ穏やかとはいっても、水浴びまですると足をすくわれそうなのでやめておくことにした。
付着部分を洗って、火の前に干し、体を温める。この繰り返しで、ようやく服が乾いた。
結構な量、集めたはずの枝がもう少なくなってきている。そろそろ帰ろう。
「ダンジョンさんおじゃましましたー」
相当お世話になったので、お礼はしておく。
そしてこの世界の言い伝えでは、水のある所に水の精霊。土のある所に地の精霊。火のある所に火の精霊がいるらしい。一昨日の本にあった通り、精霊は本当に要るんだろう。
燃えないようにとっておいた真っすぐな枝を持っていざ。
「精霊さんたちありがとう。さてと、瞬か…だめだ、そういえば袋を持っていないと怪しまれる」
(間接移動)
「よし」
(瞬間移動)
ツイッターからR15ではないという助言をいただきましたので、念のため、残酷な描写あり、のタグに変えました。
今後もそういったご意見も含め、よろしくお願いします。




